地震や台風、洪水などの災害に対して、防災グッズはしっかり揃えていますか?
以前は必要とされてきたアイテムであっても、実際に被災した方々の体験をもとに「なくても大丈夫」と言われるケースが増えています。
あなたが知っている防災の常識は、もしかすると古い情報かもしれません。
この記事では、実際に不要とされた防災グッズをランキング形式で紹介しています。
この記事を読むと、必要のないアイテムにお金や労力をかけず、本当に必要な防災グッズを効率よく備えることができますよ。
ただし、ランキングで紹介しているからといって、全てが完全に役立たずというわけではありません。あくまでも優先度が低い例として考えてください。
このランキングだけに頼らず、あなたの状況や季節、家族構成を踏まえて、必要なものを選んでくださいね。
不要な防災グッズランキングを公開!
防災のために常備していたけれど、実際にはあまり出番がなかったものを選び、ランキング化しました。災害時に使えると思って購入したアウトドアアイテムも、使用頻度が低い場合があります。その点には要注意です。
このランキングに登場する防災グッズのうち、およそ半分がアウトドア用に流通している製品なんですよ。
1位 手回しラジオ
手回しラジオを利用するときは、ハンドルを回し続けるうちに腕が疲れやすく、音も大きくなるため、ラジオ放送を聞き逃しがちです。さらに、回転音が周囲に響くので、周りへの気遣いが必要な場面も多いでしょう。
便利だと思われていた手動発電方式のラジオですが、実際に使ってみると、発電量は期待ほど多くありませんでした。
下の表は、1分間ハンドルを回転させた際に、ラジオや他機器がどれぐらい動くかを示しています。参考にしてみてください。
ラジオ | LEDライト | スマホ通話 | |
---|---|---|---|
A社 | 5~8分 | 10~15分 | 1分10秒 |
B社 | 20~30分 | 10~15分 | 30秒 |
C社 | 5~7分 | 10分 | 1分 |
1分でも手回ししないといけないので、夜間に何度もトイレへ行ったりするうちに電池切れになる恐れがあります。スマホの充電時間はバッテリー残量にも影響されるため、予想よりも早く使えなくなることもあるでしょう。
手回し発電は「最終的な手段」として考えるべきです。ただし、機種によっては以下のようなリスクがあるので留意してください。
- 数か月ごとに動作確認が必要
- 発電に適したハンドルの回転速度がある
- スマホ充電に非対応の機種がある
- 充電しながらスマホを操作できない
- 手回し以外の方法で充電できない
- 古いモデルに多いニッケル水素電池は放置すると寿命が短くなる
そうした理由から、手回しをしてもほとんど充電されない可能性は十分に考えられます。
一方で、乾電池式の多機能ラジオは非常に重宝します。天気次第のソーラー充電や停電リスクがあるUSB充電よりも安心度が高いです。
乾電池対応ラジオの連続稼働時間は下記の通り。使う乾電池の本数はメーカーによって異なるので要確認です。
ラジオ | LEDライト | スマホ通話 | |
---|---|---|---|
A社 | 120~160時間 | 65時間 | 50分 |
B社 | 40時間 | 19時間 | 20分 |
C社 | 15~18時間 | 10~12時間 | ― |
同じ1分でも、ハンドルを回し続けるより乾電池を準備したほうが、時間面から見てもはるかに合理的です。
大きな音や乏しい発電能力などを考慮すると、手回しラジオは必需品としては優先度が低めという結論になるでしょう。
「1分間、ラジオのハンドルを回すか乾電池を入れるか」といった選択をイメージすると、乾電池があったほうがやはり便利ですね。防災用に乾電池を蓄えておくことをお忘れなく。
2位 ティッシュ
便利なティッシュですが、実はトイレットペーパーのほうが汎用性が高いので、今回はティッシュを「不要品」ランキングに入れました。
トイレットペーパーは切り取り量を調節しやすく、無駄を省きやすいです。かさばるのを懸念するなら、芯を抜いて圧縮すればコンパクトに持ち歩けます。ジップロックに入れておけば濡れても安心です。
仮に関東や中部地方を中心とする大地震が起こった場合、全国でトイレットペーパーが不足する恐れがあります。静岡県は国内生産の約40%を担うため、災害が起こると製造が止まるリスクがあるのです。被災地ではなくても、手に入りにくくなる可能性があります。
トイレットペーパーはティッシュの代わりにも使えますが、ティッシュはトイレに流すと詰まりやすいです。
こうした理由から、持っておくなら「ティッシュよりトイレットペーパー」のほうが有効的といえます。
また、警視庁警備部災害対策課が発信している役立つツイートもチェックしてみてください。必見ですよ。
3位 テント
避難所でのプライバシー対策としてテントを持ち込みたいと思う方もいますが、実際は自動車で寝起きする人がほとんどで、テントはあまり役立ちません。
避難所でテント生活を避けるべき主な要因は2つです。
- 安全面の問題
- 支援活動の妨げ
4位 携帯浄水器
水の確保は災害時の最重要課題の一つです。川の水などをろ過できれば、大量の水を持たなくて済むため便利に思われがちですが、携帯浄水器には注意点があります。
たとえ「ウイルスを99%除去可能」と書かれていても、塩分や化学物質、放射性物質など溶け込んだ成分までは除去できないケースが多いのです。
海水は塩分をろ過できないため飲み水にできず、葉の色で濁った川の水を透明にすることも難しいです。
つまり、携帯浄水器を使うには水の性質をよく理解しておく必要があり、誰でも手軽に飲み水を確保できるわけではありません。もし飲用に向かない場合は、生活用水として洗濯などに使うのがいいでしょう。
5位 大容量の水
水の確保に関連する話題が2つランクインしたのは、水がいかに重要かを物語っています。
「大容量の水は不要」と言われるのは、単に重くて運びづらいからです。普段ウォーターサーバーを活用している人なら十分なストックがあるかもしれませんが、避難時に持ち出すのは事実上難しいでしょう。
たとえば、12リットル=12キロの容器を背負っての避難は困難です。2リットルのペットボトルでも、片手で扱うには重く、持ち運び中に浪費してしまうリスクがあります。
女性や子ども、高齢の方にとっては2リットルボトルから水を少量ずつ使うのは負担が大きいもの。最初から500ミリリットルのボトルで小分けにしておけばストレスが減ります。
番外編 ナイフやロープ
防災グッズのイメージとして「サバイバル用のナイフやロープ」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
ナイフやロープは使い慣れた人には確かに便利ですが、初心者が無理に使うと手を切ったり、想定通りに働かないなどの問題も報告されています。
ナイフを持ち歩きすぎると銃刀法違反になる恐れがあり、ロープで2階から降りる方法を想定していても、素人の結び方ではほどけて落下するリスクが高いです。
そのため、ナイフの代わりにカッターを、ロープの代わりにガムテープを用意したほうが実用的という意見が多く聞かれました。
防災グッズにヘルメットは不要?
昔は、防災セットといえばヘルメットが定番でしたが、近年ではあまり見かけなくなりました。ここで、ヘルメットが本当に必要かどうか考えてみましょう。
ヘルメットは必須ではなく優先度が低め
結論として、ヘルメットは防災グッズの中でも必要度が低いと言われています。「いらなかった」という声は多いですが、だからといって一切役立たないわけではありません。
家族が多い場合、複数のヘルメットを保管するにも場所を取りますし、自転車用のヘルメットなら一応代わりに使えます。しかし、防災ヘルメットとして国家認定された「保護帽」とは基準が異なる点に注意しましょう。
ヘルメットの役割は大きく以下の通りです。
- 頭上からの落下物や飛来物から頭部を守る
- 転倒した際にがれきによるケガを防ぐ
- 両手を使わずに頭を防護できる
とはいえ、実際には片付け作業時にもヘルメットを着用しなかった人が多いという例もあります。「絶対に必要」とは言えないけれど「あれば安心」と感じる程度でしょう。
必要だと思い込んでいたものが、実はほとんど使われない、というのは防災グッズにありがちな話です。自分に合ったアイテムを厳選して、独自の防災セットを構築しましょう。
ヘルメットの代用:クッションやカバン
ヘルメットは頭部を守る点では最適ですが、意外と身近なもので代用可能です。
- 毛布・クッション
家の中で地震が起こったら、毛布やクッションで頭を覆うとよいでしょう。避難所に移動するときは手で持つ必要があり面倒ですが、夜に寝るときにも使えます。 - カバン
外出中なら、すぐに手に持っているカバンを頭上にかざし、ガラス破片などから頭部を守れます。ビル街での落下物対策として覚えておくと安心です。
防災グッズの見直し:不要なものを減らそう
「念のために持っておくかな」と思うアイテムを削ることで、本当に必要な防災グッズに集中できます。
ライフラインが復旧するまでの期間をイメージし、実用的なグッズを優先することが大事です。
ライフライン復旧までのおおよその日数
過去の大地震(東日本大震災や阪神淡路大震災など)では、9割のライフライン復旧までにかかった日数は以下の通りです。
https://tenki.jp/bousai/knowledge/48ae160.html
最も早く復旧したのは電気で、1週間程度で照明や電子レンジが再び使えるようになりました。その後、水道、ガスと順に復旧が進む流れです。
電気が割と早く戻ると想定できるため、IHクッキングヒーターや電気ポットなどを優先して備えるのも一つの方法です。
絶対に必要な防災グッズはこれ
大規模地震が起きてから72時間以内は、自衛隊が真っ先に人命救助に動くため、支援物資が手元に届かないことがよくあります。この3日間を乗り切れるかどうかが鍵になります。
本当に必須なアイテムに集中し、不要なものは省く姿勢が重要です。以下で、実際に被災者が「これは必要だった」と感じたグッズを順に確認しましょう。
水
人の体の約6割が水分なので、3日ほど水分補給ができないと危険な状態に陥ります。
「大容量は不要」と言われることもありますが、たとえ少量でも飲み水は必須です。
避難所では湧き水の利用などを模索することが多いですが、自宅が倒壊していないなら家にこもったほうがプライバシーを保ちやすく、実際そうする人が大半です。
ただ、自宅避難だとどこで水を確保するかという情報が不足しがちなので、最低でも1人あたり3リットル×3日分=9リットルを目安に自前で用意しておきましょう。
食料
災害時は加熱や冷蔵が難しいため、長期保存ができて、開封後すぐに食べられる食品を多めに揃えるのがおすすめです。
アルファ米や缶詰などは準備しやすく、栄養面も考慮できるようにいろんな種類を用意しましょう。炭水化物以外にも、肉・魚・野菜の缶詰をストックしておくと、食事のバランスが取りやすくなります。
缶詰には味に慣れておくことも大切です。いつも食べなれたものがあるだけでも、災害時のストレスを減らせます。海産物や肉、野菜、フルーツなど、種類は豊富にあるので好みを探してみましょう。
簡易トイレ
災害時にはトイレの問題も切実です。水や食料を備えるだけでなく、トイレ対策もしっかり考えましょう。
水が通っているからといって普通に使うと、排水管の破損などで逆流事故が起こり、マンションでは下の階が汚水被害に遭う危険性もあります。
トイレが使えないからといって排泄を我慢すると、エコノミー症候群のリスクが上がり、衛生環境の悪化でウイルス発生にもつながります。簡易トイレは必須です。
以下の点を確認して選ぶと安心です。
- 座って使用できる形状
- 袋が破れにくく、外から内容が見えない
- 凝固剤に防臭・防菌効果がある
安価なものは長期間の利用に耐えない場合があるので、しっかりした商品を選ぶようにしましょう。
モバイルバッテリー
災害時は親戚や友人からの安否確認が多数来るうえ、最新情報を得るのにもスマホが欠かせません。容量が大きいモバイルバッテリーを用意しておけば、1週間ぶんの充電を確保できる場合もあります。
スマホの省電力モードも活用しつつ、無駄な消費を抑えましょう。
また、総務省が整備している「00000JAPAN(ゼロファイブジャパン)」という無料Wi-Fiを使える場合があります。
https://www.wlan-business.org/00000japan
セキュリティ面は万全ではないため、ネット通販などは避けて、皆で譲り合いながら利用しましょう。
懐中電灯
冬場は夜が長く、避難生活では懐中電灯が欠かせません。夜間に大きな余震が起きたらすぐ移動できるよう、家族分を用意しておくと安心です。
ローソクは倒れて火災の原因になるため、使わないようにしましょう。水が使えない環境では火を消せず、被害が拡大する可能性があります。
下着・ナプキン
食料や水が用意できれば一安心というわけでもありません。災害時でも清潔を保つのは大事です。
お風呂に入れない状況が続くことも多く、気分を衛生的に維持するためにも替えの下着は必要です。おりものシートを活用すると、少ない枚数でも対応しやすくなります。生理用品の確保もお忘れなく。
歯ブラシ・マウスウォッシュ
水の使用が制限されると歯磨きもままなりません。そんなときにマウスウォッシュがあれば水をほとんど使わず口内ケアができます。
歯ブラシと合わせて使うと、最低限の水で口の中を清潔に保てるので便利です。
カセットコンロ
災害時、電気やガスが再開するまで1週間以上かかることもあり、その間に三食を自力で用意するのは大変です。とりわけ寒い時期は、温かいご飯が恋しくなりますよね。
いつもと同じように温かい食事を取ると、精神的な安定にもつながります。そのためにもカセットコンロは重要なアイテムです。
現金
災害時にはクレジットカードや電子マネーが使えず、現金しか通用しない場面が出てくるかもしれません。自販機で飲み物を買えず困ることもあり得ます。
長期化するほど、現金で支払う機会が増えますから、防災グッズには必ずお金を入れておきましょう。
まとめ
優先度が低い防災グッズとして、手回しラジオ、ティッシュ、テント、携帯浄水器、大容量の水、ナイフやロープなどが挙げられます。手回しラジオは発電効率と音の問題から、乾電池タイプが便利といえるでしょう。長らく定番だったヘルメットも、今は必ずしも用意しなくてよいという意見が増えています。
過去の災害では電気、水道、ガスの順で復旧し、完全に戻るまでに約1か月かかりました。地震直後の72時間は人命救助に専念されるため、支援物資は届きにくいです。まずは自力で3日間をしのげるよう、必要なものを欠かさず備えておきましょう。
とくに、水、食糧、簡易トイレ、モバイルバッテリー、懐中電灯、下着とナプキン、歯ブラシとマウスウォッシュ、カセットコンロ、現金は最優先です。いつ起こるかわからない災害に備え、この記事をヒントに自分に合った防災グッズを用意しておいてくださいね。
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