もののけ姫の主題歌はなぜ2番に歌詞がない?真相を解説

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スタジオジブリの傑作『もののけ姫』。米良美一さんが歌う主題歌を聴いて、ふと「あれ、2番の歌詞ってあったかな?」と気づいた方は多いのではないでしょうか。あの神秘的な歌声には、実は1番の歌詞しかありません。

この記事では、主題歌に2番の歌詞がない理由を、関係者の発言という確かな出典をもとに解説します。あわせて、短い歌詞に込められた意味や、知っておくと映画がもっと楽しくなる制作エピソードも紹介します。

先に結論をお伝えすると、2番がスキャット(歌詞のない歌唱)なのは「宮崎駿監督が1番しか歌詞を書かなかった」からです。歌った米良美一さん自身がインタビューで語っています。

目次

もののけ姫の主題歌に2番の歌詞がない理由

結論からお伝えします。主題歌「もののけ姫」の2番に歌詞がないのは、作詞を手がけた宮崎駿監督が、1番の歌詞しか書かなかったからです。深い謎というより、シンプルな事実だったのです。

「1番しか書けない」と語った宮崎駿監督

この理由は、歌を担当した米良美一さん自身が明かしています。1997年の雑誌『キネマ旬報』のインタビューで、米良さんはこう語りました。「短い詩なんですよ。ところが監督は1番しか書けないとおっしゃる。この歌は1番で完結しちゃっているんですね」と。

つまり、無理に2番を作るのではなく、1番で物語が完結しているからこそ、それ以上は書かないという判断だったわけです。作品への妥協を許さない宮崎監督らしい、誠実な選択だったといえるでしょう。

歌詞のない2番が生んだ「余白」の効果

結果として、歌詞のない2番のパートが、この楽曲に独特の深みを与えています。言葉がない部分には、聴く人それぞれの感情や解釈が入り込む余地が生まれるからです。

日本の美意識には、「間」や「余白」を大切にする文化があります。すべてを言葉で説明せず、あえて語らないことで、より深い余韻を残す。神々しい自然や、人間のはかなさといった「言葉にできないもの」を、2番のスキャットが静かに伝えているのです。

2番の「ア…」「ウ…」はスキャットという歌唱法

2番で聞こえてくる「ア…」「ウ…」といった声は、スキャットと呼ばれる歌唱法です。スキャットとは、意味のある歌詞ではなく、声そのものでメロディーを表現する歌い方を指します。

森の神々やもののけたちの世界を、人間の言葉だけで表現するのは難しいものです。言葉を超えた声で旋律をなぞるスキャットは、自然と人とのあいだにある神秘的な空気を、音楽として届けてくれます。

主題歌は「アシタカからサンへの歌」だった

主題歌「もののけ姫」は、単なる映画のテーマソングではありません。物語の主人公アシタカが、もののけ姫サンへ向けて歌う「心の歌」として位置づけられています。これは制作の経緯からもうかがえます。

久石譲の娘・麻衣から米良美一への変更

この曲は当初、作曲を担当した久石譲さんの娘・麻衣さんの歌唱で収録されていました。ところが宮崎監督は、「アシタカの歌だから、女性が歌う歌じゃない」と考えます。そして米良美一さんの声を耳にして、歌い手として抜てきしたのです。

「女性が歌う歌じゃない」という監督の言葉は、この曲がアシタカの視点で書かれていることを示しています。歌い手を変えてまでアシタカの声にこだわった点に、主題歌へのこだわりが表れています。

久石譲さんの娘・麻衣さんが歌うバージョンは、イメージアルバム『もののけ姫』で聴くことができます。映画版とは編曲も異なり、聴き比べると印象の違いが楽しめます。

なぜ「歌」で気持ちを伝えるのか

アシタカとサンは、映画の中で多くの言葉を交わすわけではありません。人間と自然という対立する立場にいる二人が、たがいの気持ちを完全に理解し合うのは難しいことです。だからこそ、アシタカの想いは直接的な会話ではなく、この歌を通じて表現されているのです。

歌詞に込められた意味を読み解く

短い歌詞ですが、そこにはアシタカの心の動きが凝縮されています。冒頭の弓の描写から、サンへのまなざし、そして二人の関係の核心まで。実際の歌詞に沿って、その意味を見ていきましょう。

「はりつめた弓の ふるえる弦よ」が表すもの

歌い出しの「はりつめた弓の ふるえる弦よ」は、弓の名手であるアシタカらしい描写です。矢を射るために弦を力いっぱい引いている様子が浮かびますが、それと同時に、呪いを受けたアシタカの心の震えも重ねられていると解釈できます。

続く「月の光にざわめく おまえの心」では、月明かりの下で揺れ動く心が描かれます。夜という時間帯が選ばれているのも、内省的な気分を引き立てる効果があります。

「とぎすまされた刃」に重ねたサンの姿

「とぎすまされた刃の美しい そのきっさきによく似た そなたの横顔」というフレーズは、サンの姿を刃にたとえています。鋭い刃は危険であると同時に、磨き抜かれた美しさも持っています。

サンもまた、人間に対しては攻撃的でありながら、その生き方には純粋で美しいものがあります。アシタカは、そんなサンの二面性をまるごと受けとめ、いとおしく感じているのです。

「もののけ達だけ」が示す切なさ

歌の締めくくりは「悲しみと怒りに ひそむ まことの心を知るは 森の精 もののけ達だけ」と続きます。サンの本当の心を理解しているのは、人間ではなく、もののけたちだけだというのです。

どんなに相手を理解したいと願っても、わかち合えない悲しみや怒りは必ず残ります。それでも、すべてを理解し合えなくても、受け入れたり反発したりしながら共に生きていく。映画のラストで二人が選ぶ「別々に暮らしながら共に生きる」という結末を、この歌詞は静かに予感させています。

音楽と歌声に隠された工夫

この主題歌の魅力は、歌詞だけではありません。久石譲さんの音楽と、米良美一さんの歌声にも、物語を支える工夫が凝らされています。

米良美一のカウンターテナーという歌声

この楽曲の大きな特徴が、米良美一さんのカウンターテナーという歌声です。カウンターテナーとは、男性でありながら女性のように高い声域で歌う歌唱法のこと。西洋のクラシック音楽では古くからありましたが、日本の映画音楽で本格的に使われることはまれでした。

この中性的な歌声は、性別や年齢を超えた神秘性を楽曲に与えています。人間でも、完全に自然の存在でもない。その中間にいるようなアシタカやサンの世界観を、声そのもので表現しているのです。

「つぶやくように歌って」という監督の指示

レコーディングでは、宮崎監督から意外な指示が出されました。「感情を込めすぎず、つぶやくように歌ってほしい」というものです。普通なら歌手に豊かな感情表現を求めるところを、あえて感情を抑えるよう求めたのです。

この指示は簡単ではなく、米良さんは収録で大いに苦労したと伝えられています。その様子は、メイキング映像『もののけ姫はこうして生まれた。』に記録されています。結果として、特定の誰かの感情を超えた、静かで普遍的な歌声が生まれました。

久石譲が生み出した和の響き

作曲を手がけた久石譲さんは、日本の伝統的な音の要素を現代的にアレンジする名手です。この楽曲でも、シンプルなメロディーラインの繰り返しが、聴く人の心に深く染み入ります。一度聴いたら忘れられない旋律は、まさに久石譲さんの真骨頂といえるでしょう。

映画版では、米良さんの声を引き立てるために、編曲はあえて音数を抑えてシンプルに仕上げられています。声と音楽が静かに溶け合う構成も、この主題歌が長く愛される理由のひとつです。

映画を観る前と観た後では、同じ作品でも感じ方が変わるものです。「観る」という言葉そのものの奥深さについては、こちらの記事でも触れています。

主題歌が今も愛され続ける理由

公開から四半世紀以上が過ぎた今も、この主題歌は多くの人に愛されています。その背景には、時代を超えるテーマ性と、解釈の自由度の高さがあります。

『もののけ姫』が描いた「自然と文明の対立」「立場の違う者どうしの理解」というテーマは、現代でも色あせません。環境の問題や、多様な価値観の共存など、今の私たちが向き合う課題とも重なるからです。

さらに、歌詞のない2番があることで、この曲は聴く人によってさまざまに受けとめられます。恋の歌としても、自然への賛歌としても聴ける。聴く人の経験や心境によって、毎回違った感動を届けてくれるのです。

ちなみに、映画の最後に流れる「fin」という言葉の意味をご存じでしょうか。エンディングの余韻にまつわる豆知識として、あわせて読んでみてください。

もののけ姫の主題歌に関するよくある質問

もののけ姫の主題歌を歌っているのは誰ですか?

カウンターテナーの米良美一さんです。作詞は宮崎駿監督、作曲・編曲は久石譲さんが手がけています。

なぜ2番に歌詞がないのですか?

宮崎駿監督が1番の歌詞しか書かなかったためです。歌った米良美一さんは「監督は1番しか書けないとおっしゃる。この歌は1番で完結している」とインタビューで語っています。

この主題歌は誰の気持ちを歌った歌ですか?

主人公アシタカが、もののけ姫サンへ向けて歌う歌として作られています。宮崎監督が「アシタカの歌だから女性が歌う歌じゃない」と考え、歌い手を米良美一さんに変更した経緯からもうかがえます。

まとめ:背景を知ると主題歌がもっと深く響く

『もののけ姫』の主題歌をめぐる謎と、その背景を解説してきました。最後に要点を振り返ります。

  • 2番に歌詞がないのは、宮崎駿監督が1番しか歌詞を書かなかったから。歌った米良美一さんがインタビューで明かしている。
  • 歌詞のない2番のスキャットが、言葉にできない余韻と神秘性を生んでいる。
  • 主題歌はアシタカからサンへ向けた歌。歌い手を麻衣さんから米良美一さんに変更した経緯にも、そのこだわりが表れている。
  • 米良美一さんのカウンターテナーと久石譲さんの音楽が、楽曲に独特の美しさを与えている。

こうした背景を知ったうえで、もう一度この主題歌に耳を傾けてみてください。歌詞のない2番にも、きっと新しい発見があるはずです。機会があれば、映画も改めて観賞してみてくださいね。

本記事は、雑誌『キネマ旬報』掲載の米良美一さんのインタビュー、メイキング映像『もののけ姫はこうして生まれた。』、および公開情報をもとに作成しています。

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