毎年、夏から秋にかけて日本列島に大きな影響を与える「台風」。テレビやインターネットで大雨や暴風による災害のニュースを見るたびに、「今年はどんな台風がやってくるんだろう」「うちの地域は大丈夫かな」と心配になる方も多いことでしょう。
「台風っていつ頃から発生するの?」「日本に一番来やすい時期っていつなの?」「台風に備えて何を準備しておけばいいの?」そんな疑問をお持ちではありませんか。
この記事では、台風に関するさまざまな疑問について、気象庁の公式データを基にして分かりやすく解説していきます。台風の発生時期から日本への接近・上陸のピーク時期まで、そして何より大切な「もしもの時の準備」について、この記事1つで必要な知識をすべて身につけることができます。
自然災害は予想もつかないタイミングでやってきます。けれども、正しい知識と十分な準備があれば、被害を大幅に軽減することができるのも事実です。ぜひ最後まで読んで、あなたとご家族の安全を守るための知識を身につけてくださいね。
結論:日本の台風シーズンは「7月から10月」がメインです
「台風のシーズンっていつなの?」という質問に対する答えをまず最初にお伝えしますね。
結論から言うと、「台風の発生自体は1年中ありますが、日本への接近・上陸が最も多くなるのは7月から10月の4か月間」ということになります。
中でも、8月と9月は台風の接近・上陸数が年間を通じて最多となる要注意期間であり、この時期は特に警戒が必要です。
多くの人が「台風といえば夏」というイメージを持っているのは、まさにこの時期にテレビやネットで台風関連のニュースを目にする機会が格段に増えるからなんですね。ただし、台風の「発生」と日本への「接近・上陸」には少し違いがあるので、この点についても詳しく説明していきます。
知っておきたい!「発生」「接近」「上陸」の定義とは
天気予報でよく耳にする言葉ですが、実は「発生」「接近」「上陸」にはそれぞれ明確な定義があります。これらの違いを理解すると、気象情報をより正確に把握できるようになりますよ。
台風の「発生」について
台風の「発生」とは、熱帯の海上で生まれた低気圧(熱帯低気圧)が発達して、最大風速が秒速17メートル(風力8)以上になった状態のことを指します。発生場所は通常、日本からはるか南の太平洋上で、この時点では日本に直接の影響はまだありません。ちなみに、台風の強さは最大風速によって5段階に分類されており、秒速17メートル以上が台風の最低基準となっています。
台風の「接近」について
台風の「接近」とは、台風の中心が日本のいずれかの気象官署から半径300キロメートル以内に入った状態を言います。この段階になると、台風の大きさや強さによっては、風や雨が強くなり始めたり、海岸では波が高くなったりと、間接的な影響が現れ始めます。遠くにいても油断は禁物の段階です。
台風の「上陸」について
台風の「上陸」とは、台風の中心が北海道、本州、四国、九州のいずれかの海岸線に到達した場合を指します。意外に思われるかもしれませんが、台風がよく通る沖縄県や奄美地方に到達しても、気象庁の定義では「上陸」ではなく「通過」と表現されます。上陸すると、その地域では激しい雨や強烈な風による甚大な被害が発生する可能性が一気に高まります。
このように、遠い海上での「発生」から始まり、日本近海への「接近」、そして本土への「上陸」という段階的な流れがあることを覚えておきましょう。
気象庁データで読み解く!月別の台風発生パターン
それでは、実際に台風がどの時期にどのくらい「発生」しているのか、気象庁の過去30年間の統計データ(1991年から2020年の平年値)を基にして詳しく見ていきましょう。
意外な事実:台風は真冬でも発生している
「台風1号」という言葉を聞くと、夏の始まりを告げるもののように感じる人も多いでしょう。しかし実際のところ、台風1号の発生時期は年によってかなりばらつきがあります。
過去のデータを振り返ると、1月や2月といった真冬の時期に発生することもあれば、2016年のように7月にずれ込んだ年もありました。つまり、台風の「発生」という点で考えれば、明確な「シーズンの始まり」は存在せず、1年を通じていつでも起こりうる現象だと言えるでしょう。
発生数のピークは間違いなく「8月」
1年を通して発生する台風ですが、やはりその頻度は夏から秋にかけて大幅に増加します。月別の平年発生数を見ると、次のような傾向が見えてきます。
最も多いのは8月で年平均5.7個、続いて9月の4.8個、そして10月と7月がそれぞれ3.6個となっています。これら7月から10月までの4か月間だけで、年間発生数の約7割を占めているのです。この時期に南の海上で台風が次々と誕生することが、日本への影響が集中する大きな理由となっています。
シーズン終盤でも発生は続く
10月を過ぎると台風の発生数は確実に減少していきますが、完全にゼロになるわけではありません。11月にも平均で2.3個、12月には1.2個の台風が発生しており、中には年末近くまで台風が発生し続けた年もあります。
この時期の台風は日本まで北上してくることは少なくなりますが、可能性がまったくないわけではないので、頭の片隅に置いておくとよいでしょう。
なぜ夏から秋にかけて日本への影響が集中するのか?
1年中発生している台風なのに、なぜ7月から10月、特に8月と9月に日本への接近・上陸が集中するのでしょうか。この謎を解く鍵となるのが、日本の夏を特徴づける「太平洋高気圧」という巨大な高気圧の存在です。
夏の間、この巨大な高気圧は日本の南側から大きく張り出して、日本列島全体を覆うように位置しています。南の海上で発生した台風は、この高気圧の縁に沿って移動する性質があり、その後、上空の偏西風に乗って北東方向へと進路を変えていくのです。
7月から8月の台風の動き
7月から8月にかけては、太平洋高気圧が日本列島をしっかりと覆っているため、台風は高気圧の縁に沿って沖縄や台湾方面へ向かうケースが多くなります。ただし、高気圧の勢力がやや弱まったり、位置がずれたりすると、その隙間を縫って日本本土へ向かってくることがあります。この時期の台風は動きが遅いことが多く、長時間にわたって大雨を降らせる傾向があります。
9月から10月の台風の動き
9月から10月にかけては、夏の終わりとともに太平洋高気圧が東へと後退し始めます。すると、日本列島の南海上に「台風の通り道」ができやすくなり、この道を通って台風が日本へ接近・上陸しやすくなるのです。秋の台風は、偏西風が強まるため比較的速いスピードで日本列島を通過することが多く、被害が広い範囲に及ぶ危険性も高まります。
このように、台風の進路は太平洋高気圧の勢力や位置に大きく左右されるため、日本への影響が夏から秋にかけて集中するという現象が起こるのです。
知っておきたい台風の基礎知識
台風への備えを考える前に、台風そのものについてもう少し詳しく知っておきましょう。正しい知識があると、より適切な判断ができるようになります。
台風の強さの分類
台風は最大風速によって強さが5段階に分類されています。風速17メートル以上で「台風」、25メートル以上で「強い台風」、33メートル以上で「非常に強い台風」、44メートル以上で「猛烈な台風」となります。風速が2倍になると、風の力は4倍になるため、数字以上に破壊力が増大することを覚えておきましょう。
台風の大きさの分類
台風の「大きさ」は、風速15メートル以上の強風域の半径によって決まります。半径300キロメートル以上500キロメートル未満が「大型の台風」、500キロメートル以上が「超大型の台風」と呼ばれます。大型の台風は影響範囲が広く、長時間にわたって被害をもたらすことがあります。
台風シーズンに向けた完全防災マニュアル
台風についての基本的な知識を身につけたところで、ここからは最も重要な「備え」について具体的に解説していきます。準備は「シーズン前の準備」と「台風接近時の対応」の2つのフェーズに分けて考えるのが効果的です。
フェーズ1:シーズンが本格化する前の準備(6月頃まで)
台風シーズンが本格化する前に、少し手間に感じても以下の準備を済ませておくことで、いざという時の安心につながります。
1. ハザードマップで地域のリスクを把握する
まず最初に、お住まいの自治体が作成している「ハザードマップ」を必ず確認しましょう。これは、洪水や土砂災害、高潮などの災害種別ごとに、被害が想定される区域や危険箇所を色分けで示した地図です。
「○○市(お住まいの自治体名) ハザードマップ」と検索すれば、すぐに閲覧できます。自宅や職場、お子さんの学校などがどのようなリスクエリアに位置しているかを把握することが、すべての防災対策の基礎となります。特に、浸水想定区域に入っている場合は、垂直避難(建物の上階への避難)も含めた避難方法を検討しておくことが大切です。
2. 避難場所と避難ルートを家族全員で共有する
ハザードマップの確認と併せて、災害時に避難する「指定緊急避難場所」がどこにあるかを調べておきましょう。自宅から避難場所までの道のりを、時間のあるときに実際に歩いて確認しておくことをおすすめします。
その際、「この道は川沿いだから増水時は通れないかも」「この電柱は倒れてくる可能性がある」「このブロック塀は地震で崩れるかもしれない」など、危険になりそうな箇所をチェックしながら、複数のルートを想定しておくと安心です。また、家族がバラバラの場所にいる時に災害が発生した場合の連絡方法も決めておきましょう。
3. 非常用持ち出し袋の準備と定期点検
緊急時の避難に備えて、非常用持ち出し袋を準備しておくことは必須です。リュックサックなど、両手が自由に使えるものを選びましょう。準備した後は定期的に中身を点検し、食料や水の賞味期限、乾電池の使用期限などをチェックする習慣をつけることが大切です。
準備しておきたいものには、まず飲料水があります。1人1日3リットルを目安に、最低3日分は確保しておきましょう。食料については、火を使わずに食べられるカンパンやレトルト食品、栄養補助食品などを選ぶとよいでしょう。
貴重品として、現金(小銭も含む)、預金通帳、印鑑、健康保険証や運転免許証のコピーなどを防水袋に入れて準備します。情報収集のための携帯ラジオやスマートフォンの予備バッテリーも欠かせません。
明かりとしては、懐中電灯やヘッドライト(予備の乾電池も忘れずに)を用意しましょう。衛生用品では、簡易トイレ、ウェットティッシュ、マスク、アルコール系消毒液などが役立ちます。
その他、常備薬、絆創膏、包帯などの医薬品、軍手、ライター、雨具、タオル、防寒具なども状況に応じて準備しておくとよいでしょう。
4. 火災保険・家財保険の契約内容を再確認する
持ち家でも賃貸でも、加入している火災保険が「風災」や「水災」をカバーしているかどうかを確認しておきましょう。近年、台風による被害は激甚化しており、万が一の際の生活再建には保険が大きな役割を果たします。補償内容だけでなく、保険金の請求方法についても事前に確認しておくと、いざという時にスムーズに手続きができます。
フェーズ2:台風が接近してきた時の対応
気象庁やテレビから台風の接近が予報されたら、以下の行動を迅速に実行しましょう。台風は地震と違って事前に予測できる災害なので、準備する時間があることを活用することが大切です。
1. 信頼できる情報源から最新情報を継続的に収集する
気象庁の公式サイト、テレビやラジオの気象情報、自治体の防災無線やウェブサイトなど、信頼できる情報源から最新の情報を継続的に入手しましょう。SNSでは不正確な情報や古い情報が拡散されることもあるため、必ず公的機関が発信する情報を正として判断することが重要です。
2. 屋外の飛散リスクがある物品の片付け
植木鉢、物干し竿、ゴミ箱、自転車、看板、トタン板など、強風で飛ばされる可能性があるものは、すべて室内にしまうか、ロープやチェーンでしっかりと固定してください。これらが風で飛ばされると、自宅の窓ガラスを破損させるだけでなく、近隣の住宅や通行人に被害を与える「加害者」になってしまう可能性があります。
3. 停電・断水への備え
停電対策として、スマートフォンやモバイルバッテリー、ノートパソコンなどのデバイスをすべて満充電にしておきましょう。懐中電灯やポータブルラジオが正常に動作するかも確認してください。冷蔵庫の設定を最低温度にしておくと、停電時でも少し長く冷気を保つことができます。
断水対策では、飲料水を確保するとともに、浴槽に水を張っておくことをおすすめします。これは飲用ではなく、トイレを流したり手を洗ったりするための生活用水として活用できます。
4. 窓ガラスや建物の補強
雨戸やシャッターがついている窓は、必ず閉めて確実に施錠しましょう。それらがない窓については、カーテンを閉めておくだけでも、万が一窓ガラスが割れた際の破片の飛散をある程度防ぐ効果があります。
窓に養生テープを米印状に貼る方法もよく紹介されますが、これは窓ガラスの「飛散防止」が主な目的であり、ガラス自体の「強度を上げる」効果は限定的です。過度な期待は禁物です。
5. 外出は絶対に控える
台風が接近している時の外出は極めて危険です。特に、増水した川や用水路の様子を見に行ったり、田んぼの水の状況を確認しに行ったりする行動は絶対に避けてください。毎年、このような行動が原因で尊い命が失われています。
避難のタイミングと判断基準
台風災害における避難は、タイミングが非常に重要です。「まだ大丈夫」「様子を見てから」という気持ちが命取りになることもあります。
避難情報の種類と意味
自治体から発令される避難情報には、「高齢者等避難」「避難指示」「緊急安全確保」の3段階があります。「高齢者等避難」が発令されたら、避難に時間がかかる方は避難開始、その他の方も避難の準備を始めましょう。「避難指示」では危険な場所にいる人は全員避難、「緊急安全確保」は災害が発生または切迫している状況で、命を守る最善の行動をとる段階です。
自主的な避難判断のポイント
避難情報を待たずに、自主的に避難することも重要です。特に、小さなお子さんや高齢者、ペットがいるご家庭では、早めの判断を心がけましょう。夜間や雨風が強くなってからの避難は危険が伴うため、明るいうちに、そして穏やかなうちに避難を完了させることが理想的です。
台風通過後の対応と復旧作業
台風が過ぎ去った後も、油断は禁物です。適切な行動をとることで、二次災害を防ぎ、早期の復旧につなげることができます。
安全確認と被害状況の把握
台風が完全に通過したことを確認してから、家族の安全と建物の被害状況をチェックしましょう。屋根や外壁の損傷、雨漏り、窓ガラスのひび割れなどがないか点検します。ガス漏れや電気系統の異常がないかも確認が必要です。異常を感じたら、無理をせずに専門業者に連絡しましょう。
片付け作業の注意点
片付け作業を行う際は、安全を最優先に考えましょう。がれきや壊れたガラスでケガをしないよう、厚底の靴と軍手を着用してください。浸水被害があった場合は、感染症予防のためにマスクと消毒液も必須です。重いものを動かす時は、一人で無理をせず、複数人で協力して作業を進めましょう。
保険請求の手続き
建物や家財に被害があった場合は、保険会社への連絡を速やかに行いましょう。被害状況の写真を多角度から撮影し、被害を受けた物品のリストを作成しておくと、保険請求がスムーズに進みます。保険会社の指示に従って必要書類を準備し、適切な手続きを行いましょう。
まとめ:正しい知識と十分な準備で台風シーズンを安全に乗り切ろう
この記事で解説した重要なポイントを整理しておきましょう。
日本の台風シーズンは7月から10月で、特に8月と9月が接近・上陸のピーク時期となっています。台風の発生は1年中ありますが、日本への影響は太平洋高気圧の位置や勢力によって大きく左右されます。
最も重要なのは事前の準備です。ハザードマップの確認、避難場所と避難ルートの把握、防災グッズの準備は、台風シーズンが始まる前に必ず済ませておきましょう。台風が接近した際は、信頼できる情報源からの最新情報を継続的に収集し、身の安全を最優先に行動することが大切です。
台風は自然現象であり、その発生や進路を人間がコントロールすることはできません。しかし、私たち一人ひとりが正しい知識を身につけ、適切な準備を行うことで、被害を大幅に軽減することは可能です。
この記事が、あなたとご家族の防災意識を高め、安全で安心な日々を送るためのお役に立てれば、とても嬉しく思います。台風シーズンを迎える前に、ぜひもう一度この記事を読み返して、必要な準備を進めてくださいね。
コメント