「飛行機は犬でできている」。2026年10月、この一文がSNSやニュースで急に話題になりました。「意味が分からない」「詩としてはアリでは?」と首をかしげた方も多いのではないでしょうか。実はこれ、OECDの国際学力調査PISA(ピザ)で、高校1年生の「読む力」を測るために使われた問題文です。
この記事では、問題の形式と正解、正解が「いいえ」になる理由、PISA2025で日本の結果がどう変わったのか、そして「読みの流ちょう性」という力の中身を順にまとめました。最後に、同じ形式で試せる練習問題も用意しています。
正解は「いいえ(意味が通らない)」です。文字どおりの意味が成り立つかを短い時間で次々に判断する問題で、PISA2025では日本の高校生のこのタイプの正答率が下がったことが分かりました。
「飛行機は犬でできている」とは?PISAの読解力調査で出た問題文
「飛行機は犬でできている」は、OECD(経済協力開発機構)が15歳を対象に行う国際学力調査「PISA」の、読解力の問題に出てくる文です。日本では高校1年生が受けており、文を読んで意味が通るかどうかを「はい」「いいえ」で答えます。この文の正解は「いいえ」です。
ここでは、問題の形式、一緒に紹介されたほかの文と正解、2026年10月になって話題が広がった流れを順に見ていきます。先に押さえておきたいのは、これは国語のひっかけ問題ではなく、読む速さと正確さを測る基礎の問題だという点です。
どんな形式の問題?「意味が通るか」をはい・いいえで答える
PISAでは2018年調査から「読みの流ちょう性」を測る課題が加わりました。国立教育政策研究所の資料によると、文章を処理する正確さと速さを測ることが目的です。画面に短い文が表示され、受検者は意味が通るなら「はい」、通らないなら「いいえ」を選びます。
1文ごとにじっくり考えさせる問題ではありません。限られた時間の中で、次々に出てくる短文を正確にさばけるかを見ています。報道で紹介された問題には「文章の意味が通る場合は『はい』、通らない場合は『いいえ』をクリックしてください」という案内がついていました。PISAは2015年調査からコンピューターで受ける方式に変わっており、この課題も画面上で解きます。
一緒に紹介された4つの文と正解
報道では、「飛行機は犬でできている」とあわせて次の3つの文も紹介されました。正解と、そう判断できる理由を並べると次のとおりです。
| 問題文 | 正解 | 理由 |
|---|---|---|
| 飛行機は犬でできている | いいえ | 飛行機の材料は金属などで、犬ではない |
| 窓が大きな声で歌った | いいえ | 窓は生き物ではないので歌えない |
| 男性は車を運転して、その店へ向かった | はい | 日常の出来事としてそのまま成り立つ |
| 六羽の鳥が森の上を飛んでいった | はい | 鳥が群れで飛ぶのは自然な光景 |
どの文も、小学生でも知っている言葉だけでできています。迷うとしたら言葉の意味ではなく、「詩として読めば成り立つのでは?」という読み方の部分でしょう。この点は次の見出しで詳しく取り上げます。
なぜ2026年10月に話題になったのか
PISA2025の結果は、2026年9月8日にOECDと文部科学省・国立教育政策研究所から公表されました。日本は3分野すべてでOECD加盟国の1位でしたが、読解力の得点は前回より下がりました。その要因の一つとして挙げられたのが「読みの流ちょう性」の正答率の低下です。
その後、10月22日に週刊誌「女性自身」のWeb版が、この問題文を見出しに入れた記事を配信し、Yahoo!ニュースなどにも転載されました。「こんな簡単な文も解けないのか」という驚きと、「詩としてはアリでは」という反論がSNSで広がり、まとめサイトや掲示板でも次々に取り上げられて、一気に知られる言葉になりました。

正解が「いいえ」になる理由と「詩ならアリ」論
正解が「いいえ」になるのは、この問題が文の「文字どおりの意味」が現実の世界で成り立つかを問うているからです。比喩や詩として深読みすれば意味をつけられる文でも、問題の約束ごとの上では「意味が通らない」と判定します。
ここでは、文字どおりに読むとはどういうことか、比喩として読めてしまう文をどう考えるか、ネットで出た反応の3つに分けて整理します。判断の基準はシンプルで、書かれたままの場面を頭の中に思い浮かべられるかどうかです。
文字どおりの意味で判断する問題
「飛行機は犬でできている」を書かれたまま思い浮かべると、機体の材料が犬ということになります。実際の旅客機はアルミニウム合金や炭素繊維の複合材などでできており、この状況はありえません。だから「いいえ」です。
一方で、文法の形は整っています。「AはBでできている」は「この机は木でできている」と同じ型です。型が正しくても中身が成り立たない文を、一瞬で見抜けるかどうかが問われています。文法の知識ではなく、読んだ内容を現実と照らし合わせる処理の速さと正確さを見る問題といえます。
比喩や詩として読める文が「いいえ」になる理由
SNSでは、能楽師の安田登さんが「詩としてはアリだけど、そういう意味?」と投稿するなど、文学的に読めば成り立つという声が上がりました。たしかに、ありえない言葉の組み合わせから新しいイメージを生むのは、詩の大事な働きです。
ただ、この課題が測っているのは「速く、正確に、文字どおりに」読む力です。解釈の幅を広げるほど判断に時間がかかり、課題の目的から外れてしまいます。説明書やニュース、テストの問題文のように、日常で読む文章の多くは、まず書かれたとおりに受け取ることが前提です。詩的に味わう力と、文字どおりに素早く読む力は別の力で、この問題は後者を見ていると考えるとすっきり整理できます。
ネットで見られたさまざまな反応
話題が広がるにつれて、この一文をネタにした書き込みも増えました。SNSや掲示板では、たとえば次のような反応が見られます。
- 戦闘機どうしの空中戦を「ドッグファイト」と呼ぶことにかけた言葉遊び
- 映画『となりのトトロ』の「ネコバス」を引き合いに出し、犬の飛行機もありうるという冗談
- 「詩や童話の一節なら成り立つ」という、課題の前提そのものへの疑問
どれも冗談や感想として楽しまれた反応で、特定の作品やセリフが元ネタになっているわけではありません。出どころはあくまでPISAの問題です。
PISA2025の結果|日本の読解力はどうだった?
PISA2025で、日本の読解力は全参加国・地域の中で4位、OECD加盟国の中では1位でした。順位だけを見れば世界トップレベルですが、平均得点は前回の2022年調査から13点下がり、統計的に意味のある低下とされています。
ここでは、3分野の結果、読解力の得点の推移、問題の種類ごとの上がり下がり、点数の低い層の増加を順に見ていきます。数字は、文部科学省・国立教育政策研究所が2026年9月8日に公表した「PISA2025のポイント」と同日の報道にもとづいています。順位は他の国の結果にも左右されるので、得点の変化と中身をあわせて見るのがポイントです。
3分野すべてでOECD加盟国1位
2025年の調査には91の国・地域の15歳が参加し、日本からは高校1年生約6,500人が受けました。日本の結果は次のとおりです。
| 分野 | 平均得点 | 全参加国・地域での順位 |
|---|---|---|
| 科学 | 538点 | 5位 |
| 数学 | 525点 | 5位 |
| 読解力 | 503点 | 4位 |
3分野がそろってOECD加盟国の1位になったのは、調査が始まって以来初めてです。OECD加盟国は38か国あり、全参加の91か国・地域には加盟していない国や地域も含まれます。「OECD1位」と「全体で4位」は数え方の違いなので、両方を区別して読みましょう。
読解力は503点で、前回より13点低下
読解力の得点は、ここ3回の調査で上がったり下がったりしています。
| 調査 | 日本の読解力 | 全参加国・地域での順位 |
|---|---|---|
| PISA2018 | 504点 | 15位 |
| PISA2022 | 516点 | 3位 |
| PISA2025 | 503点 | 4位 |
2018年に15位へ下がったときは大きく報じられ、学校でのICT活用や読む指導の見直しが議論されました。2022年に大きく持ち直したあと、2025年は得点が2018年とほぼ同じ水準に戻った形です。得点が下がっても4位を保てたのは、順位がほかの参加国・地域の得点との比べ合いで決まるためです。得点の上下と順位の上下は、必ずしも一致しません。
下がったのは「流ちょう性」、上がったのは「評価・熟考」
文部科学省の資料では、問題の種類ごとの正答率の変化も示されています。「読みの流ちょう性(速く正確に読む)」は日本・OECD平均ともに有意に低下し、日本の平均得点の低下に影響した可能性があるとされました。一方、文章の質や信ぴょう性を「評価し、熟考する」問題の正答率は有意に上がり、「情報を探し出す」「理解する」問題は前回と同程度でした。
つまり、じっくり考える問題はむしろ伸びていて、下がったのは土台にあたる速さと正確さの部分です。女性自身の記事では、正答率が2018年の92.2%から89.9%に下がったと紹介されています。ただ、どの設問をまとめた数字なのかは公表資料で確認できなかったため、目安として受け止めてください。いずれにしても、約9割の生徒は正解しており、「多くの高校生が解けない」という状況ではありません。
点数の低い層が13.8%から18.6%に増加
平均点とは別に気になるのが、習熟度の分布です。読解力で最も低い「レベル1以下」にあたる生徒の割合は、13.8%から18.6%へと有意に上がりました。科学と数学でも低得点層の割合が増えており、報道では「国内の格差が広がった」と伝えられています。
平均点が世界トップレベルでも、文章を読むことに苦労している生徒の割合は増えている、というのが今回の結果の大事な読み方です。流ちょう性の問題は、こうした層ほど影響を受けやすいと考えられます。
「読みの流ちょう性」とは?速く正確に読む力の中身
読みの流ちょう性とは、文を速く、しかも正確に読んで意味をつかむ力のことです。一文一文に意識を使わずに読めるほど、内容を考えることに頭を回せるため、長い文章を理解する力の土台になります。
ここでは、この力が読解のどこを支えているのか、弱いとどんなことが起きやすいのか、文部科学省が挙げている背景の3つを見ていきます。大切なのは、速く読むことそのものより、速く読んでも読み違えないことです。速さだけを競う速読とは目的が違う点を、先に押さえておきましょう。
測っているのは、文章を理解するための土台
文章を読むとき、頭の中では「文字を言葉として認識する」「文の意味を組み立てる」「文章全体の内容を考える」という処理が同時に進んでいます。最初の2つが自動的にできるほど、3つ目の「考える」部分に力を使えます。
自転車にたとえると分かりやすいでしょう。ペダルをこぐことに必死なうちは、周りの景色や道順に気を配る余裕がありません。流ちょう性の課題は、あえて単純な文を使い、この「こぐ」部分をどれだけ素早く正確にこなせるかを見ています。だからこそ、問題文は小学生でも分かる言葉で作られているのです。
流ちょう性が低いと起きやすいこと
文を読む処理に時間や手間がかかると、読解のあちこちに影響が出ます。たとえば次のような場面です。
- 長い文章を読むと疲れやすく、途中で前の内容を忘れてしまう
- 「当てはまらないものを選べ」のような問題文の条件を読み落とす
- 知っている言葉だけを拾い読みして、内容を取り違える
- テストで時間内に最後の問題まで読み切れない
PISAの読解力の問題は、複数の資料を読み比べる長めの課題も多く含みます。土台の処理が遅れると、考える力があっても点数に結びつきにくくなります。文部科学省が流ちょう性の低下を平均得点の低下と結びつけて説明したのは、こうした仕組みがあるためです。
背景として挙げられている要因
報道によると、文部科学省は、SNSで流れてくる短い文をあまり注意を払わずに見る習慣や、読書時間の減少が背景にあると分析しています。ただし、これは調査結果をもとにした一つの見方で、原因が確かめられたわけではありません。
流ちょう性の正答率はOECD平均でも下がっており、日本だけの現象ではない点も見逃せません。スマホを使うこと自体が悪いというより、見出しだけ眺めて次へ進む「流し読み」の時間が増えるほど、一文を最後まで正確に読む機会が減る、と考えると自然です。日々の読み方を少し意識するだけで変えられる部分でもあります。
やってみよう|「意味が通る?」練習問題10問
流ちょう性の課題がどんな感覚の問題なのかは、実際に解いてみるとよく分かります。ここではPISAと同じ形式で、オリジナルの練習問題を10問用意しました。PISAの実際の問題ではないので、腕試しとして気軽に取り組んでください。
1問あたり3秒くらいを目安に、文の意味が通るなら「はい」、通らないなら「いいえ」で答えてみましょう。答えは問題のすぐ下に折りたたんであり、タップすると開きます。家族や友達と時間を計って競うと、親子のちょっとした遊びにもなります。
練習問題(はい・いいえで答える)
次の10の文を上から順に読み、意味が通るかどうかを判断してください。考えこまず、直感でテンポよく答えるのがコツです。
- 母は台所で夕飯の支度をしている。
- 冷蔵庫は毎朝、走って学校へ通っている。
- 雨が降ってきたので、弟は傘をさして帰った。
- この鉛筆は水でできている。
- 兄は明日、きのうの電車に乗る。
- 雪が積もって、庭が真っ白になった。
- 私の机は昨夜、静かに泣いていた。
- 犬が公園でボールを追いかけた。
- 氷を冷やしたら、とけて水になった。
- 姉は電車に乗って、隣の町の図書館へ行った。
答えを見る
- (1) はい/(2) いいえ(冷蔵庫は走らない)/(3) はい
- (4) いいえ(鉛筆の材料は木と黒鉛など)/(5) いいえ(明日、きのうの電車には乗れない)
- (6) はい/(7) いいえ(机は泣かない)/(8) はい
- (9) いいえ(冷やした氷はとけない)/(10) はい
解き方のコツと間違えやすいパターン
「いいえ」になる文には、大きく3つのパターンがあります。パターンを知っておくと、迷う時間がぐっと減ります。
- 生き物でないものが、生き物の動きをする(窓が歌う、机が泣く、冷蔵庫が走る)
- 材料や性質が現実と合わない(飛行機が犬でできている、鉛筆が水でできている)
- 時間の順序や原因と結果がおかしい(明日きのうの電車に乗る、冷やした氷がとける)
間違えやすいのは、(9)のように言葉の並びが自然で、一見すると普通の文に見えるものです。「氷」「とける」「水」はよく一緒に使う言葉なので、拾い読みすると「はい」と答えがちです。迷ったときは「この場面を写真に撮れるか」と考え、書かれたまま思い浮かべてみてください。深読みせず、文字どおりに判断するのが正解への近道です。
日常でできる「速く正確に読む」練習
読みの流ちょう性は、特別な教材がなくても、ふだんの読み方を少し変えるだけで鍛えられます。ポイントは、短い文章を「正確に」「最後まで」読む回数を増やすことです。大人にも子どもにも同じ考え方が使えます。
ここでは、声に出して読む練習と、スマホで文章を読むときの意識の2つを紹介します。小学生の読解力を家庭で育てる方法は別の記事で詳しくまとめているので、お子さん向けの具体的な習慣づくりはそちらもあわせて参考にしてください。
音読と「書かれたとおりに言い直す」練習
音読は、目で追うだけの黙読と違い、読み飛ばしや読み違いがその場で分かります。新聞のコラムや教科書の1段落など、1〜2分で読める長さを毎日読むだけでも十分です。つかえた箇所は、言葉の区切りを意識してもう一度読みましょう。
読み終えたら、内容を「誰が・何を・どうした」の形で一文に言い直してみてください。自分の感想を足さず、書かれたことだけで言い直すのがポイントです。文字どおりに受け取る練習になり、流ちょう性の課題で問われる力とよく似ています。

スマホで読むときに意識したいこと
スマホで記事を読むときは、見出しだけで内容を判断せず、本文を最後まで読むことを意識しましょう。今回の話題がちょうどよい例です。「飛行機は犬でできている『すら解けない』」という見出しからは、多くの高校生が解けなかったように受け取れます。しかし報道の数字を見ると、正答率は約9割で、ほとんどの生徒は正解しています。
見出しと本文の内容が食い違っていないか、数字の出どころはどこか、を確かめながら読む習慣は、まさにPISAで伸びた「評価し、熟考する」力の練習にもなります。1日に1本だけでも、気になった記事をじっくり読み通す時間を作ってみてください。物語文の読み取りに悩む小学生には、気持ちを読み取るコツをまとめた記事も役立ちます。


よくある質問
- PISAとはどんな調査ですか?
-
OECD(経済協力開発機構)が、義務教育を終える15歳を対象に、数学・科学・読解力の3分野を測る国際調査です。2000年に始まり、おおむね3年ごとに行われています。日本では、抽出された高校などの1年生が受けています。
- この問題を間違えたら読解力が低いということですか?
-
1問だけで判断することはできません。流ちょう性の課題は、たくさんの短文の正答と速さを合わせて見るものです。報道では正答率は約9割とされており、多くの生徒は正解しています。うっかり迷った程度で心配する必要はありません。
- 「飛行機は犬でできている」に元ネタはありますか?
-
小説や映画のセリフなどの元ネタは確認されていません。出どころはPISAの読解力の問題で、PISA2025の結果を伝える報道で紹介されたことから広まりました。ネットではドッグファイトにかけた冗談なども見られますが、いずれも後から生まれたネタです。
- 大人もPISAの問題を解くことはできますか?
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調査そのものは選ばれた学校の生徒が受けるもので、一般の人は受けられません。ただし、国立教育政策研究所のPISAのページでは、過去の調査の問題例が公開されており、誰でも見ることができます。
- 次のPISAはいつ行われますか?
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次回は2029年調査が予定されています。結果が公表されるのは、さらにその後になります。最新の予定は、OECDや国立教育政策研究所の発表で確認してください。
まとめ
「飛行機は犬でできている」は、PISAの「読みの流ちょう性」を測る問題に出てくる文で、正解は「いいえ」です。詩として読めば成り立つという声もありますが、この課題は文字どおりの意味が現実で成り立つかを、短い時間で次々に判断する力を見ています。
PISA2025で日本は3分野すべてOECD加盟国1位でしたが、読解力は503点と前回から13点下がり、流ちょう性の正答率の低下と、点数の低い層の増加が課題として示されました。一方で、評価し熟考する問題の正答率は上がっています。
流ちょう性は、短い文章を最後まで正確に読む回数を増やすことで鍛えられます。音読や、書かれたとおりに言い直す練習、見出しだけで判断しない読み方を、今日から少しずつ取り入れてみてください。

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