「さることながら」の意味をわかりやすく解説
「さることながら」は、「それはもちろんだが、それだけでなく」という意味の表現です。ある事柄を当然のこととして認めたうえで、さらに別の重要な点を付け加えるときに使います。
「さることながら」は、前に述べたことを認めつつ、後に続く内容をより強調する表現です。ビジネスでも日常でも使える、知っておくと便利な日本語のひとつです。
たとえば「料理の味もさることながら、盛り付けが素晴らしい」と言えば、味が良いのは当然として、それ以上に盛り付けを褒めていることになります。
基本の意味は「もちろんだが、それだけでなく」
「さることながら」は、ひとことで言えば「それは言うまでもないが」という前置きの役割を果たします。前半で触れた事柄を否定しているわけではなく、むしろ当然のこととして受け止めているのがポイントです。
そのうえで、「実はもっと注目すべきことがある」と後半の内容を際立たせる効果があります。
漢字で書くと「然る事乍ら」
「さることながら」を漢字で表記すると「然る事乍ら」となります。ただし、この漢字表記は日常的にはほとんど使われません。
ビジネス文書やメールでも、ひらがなで「さることながら」と書くのが一般的です。漢字表記は古文や辞書で見かける程度なので、読めれば十分でしょう。
「AもさることながらB」の構文を理解しよう
「さることながら」は、多くの場合「AもさることながらB」という形で使われます。この構文では、次のような意味の流れが生まれます。
- A=当然認められる事柄(前提として肯定)
- B=より強調したい事柄(本当に伝えたいこと)

「さることながら」の語源と成り立ち
「さることながら」がなぜこのような意味になるのか、言葉を分解すると理解が深まります。3つの要素に分けて見ていきましょう。
「然る(さる)」の意味
「然る」は「そのような」「しかるべき」「相応の」という意味を持つ古語です。現代語でも「さるお方」(それ相応の立派な方)のように、格式のある表現として残っています。
つまり「然る事」とは、「そういうこと」「もっともなこと」を指します。
「乍ら(ながら)」の意味
「乍ら」は「〜ではあるけれど」という逆接の意味を持つ接続助詞です。「残念ながら」「不本意ながら」の「ながら」と同じ使い方です。
ここでは「〜は当然だけれども」というニュアンスで機能しています。
組み合わせで生まれるニュアンス
「然る(もっともな)」+「事」+「乍ら(ではあるが)」を合わせると、「もっともなことではあるが」→「それは当然だが」という意味が自然に導かれます。
「さることながら」の使い方と例文
「さることながら」は、フォーマルな場面からカジュアルな場面まで幅広く使えます。場面別に例文を見てみましょう。
ビジネスシーンでの例文
会議やプレゼン、メールなどビジネスの場で使うと、表現に奥行きが出ます。
- 「今回のプロジェクトは、成果もさることながらチームワークが素晴らしかった」
- 「弊社の製品は品質もさることながら、アフターサポートにも力を入れております」
- 「部長の交渉力もさることながら、事前準備の緻密さが成功の鍵でした」

ビジネスメールで使うと「よく言葉を知っている人だな」と好印象を持たれやすい表現ですよ。
日常会話での例文
かしこまった表現に聞こえますが、日常会話でも自然に使えます。
- 「あのお店は味もさることながら、雰囲気が抜群にいい」
- 「旅行は観光もさることながら、地元の食事が一番の楽しみだ」
- 「彼は運動神経もさることながら、頭の回転が速い」
メール・文章での例文
書き言葉として使うと、文章に品格が加わります。
- 「デザインもさることながら、機能面でも大きく進化しています」
- 「価格の手頃さもさることながら、耐久性の高さが人気の理由です」
- 「新入社員の技術力もさることながら、積極的な姿勢に感心しました」
「さることながら」を使うときの注意点
便利な表現ですが、使い方を間違えると意味が伝わらなくなります。よくあるミスを確認しておきましょう。
強調したいことは後半に置く
「AもさることながらB」の構文では、本当に伝えたい内容をBに置くのが鉄則です。前半のAは「前提」、後半のBが「本題」という関係になります。
- OK:「見た目もさることながら、着心地が最高だ」→ 着心地を強調
- NG:「着心地もさることながら、見た目がいい」→ 着心地のほうが重要なのに前半に置いてしまっている
どちらを際立たせたいかを意識して、語順を決めましょう。
よくある間違い・NG例
「さることながら」を使うときに注意したいポイントをまとめます。
- AとBに関連性のない内容を入れない(「天気もさることながら、この映画は面白い」は不自然)
- 否定文には基本的に使わない(「味もさることながら、サービスが悪い」は違和感がある)
- Aを否定する文脈で使わない(Aは認めたうえでの表現なので矛盾する)
「さることながら」の類語・言い換え表現
「さることながら」と似た意味を持つ表現はいくつかあります。場面や文体に合わせて使い分けると、表現の幅が広がります。
「言うまでもなく」「もちろん」との使い分け
| 表現 | 意味 | フォーマル度 | 使用場面 |
|---|---|---|---|
| さることながら | 当然だが、それだけでなく | やや高い | ビジネス・文章・スピーチ |
| 言うまでもなく | わざわざ言う必要がないほど当然 | 高い | 文章・スピーチ |
| もちろん | 当然のこと | 低い | 日常会話・カジュアルな文章 |
| 当然ながら | 当然のことだが | やや高い | ビジネス・報告書 |
「さることながら」は「Aを認めつつBを強調する」という二段構えの表現です。単に「当然だ」と言い切る「もちろん」や「言うまでもなく」とは、ニュアンスが少し異なります。
「もとより」「さらには」との違い
- 「もとより」:最初から当然という意味。「さることながら」よりもかたい印象
- 「さらには」:追加の情報を足すニュアンス。前半を強く肯定するニュアンスは薄い
- 「のみならず」:「それだけでなく」の意味で、書き言葉向き


「さることながら」と「さながら」の違い
「さることながら」と「さながら」は音が似ているため混同されがちですが、意味はまったく異なります。
意味の違いを比較
| 表現 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| さることながら | それは当然だが、それだけでなく | 味もさることながら、見た目も美しい |
| さながら | まるで〜のようだ(比喩) | 会場はさながらお祭りのようだった |
「さることながら」は前半を認めて後半を強調する接続表現。「さながら」は「まるで」と同じ比喩表現です。役割がまったく違うことがわかります。
間違えやすい場面と覚え方
口頭で聞くと音が似ているため、特にビジネスシーンでは混同に注意が必要です。
覚え方のコツは、「さることながら」には「こと」が入っていること。「こと(事柄)」を認めたうえで話を展開する表現だと意識すれば、「さながら(まるで)」との区別がつきやすくなります。




まとめ
「さることながら」は、「それは当然だが、それだけでなく」という意味の日本語表現です。「AもさることながらB」の形で使い、Bのほうをより強調するのがポイントでした。
語源は「然る事乍ら」で、「もっともなことではあるが」が原義です。ビジネスメールやスピーチで使えば表現に深みが出ますし、日常会話でもさりげなく使える便利なフレーズです。
似た音の「さながら」とは意味がまったく違うので、「こと」が入っているかどうかで区別してみてください。
一度覚えてしまえば、文章にも会話にも自然に取り入れられる表現です。ぜひ今日から使ってみてください。











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