H3ロケット10号機が成功|全10機の成否と2回の失敗の原因

当ページのリンクには広告が含まれています。
h3-rocket-success

2026年10月20日の未明、鹿児島県の種子島宇宙センターからH3ロケット10号機が打ち上げられました。「H3は今回成功したの?」「前に失敗したと聞いたけれど、これまでの結果はどうなっているの?」と気になって調べている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、10号機の打ち上げ結果と、試験機1号機から10号機までの成否、2回の失敗で何が起きたのかを、JAXAの発表と報道をもとに整理します。内容は2026年10月20日時点の情報です。

10号機は打ち上げに成功し、火星衛星探査機「MMX」を予定の軌道に投入しました。H3の打ち上げはこれで通算10機になり、成功は8機、失敗は試験機1号機と8号機の2機です。

目次

H3ロケット10号機は打ち上げ成功|2026年10月20日の結果

JAXAは2026年10月20日、H3ロケット10号機の打ち上げに成功したと発表しました。搭載していた火星衛星探査機MMXは、打ち上げから約1時間11分後にロケットから分離され、火星へ向かう軌道に入っています。H3にとっては、地球の周りを回る人工衛星ではなく、ほかの惑星をめざす探査機を送り出す初めての打ち上げでした。

ここでは、打ち上げの日時や機体の形態といった基本の情報と、MMXの分離までの流れを順に見ていきます。2025年12月の8号機の失敗のあとは、これで3機続けての成功です。運用が立ち直ったことを示す1機にもなりました。

夜明け前の海辺の発射場から、炎と白い煙を上げて夜空へ上っていく大型ロケットのイメージ

打ち上げの日時・場所と機体の形態(24Lの初飛行)

10号機の打ち上げの概要は次のとおりです。

項目内容
打ち上げ日時2026年10月20日(火)4時41分03秒
場所鹿児島県・種子島宇宙センター 大型ロケット発射場
機体H3ロケット10号機(H3-24L形態)
搭載したもの火星衛星探査機MMX
結果予定の軌道に投入(成功)

JAXAは2026年8月20日に打ち上げの計画を発表し、10月18日に日時を最終的に決めました。予備期間は10月21日から11月9日まで設けられていましたが、結果として予定日の当日にそのまま打ち上げられています。

機体の「24L」は、第1段エンジン2基・固体ロケットブースター4本・長い(ロング)フェアリングの組み合わせを表します。報道によると、この組み合わせで飛んだのは今回が初めてです。重い探査機を、地球の重力を振り切る速さまで加速させる必要があったため、ブースターを4本付けた力の強い形が選ばれました。形態の読み方は、後の「H3ロケットとは?」の章で詳しく説明します。

種子島は大隅諸島にある島で、世界遺産の屋久島のすぐ隣にあります。島の位置や本土からの行き方は、次の記事で屋久島とあわせて紹介しています。

MMXの分離と火星へ向かう軌道への投入

打ち上げ後、ロケットは固体ロケットブースターと第1段を順に切り離し、第2段エンジンで加速を続けました。JAXAの発表では、MMXの分離が確認されたのは打ち上げから約71分13秒後で、時刻にすると午前5時52分ごろにあたります。報道では「約1時間11分後」「約70分後」などと伝えられています。

分離されたMMXが入ったのは「火星遷移軌道」と呼ばれる軌道です。地球の周りを回る軌道ではなく、太陽の周りを回りながら少しずつ火星の軌道に近づいていく道筋にあたります。地球と火星の位置関係がちょうどよくなる時期は約2年2か月ごとにしか来ないため、MMXの打ち上げはこの時期に合わせて準備されてきました。

ロケットの役目は、探査機を分離した時点でほぼ終わります。ここから先は、MMX自身のエンジンで軌道を細かく直しながら火星をめざします。

この記事の内容は、2026年10月20日時点のJAXAの発表と報道にもとづいています。MMXの今後の運用状況は、JAXAの発表で確認してください。

H3ロケットの成功・失敗の全記録(試験機1号機〜10号機)

H3ロケットは、2023年3月の試験機1号機から今回の10号機まで、10機が打ち上げられました。このうち成功は8機、失敗は試験機1号機と8号機の2機で、成功率にすると80%です。

ここでは、まず10機の結果を一覧表で並べ、そのあとで「成功率80%」という数字をどう読めばよいかを整理します。号機の番号と実際に打ち上げた順番が、一部で入れ替わっている点にも注意してください。ニュースで「6号機」「8号機」と聞いたとき、それが何番目の打ち上げだったのかがわかると、経過をたどりやすくなります。

打ち上げ結果の一覧表

打ち上げた順に並べると次のとおりです。6号機は新しい「30形態」を試す機体で、打ち上げの順番が後ろにずれ、8号機より後の2026年6月に飛びました。

順番号機打ち上げ日搭載したもの結果
1試験機1号機2023年3月7日先進光学衛星「だいち3号」失敗
2試験機2号機2024年2月17日性能確認用の模擬ペイロード・小型衛星成功
33号機2024年7月1日先進レーダ衛星「だいち4号」成功
44号機2024年11月4日防衛通信衛星「きらめき3号」成功
55号機2025年2月2日準天頂衛星「みちびき6号機」成功
67号機2025年10月26日新型宇宙ステーション補給機「HTV-X1」成功
78号機2025年12月22日準天頂衛星「みちびき5号機」失敗
86号機2026年6月12日30形態の試験(模擬衛星・小型副衛星6機)成功
99号機2026年8月11日準天頂衛星「みちびき7号機」成功
1010号機2026年10月20日火星衛星探査機「MMX」成功

7号機が運んだHTV-X1は、国際宇宙ステーションへ物資を届ける新しい補給機の1号機です。第1段エンジン2基にブースター4本、幅の広いフェアリングを組み合わせた「24W」形態の初飛行でもありました。打ち上げる衛星の種類は、地球観測・通信・測位・補給・惑星探査と、10機のあいだで大きく広がっています。

成功率は80%|何をもって「成功」と数えるか

10機中8機の成功で、H3の成功率は80%です。8号機の失敗直後は7機中5機(約71%)まで下がりましたが、6号機で8機中6機(75%)、9号機で9機中7機(約78%)と、打ち上げのたびに戻ってきました。

ロケットの「成功」は、搭載した衛星や探査機を予定の軌道に送り届けられたかどうかで判断されます。8号機のように、打ち上げ直後は順調に飛んでいても、最後に衛星を正しい軌道に入れられなければ失敗です。逆に、6号機のように実用の衛星を積まない試験の打ち上げでも、計画した軌道への投入ができていれば成功に数えられます。

比べる目安として、H3の前の主力ロケットだったH-IIAは、2025年6月の50号機で運用を終えるまでに50機中49機が成功し、成功率は98%でした。そのH-IIAも、運用の初期には失敗を経験しています。H3の80%は、まだ10機という少ない数での値だと考えておくとよいでしょう。

2回の失敗で何が起きたのか(試験機1号機・8号機)

H3の2回の失敗は、どちらも第2段に関わるトラブルでした。ただし中身はまったく違います。試験機1号機は第2段エンジンにそもそも火がつかず、8号機は衛星を支える台座の破損が引き金になって、第2段エンジンが途中で止まりました。

どちらの失敗のあとも打ち上げはいったん止まり、原因を調べて対策を施してから再開しています。ここでは2回の失敗の経過と、そこからどのように飛行を立て直したのかを順に見ていきます。原因の説明は、JAXAが文部科学省の委員会に示した資料と、それを伝えた報道をもとにしています。

試験機1号機:第2段エンジンに火がつかなかった(2023年3月)

2023年3月7日に打ち上げられた試験機1号機は、第1段と第2段の分離までは計画どおりに飛行しました。ところが第2段エンジンが着火せず、予定の軌道に届く見込みがなくなったため、JAXAは機体に指令破壊の信号を送りました。搭載していた地球観測衛星「だいち3号」も失われています。

原因は第2段の電気系統の異常とされ、エンジンの制御機器へ電気を送る系統の下流で過電流が起きた可能性が詳しく調べられました。H-IIAと共通の部品も使われていたため、調査はH-IIAに共通する要因とH3に固有の要因の両面から進められています。

約1年後の2024年2月17日、試験機2号機が打ち上げに成功します。2号機は1号機と同じ機体構成にして飛行データを比べやすくし、大型の実用衛星は載せずに性能確認用の模擬ペイロードを積んで飛びました。機体には、飛行の再開を意味する「RTF(Return to Flight)」の文字が記されていました。

8号機:衛星を支える台座が壊れ、みちびき5号機を失った(2025年12月)

2025年12月22日の8号機は、日本版GPSとも呼ばれる準天頂衛星「みちびき5号機」を積んでいました。打ち上げ後しばらくは順調に見えましたが、第2段エンジンの2回目の燃焼がうまく立ち上がらずに早く止まり、衛星を予定の軌道に入れられませんでした。

文部科学省の委員会に示された2026年4月の中間報告では、次のような流れが考えられています。

  1. 衛星を覆うカバー(フェアリング)を分離したときの衝撃で、衛星を支える台座(PSS)の部材の継ぎ目で剥がれが進み、台座が壊れた
  2. 支えを失った衛星がロケットの内側へ落ち込み、第2段の液体水素タンクの配管を傷つけた
  3. ガスが漏れてタンクの圧力が下がり、2回目の燃焼でエンジンが十分な力を出せずに止まった

報告では、台座の剥がれが製造の段階から起きていた可能性も示されています。報道によると、JAXAは2026年7月の委員会で、台座の組み立てに難度の高い新しい技術が使われていたのに、そのリスクに気づけず検証が足りなかったことを原因の一つに挙げました。

6号機・9号機で飛行を立て直すまで

8号機の失敗のあと、最初に飛んだのは2026年6月12日の6号機でした。6号機は固体ロケットブースターを1本も付けない「30形態」の初飛行で、大型の液体ロケットがブースターなしで飛ぶのは国内で初めてです。台座を樹脂で補強するなどの対策を施したうえで、模擬衛星を載せた第2段の軌道投入と、小型副衛星6機の分離に成功しました。

続く2026年8月11日の9号機では、みちびき7号機を予定の軌道に投入しています。8号機で失ったのと同じ「みちびき」シリーズの打ち上げに成功し、実用衛星を運ぶ通常の運用に戻りました。報道によると、これで軌道上のみちびきは6機になり、政府がめざす7機体制まであと1機です。

今回の10号機で、H3は初めての惑星間ミッションも成功させました。試験の6号機、実用衛星の9号機、探査機の10号機と、目的の違う3機を続けて成功させたことになります。

H3ロケットとは?H-IIAとの違いと「形態」の読み方

H3ロケットは、JAXAと三菱重工業が開発した日本の新しい大型基幹ロケットです。2025年6月に運用を終えたH-IIAの後を継ぎ、政府の衛星や探査機を宇宙へ運ぶ主力の役目を担っています。開発の大きなねらいは、打ち上げにかかる費用を下げながら、運べる衛星の重さの幅を広げることでした。

ここでは、H-IIAから何が変わったのかを表で整理したうえで、ニュースでよく見る「24L」「30」などの形態の表し方を説明します。読み方がわかると、号機ごとの違いや、なぜその形で飛んだのかがつかみやすくなります。

H-IIAから何が変わったのか(エンジン・形態・運用)

H3とH-IIAのおもな違いを並べると次のとおりです。

項目H3H-IIA
全長約57〜63m(24L形態は63m)約53m(204型)
第1段エンジンLE-9を2基または3基LE-7Aを1基
固体ロケットブースター0・2・4本から選ぶ2本または4本
運用の期間2023年〜2001年〜2025年
打ち上げの数10機(うち成功8機)50機(うち成功49機)

いちばん大きな変化は第1段のエンジンです。新しく開発されたLE-9は「エキスパンダーブリードサイクル」という方式を採用しています。H-IIAのLE-7Aが使っていた二段燃焼サイクルより構造を簡単にしやすく、第1段の大推力エンジンにこの方式を使うのは世界で初めてとされています。

JAXAは、H-IIAより打ち上げ価格を下げることを開発の目標の一つに掲げています。衛星の重さに合わせてエンジンとブースターの数を選べるようにしたのも、必要以上に大きな機体で飛ばさずに済ませるための工夫です。

「22・24・30」「S・L・W」の意味

H3の形態は「H3-24L」のように、数字2つとアルファベット1つで表します。並び順の意味は次のとおりです。

  • 1つ目の数字:第1段エンジンLE-9の数(2または3)
  • 2つ目の数字:固体ロケットブースターの本数(0・2・4)
  • アルファベット:フェアリングの種類(S=ショート、L=ロング、W=ワイド)

たとえば今回の「24L」は、エンジン2基・ブースター4本・長いフェアリングの組み合わせです。7号機の「24W」はHTV-X1のような大きな補給機を覆うための幅の広いフェアリングを使い、6号機の「30」はエンジン3基でブースターを付けない形でした。30形態は、ブースターがない分、比較的軽い衛星を低い費用で運ぶための形とされています。

形態は、運ぶ衛星の重さや向かう軌道に合わせて選ばれます。火星へ向かうMMXのように重く、遠くまで速く飛ばす必要がある場合は、ブースターを4本付けた24形態が使われました。

10号機が運んだMMXとは?火星の衛星フォボスから砂を持ち帰る計画

MMX(Martian Moons eXploration)は、火星の2つの衛星のうち大きい方の「フォボス」に着陸し、表面の砂を地球へ持ち帰ることをめざすJAXAの探査計画です。フランスやドイツなどが参加する国際共同のミッションでもあります。成功すれば、火星の周りの天体から試料を持ち帰る世界で初めての例になります。

フォボスがどうやってできたのかは今もはっきりしておらず、持ち帰る砂はその手がかりになると期待されています。ここでは、これから約5年かけて進む日程と、小惑星の砂を持ち帰った「はやぶさ2」との違いを見ていきます。

赤い火星と、そのそばを回る小さくいびつな形の衛星、近づいていく探査機のイメージ

これからの日程(火星到着〜2031年度の地球帰還)

報道とJAXAの資料による、MMXのおもな予定は次のとおりです。

時期予定
2026年10月20日H3ロケット10号機で打ち上げ
打ち上げから約1年後(2027年度)火星の周りを回る軌道に到着し、観測を始める
火星を周回している期間探査車を先にフォボスへ降ろし、続いてMMX本体も着陸して10g以上の砂を採取する
2031年度地球の近くでカプセルを切り離し、オーストラリアで回収する

報道によると、探査車はフランスとドイツのチームが提供したもので、本体より先にフォボスへ降りて表面の様子を調べます。フォボスは火星の表面から約6,000km上空を回る小さな天体で、重力がとても弱いため、着陸には地球や月とは違う工夫が求められます。

日程は計画段階のもので、運用の状況によって変わることがあります。MMXの打ち上げはもともと2024年度に予定されていましたが、H3ロケットの問題を受けて2026年に延びた経緯があります。

はやぶさ2との違いと「世界初」の意味

天体の砂を持ち帰るミッションといえば、小惑星リュウグウから試料を持ち帰った「はやぶさ2」を思い浮かべる方も多いでしょう。はやぶさ2は2014年12月にH-IIAロケットで打ち上げられ、2020年12月にカプセルを地球に届けました。

MMXが向かうのは小惑星ではなく、惑星である火星の重力の影響を強く受ける衛星です。火星の周りでは行き帰りに必要な速度の変化が大きく、そのぶん燃料を多く積むため探査機も重くなります。MMXをH3の力の強い24L形態で打ち上げたのも、このためです。

「世界初の火星圏サンプルリターン」とは、火星やその衛星を含む火星の周りの領域から試料を持ち帰るのが初めて、という意味です。火星本体の試料を持ち帰る計画はほかの国でも検討されていますが、2026年10月時点で実現した例はありません。日食や星座など、身近に見られる天体の話題は次の記事でも取り上げています。

よくある質問

H3ロケット10号機の打ち上げは成功しましたか?

成功しました。2026年10月20日4時41分に種子島宇宙センターから打ち上げられ、約1時間11分後に火星衛星探査機MMXを分離して、予定の軌道に投入しています。

H3ロケットはこれまでに何回失敗していますか?

2回です。2023年3月の試験機1号機(第2段エンジンが着火しなかった)と、2025年12月の8号機(みちびき5号機を予定の軌道に投入できなかった)です。

6号機が8号機より後に打ち上げられたのはなぜですか?

H3の号機の番号と、実際に打ち上げた順番は必ずしも一致しません。6号機は固体ロケットブースターを使わない30形態を初めて試す機体で、打ち上げの順番が後ろにずれ、2026年6月に飛びました。

H3ロケットの「24L」とは何ですか?

機体の形態を表す記号です。第1段エンジンが2基、固体ロケットブースターが4本、フェアリングがロング(L)であることを示します。10号機が初めてこの形態で飛びました。

次のH3ロケットの打ち上げはいつですか?

2026年10月20日時点で、次の号機の打ち上げ日は確認できていません。JAXAは打ち上げの日時が決まると公式サイトで発表するので、最新の予定はそちらで確かめてください。

まとめ

2026年10月20日、H3ロケット10号機は種子島宇宙センターから打ち上げられ、火星衛星探査機MMXを火星へ向かう軌道に投入しました。H3では初めての24L形態で、初めての惑星間ミッションでもあります。

H3の打ち上げは通算10機で、成功8機・失敗2機(試験機1号機と8号機)、成功率は80%です。2025年12月の8号機の失敗のあと、6号機・9号機・10号機と3機続けて成功しています。

MMXはこれから約1年かけて火星に向かい、フォボスで砂を採取して、2031年度に地球へ戻る計画です。日程や運用の状況は変わることがあるので、最新の情報はJAXAの発表で確かめてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

コメントは日本語で入力してください。(スパム対策)

CAPTCHA

目次