実験や観察は終わったのに、いざ論文にまとめようとすると手が止まる。中学生の自由研究では、じつはここでつまずく人がいちばん多いところです。
でも安心してください。科学論文には決まった「型」があります。8つのパートを順番に埋めていけば、文章が苦手でも形になります。
この記事では、中学生の科学論文の書き方を、構成8パートごとの例文つきで解説します。分量や用紙の目安、提出前のチェックリスト、コンクールに出すときの形式までまとめました。
科学論文は「うまい文章」を書く課題ではありません。やったことを、あとから読んだ人が同じようにたどれる形で残すのが目的です。ここさえ外さなければ大丈夫です。
中学生の科学論文は「8つの型」を埋めれば完成する
先に結論をお伝えします。科学論文は、次の8つのパートを上から順に書けば完成します。ゼロから文章の構成を考える必要はありません。
それぞれのパートで「何を書くのか」と「どのくらいの長さか」を一覧にしました。まずは全体像をつかんでおきましょう。
| パート | 書くこと | 長さの目安 |
|---|---|---|
| (1) タイトル | 何を調べたのかがひと目でわかる問い | 1行 |
| (2) 序論(動機・目的) | なぜ調べようと思ったか、何を明らかにしたいか | 2〜3段落 |
| (3) 準備物 | 使った材料と道具を、数量・規格まで | 箇条書き |
| (4) 実験方法 | 読んだ人が同じ手順を再現できるレベルで | 3〜5段落 |
| (5) 結果 | 実際に起きたことだけ。表やグラフを添える | 2〜4段落+図表 |
| (6) 考察 | なぜその結果になったのかの説明 | 3〜5段落(いちばん厚く) |
| (7) 結論・まとめ | 最初の問いへの答えと、感想 | 2〜3段落 |
| (8) 謝辞・参考文献 | 協力してくれた人へのお礼と、使った資料 | 数行〜1ページ |
この8つのうち、評価が分かれるのは(6)の考察です。結果までは実験をすれば自然に書けますが、考察は自分の頭で考えた分だけしか書けません。時間配分もここを厚めにするのがコツです。
書き始める前に決めておく2つのこと
いきなり書き出すより、先に2つだけ決めておくと迷いが減ります。テーマの「問いの形」と、提出先の形式です。
テーマを「疑問文」に直しておく
「10円玉の実験」のようなテーマのままだと、何を書けばゴールなのかがぼやけます。そこで、テーマを疑問文に直しておきます。
「10円玉のよごれは、どの調味料でいちばん落ちるのか?」——この形にすると、論文全体が「その問いに答える文章」になり、書く順番も自動的に決まります。
まだテーマそのものが決まっていない場合は、先にテーマ選びから片づけましょう。取り組む日数から逆算して選ぶと失敗しにくくなります。

提出先の形式を先に確認する
学校に出すのか、コンクールに応募するのかで、必要な形式が変わります。書き上げてから作り直すのは大変なので、最初に確認しておきましょう。
学校提出なら、まず先生の指示が最優先です。用紙の種類・枚数・締め切りをプリントで確かめてください。コンクールに出すなら、この記事の後半にある形式の目安が参考になります。
科学論文の構成8パートと書き方【例文つき】
ここからは、8つのパートを実際の文章で見ていきます。例として、次のような研究をしたと仮定して書き進めます。
この記事で使う例
テーマ:10円玉のよごれは、どの調味料でいちばん落ちるのか
使ったもの:酢、しょうゆ、ソース、レモン汁、水(比べる用)
例文はそのまま写すのではなく、「この位置に、この粒度で書けばいいんだな」という型として使ってください。中身は自分の研究に置きかえます。
(1) タイトルは「調べた問い」をそのまま書く
タイトルは、読む人が最初に目にする部分です。かっこよさより、内容が正確に伝わることを優先します。
| おしいタイトル | 良いタイトル |
|---|---|
| 10円玉の実験 | 10円玉のよごれは、どの調味料でいちばん落ちるのか |
| 調味料について調べた | 5種類の調味料による10円玉のよごれ落ちの比較 |
ポイントは、「何を」「何と比べて」調べたのかを入れることです。タイトルだけ読んで実験の中身が想像できれば合格ラインですね。
(2) 序論では「きっかけ」と「目的」を分けて書く
序論でつまずく人の多くは、動機と目的をまぜて書いています。この2つは役割が違うので、段落を分けると一気に読みやすくなります。
動機は「なぜ気になったか」という自分の話、目的は「だから何を明らかにするか」という研究の話です。最後に「予想」を書いておくと、あとの考察がぐっと書きやすくなります。
序論の記入例
家の手伝いで古い10円玉を見つけたとき、黒ずんだ表面が気になりました。調べてみると、酸性のものを使うとよごれが落ちると書かれていました。
そこで本研究では、台所にある調味料5種類を使い、10円玉のよごれの落ち方にどのような差があるのかを明らかにすることを目的としました。
実験の前の予想は、いちばん酸っぱいレモン汁がもっともよく落ちる、というものです。
(3) 準備物は「数量と規格」まで書く
準備物は、ただ名前を並べるだけでは足りません。読んだ人が同じものをそろえられるように、量や大きさまで書きます。
準備物の記入例
・10円玉 15枚(同じくらい黒ずんだもの)
・穀物酢、こいくちしょうゆ、中濃ソース、レモン果汁、水道水 各50mL
・紙コップ 5個、計量スプーン、ストップウォッチ、ティッシュペーパー
「10円玉 15枚」のように数を書くと、あとの実験方法で「5種類×3枚ずつ」という設計が自然に説明できます。準備物と方法はセットで考えると書きやすいですね。
(4) 実験方法は「もう一度できる」粒度で
実験方法のゴールは、まったく知らない人が読んで同じ実験を再現できることです。ここが科学論文と感想文をいちばん強く分ける部分になります。
そのために、そろえた条件を必ず書きます。「調味料の種類だけを変えて、量・時間・10円玉の状態はそろえた」と書けるかどうかが勝負どころです。
実験方法の記入例
(1) 紙コップ5個に、それぞれの液体を50mLずつ入れた。
(2) 各コップに10円玉を3枚ずつ、同時に入れた。
(3) 10分後に取り出し、ティッシュで軽くふき取った。
(4) 入れる前と後の色を写真にとり、明るくなった度合いを4段階(変化なし・少し・かなり・ほぼ元通り)で記録した。
なお、液体の量・つけた時間・ふき取り方は、5種類すべてでそろえました。
(5) 結果には「起きたこと」だけを書く
結果のパートに、理由や感想を混ぜないのが大切です。ここは事実の報告だけ。「なぜそうなったか」は次の考察で書きます。
数や段階で表せるものは、文章よりも表にしたほうが伝わります。表を出したあと、そこから読み取れることを1〜2文そえるのが基本の形です。
結果の記入例
10分後のよごれの落ち方は表1のとおりでした。もっとも変化が大きかったのはレモン果汁と酢で、3枚とも「ほぼ元通り」でした。水は3枚とも「変化なし」でした。
このように「表1のとおりでした」と本文から表を呼び出すのが、論文の書き方の型です。図表の番号の振り方は、このあとの章でくわしく説明します。
(6) 考察では「なぜそうなったか」を説明する
考察はいちばん評価される部分であり、いちばん書き方に迷う部分でもあります。おすすめは、次の3つの順に書いていく方法です。
この3つをそれぞれ1段落ずつ書けば、それだけで考察の形になります。
- 予想と比べる:最初の予想と合っていたか、ずれていたか
- 理由を考える:なぜその結果になったのか、調べたことと結びつける
- 次の課題を書く:今回わからなかったこと、次に試したいこと
考察の記入例
予想ではレモン果汁がもっとも落ちると考えていましたが、酢もほぼ同じ結果になりました。
資料で調べたところ、10円玉の黒ずみは銅が酸素と結びついてできたもので、酸性の液体によって取り除かれると説明されていました。レモン果汁と酢はどちらも酸性のため、同じくらいの結果になったと考えられます。
一方で、しょうゆとソースは中くらいの変化にとどまりました。色のついた液体だったため、明るさの判定がむずかしかった可能性があります。次は、つける時間を変えて調べてみたいです。
「考えられます」「可能性があります」という言い方に注目してください。言い切れないことは言い切らないのも、科学論文らしさのひとつです。
(7) 結論とまとめは「問いへの答え」から
結論の1文目は、タイトルにした問いへの答えです。ここで新しい話を始めず、短く言い切ります。
結論・まとめの記入例
10円玉のよごれは、酸性の液体である酢とレモン果汁でもっともよく落ちました。
今回の研究を通して、身近な台所の調味料でも性質に大きな差があることがわかりました。同じ「すっぱいもの」でも結果に差が出るのか、次はもっと種類を増やして調べてみたいです。
感想を書いてよいのはこのパートです。「楽しかった」だけで終わらせず、何がわかって、次に何を知りたくなったかまで書くと締まります。
(8) 謝辞と参考文献は決まった書式で
謝辞は数行で十分です。実験を手伝ってくれた家族、道具を貸してくれた先生、質問に答えてくれた施設の方などにお礼を書きます。
参考文献は書式が決まっています。本とウェブサイトで書き方が違うので、次の形を覚えてしまいましょう。
参考文献の書き方
【本】著者名『書名』出版社、発行年、参照したページ
【ウェブサイト】サイト名・ページ名、URL(参照日:2026年8月2日)
ウェブサイトは内容が書きかわることがあるため、参照日を必ず入れるのがルールです。より詳しい書式は、東京都立図書館のはじめてのレポート・論文作成ガイドが中高生向けにまとまっていて参考になります。
資料を読んで要点をまとめる作業に手間取っている場合は、要約の型を先に知っておくと下書きが早く進みます。

「考察」と「感想」はどう違う?
先生から「考察が感想になっている」と言われた経験はありませんか。この2つの違いは、結果とつながっているかどうかです。
| 感想になっている例 | 考察になっている例 |
|---|---|
| 酢がいちばん落ちたのでおどろきました。 | 酢が落ちたのは、酸性の液体が黒ずみを取り除くためだと考えられます。 |
| 実験は思ったより大変でした。 | 色の濃い液体は判定がむずかしく、結果に差が出にくかった可能性があります。 |
| 次もがんばりたいです。 | つける時間を変えれば、差がより明確になるかを確かめたいです。 |
見分け方はかんたんです。その文が「なぜ」「だから」でつながっていれば考察、気持ちだけで終わっていれば感想です。感想は結論・まとめのパートに移しましょう。
図・表・グラフの入れ方と番号の振り方
図表があると、論文の説得力は一気に上がります。使い分けの基準はシンプルで、細かい数字を見せたいときは表、大小の差を見せたいときはグラフです。
| 見せたいもの | 向いている形 |
|---|---|
| 正確な数値そのもの | 表 |
| 種類ごとの大小の比較 | 棒グラフ |
| 時間による変化 | 折れ線グラフ |
| 全体に占める割合 | 円グラフ |
| 実験の様子や変化の見た目 | 写真・スケッチ |
番号の振り方にも決まりがあります。表は「表1、表2」、グラフや写真は「図1、図2」と、出てくる順に通し番号をつけます。
タイトルの位置も決まっていて、表は上、図は下に書くのが一般的です。そして本文には必ず「表1に示すように」と番号で呼び出す文を入れます。
分量・用紙・レイアウトの目安
「何枚書けばいいのか」は、提出先によって変わります。指示があればそれが最優先ですが、指定がない場合の目安をまとめました。
| 提出先 | 形式 | 分量の考え方 |
|---|---|---|
| 学校(レポート用紙・ノート) | 先生の指示が最優先 | 指定がなければ、8つのパートがそろっていれば枚数は多くなくてよい |
| 模造紙1枚にまとめる | 図と表を中心に配置 | 本文は要点だけ。くわしい記録は別紙に |
| 日本学生科学賞(中学の部) | A4横書き | 原則5,000〜8,000字程度と案内されている |
| 自然科学観察コンクール | ノート・ファイル・模造紙など自由 | 作品応募用紙の貼りつけが必要 |
模造紙にまとめる場合は、上から下へ、左から右へ読める配置にします。8つのパートの順番はそのままに、見出しを大きめの字で書くと迷子になりません。
締め切りが近いときの進め方
提出まで日数が少ない場合は、書く順番を変えると早く仕上がります。頭から順に書こうとすると、たいてい序論で止まってしまうからです。
メモ、写真、測った数字を机の上に全部出します。ここで表を1枚作ってしまうと、あとが一気に楽になります。
やったことと起きたことは、思い出すだけで書けます。文章が苦手でもここは進むので、勢いをつける意味でも先に片づけます。
「予想と比べる」「理由を考える」「次の課題」の順に、1段落ずつ書きます。調べ直しが必要なら、ここで資料にあたりましょう。
中身ができてから前後を書くと、話がぶれません。結論は考察の1行目をふくらませるだけで形になります。
最後にタイトルを決め直します。書き終えた内容と合っているかを確かめ、参考文献と謝辞を添えれば完成です。
タイトルを最後に決めるのは、プロの研究者もよくやる方法です。中身が固まってからのほうが、正確な題名がつけられますよ。
提出前のチェックリスト
書き終えたら、出す前に見直しましょう。まずは中身についての5項目です。
- タイトルの問いに、結論が答えているか
- 結果のパートに、理由や感想がまぎれていないか
- 考察が「なぜ」の説明になっているか
- 実験方法を読んで、他の人が同じことをできそうか
- そろえた条件と、変えた条件が書き分けられているか
次に、形式についての5項目です。ここは見落としやすいので、指で追いながら確認するのがおすすめです。
- 図と表に、通し番号とタイトルがついているか
- グラフの軸に、項目名と単位が入っているか
- 参考文献に、参照日やページ数まで書いてあるか
- 名前・学年・クラスの記入もれがないか
- 数字と単位の書き方が、全体でそろっているか
やってはいけない3つのこと
最後に、評価が大きく下がってしまう行為を3つ挙げておきます。どれもうっかりやってしまいがちなので、気をつけましょう。
ウェブサイトの文章をそのまま写す
調べたことを書くのは問題ありませんが、文章をそのまま写すのは避けます。引用するときは「」でくくり、どこから引いたのかを参考文献に必ず示してください。
生成AIの文章をそのまま提出する
あなたがやった実験の結果は、あなたにしか書けません。AIが書いた一般論を入れると、かえって考察が薄くなります。使うなら「この文で意味が通じるか確認して」といった見直しの相棒として使いましょう。
思ったとおりになるようデータを直す
予想と違う結果が出ても、数字を書きかえてはいけません。科学の世界では、これがいちばんやってはいけないこととされています。
予想が外れた研究は、失敗ではありません。「なぜ外れたのか」を考えた部分こそが、いちばん読みごたえのある考察になります。
よくある質問
- 実験が予想と違う結果になりました。やり直したほうがいいですか?
-
やり直す必要はありません。データはそのまま載せ、「なぜ予想と違ったのか」を考察に書きましょう。予想が外れた研究のほうが、考察に書けることが多くなります。
- 科学論文と、読書感想文やレポートは何が違うのですか?
-
感想文は「自分がどう感じたか」が中心の文章です。いっぽう科学論文は、「立てた問いに対する答えを、集めたデータで示す」文章になります。気持ちを書く場所は、結論・まとめのパートだけと考えてください。
- 実験ではなく調べ学習でも、科学論文になりますか?
-
なります。実験方法のかわりに「調査方法」として、どの資料をどんな順番で調べたのかを書けば大丈夫です。構成は同じ8つのパートで組み立てられます。
- 参考文献にウィキペディアを使ってもよいですか?
-
調べ始めには便利ですが、そこで止めないのがおすすめです。記事の下にある出典をたどって元の資料を確認し、その資料のほうを参考文献に書くと信頼度が上がります。
- 1日しか時間がありません。間に合いますか?
-
記録が残っていれば間に合います。この記事の「締め切りが近いときの進め方」のとおり、結果と方法から書き始めてください。序論とタイトルを最後に回すのが、いちばんの時短になります。
まとめ
中学生の科学論文の書き方について、構成8パートと例文を中心にお伝えしました。要点を振り返ります。
- 科学論文は8つのパートを順に埋めれば完成する
- テーマは「〜はどれがいちばん〜か?」という疑問文に直しておく
- 結果には事実だけを書き、理由は考察に分ける
- 考察は「予想と比べる・理由を考える・次の課題」の3段落で書ける
- 図表には通し番号と単位をつけ、本文から呼び出す
まずは手元の記録を全部ならべて、表を1枚つくるところから始めてみてください。そこさえできれば、残りは型に沿って埋めるだけです。
自由研究そのものをこれから始める人や、勉強の進め方に悩んでいる人は、こちらの記事もあわせてどうぞ。


参考にした資料
- 東京都立図書館「はじめてのレポート・論文作成ガイド」
- 自然科学観察コンクール「応募方法」
- ミツカングループ お客様相談センター「10円玉をお酢に浸けるときれいになるのはどうしてですか?」(記事内の例で使った反応の説明)

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