「AIは『SI』に改称」というニュースの見出しを見て、何のことだろうと感じた方も多いのではないでしょうか。SIとはスーパーインテリジェンス(超知能)の略で、2026年9月22日にアメリカのトランプ大統領が国連総会の演説で言い換えを提案した呼び名です。
ただし、これですぐに世の中の「AI」という表記がすべて置き換わるわけではありません。対象として名前が挙がったのは、あくまでアメリカの公文書です。
この記事では、SIが何を指す言葉なのか、なぜ改称という話が出てきたのか、AI・AGI・ASIとどう違うのかを順番に整理します。日本語の「SI」には国際単位系など別の意味もあるため、混同しやすい点もあわせて確認していきましょう。
SIとは?「スーパーインテリジェンス(超知能)」の略
結論から書きます。SIは英語の「Super Intelligence」の頭文字をとったもので、日本語では「超知能」と訳されます。これまで私たちが「AI」「人工知能」と呼んできたものを、別の言い方に置き換えようという提案です。
SI=Super Intelligence(スーパーインテリジェンス/超知能)。AIの呼び名を置き換えようという提案であって、技術そのものが新しくなったわけではありません。
SI=Super Intelligence。日本語では「超知能」
「super」は「超える」「上回る」、「intelligence」は「知能」を意味します。つなげると「超知能」となり、人間の知能を上回る知性というニュアンスになります。
一方、これまで使われてきた「AI」は「Artificial Intelligence」の略でした。こちらの「artificial」は「人工の」という意味です。つまり今回の提案は、「人工の知能」から「人間を超える知能」へと、呼び名の力点を移すものだと言えます。
なお、スーパーインテリジェンスという語そのものは、このニュースで新しく作られた言葉ではありません。人工知能の研究や関連する書籍では、以前から「人工超知能(ASI=Artificial Super Intelligence)」という形で使われてきた概念です。
いつ、誰が言い出したのか
発言があったのは2026年9月22日、ニューヨークで開かれた国連総会の演説の場です。アメリカのトランプ大統領が、人工知能の名称について触れました。
大統領は「artificial(人工)」という言葉を使うと「偽物のように聞こえる」と主張し、代わりに「スーパーインテリジェンス」と言い換えることを提案しました。そのうえで、アメリカだけでなく世界の公文書でもこの名称を用いるよう呼びかけています。
あわせて、アメリカの公式文書では「artificial intelligence」という用語を使わず「super intelligence」に置き換えるよう指示したことも明らかにしました。日本の報道では、この発言が「AIは『SI』に改称」という見出しで伝えられています。
いまのところ「提案」であって、決まったわけではない
ここが読み違えやすいところです。演説で語られたのは、アメリカ政府の公文書での表記と、各国への呼びかけでした。国際的な機関が正式に名称を変更したという話ではありません。
ですから、日本の法律や学校の教科書、家電の説明書にある「AI」の文字が明日から書き換わる、ということにはなりません。ニュースの見出しだけを見ると世界共通の決定のように読めますが、実際の範囲はもっと限られています。
なぜ「人工知能」から呼び名を変える話になったのか
理由として語られたのは、「artificial」という英語が与える印象です。技術的な性能の話ではなく、言葉の受け取られ方が出発点になっています。
「artificial(人工)」が持つニュアンス
英語の「artificial」は「人工の」と訳されますが、文脈によっては「本物ではない」「まがい物の」という響きを帯びます。人工甘味料や造花を指すときに使われるのは、その代表例です。
日本語の「人工」にはここまで強い否定の色はありません。人工衛星や人工芝のように、中立な組み合わせが定着しているためです。この語感の差が、英語圏でのみ改称の議論が起きている背景にあります。
アメリカの公文書での置き換え
演説では、アメリカの公式文書で用語を置き換えるよう指示したことが示されました。行政が使う言葉をそろえると、法令・報告書・予算書などの表記が段階的に変わっていきます。
とはいえ、すでに成立している法律の条文や過去の文書まで遡って書き換えられるわけではありません。公文書の用語統一は、新しく作る文書から順に反映されていくのが一般的です。
あわせて語られたAIのリスク観
同じ演説のなかで、大統領はAIが人類を脅かすという警告に否定的な見方を示し、国際的な枠組みでAIを管理しようとする動きにも反対する姿勢を表明しました。呼び名の提案は、この文脈のなかで語られています。
ただし、この見方が専門家のあいだで共有されているわけではありません。AIの安全性については、慎重な立場からの指摘も続いています。どちらが正しいかを決めつけず、そういう議論があるという事実として受け取っておくのが無難です。
AI・AGI・ASI・SIの違いを整理する
ニュースを読むうえでややこしいのは、似たアルファベットの略語が並ぶ点です。結論としては、AI・AGI・ASIは知能の「段階」を表す言葉で、今回のSIはそのうち最上位にあたるASIとほぼ同じ意味合いで使われています。
AI(人工知能)=いま実際に使われている技術
AIは人工知能全体を指す、いちばん広い言葉です。文章を書く生成AI、スマートフォンの音声アシスタント、写真の自動補正、洗濯機の運転モード選択まで、すべてAIに含まれます。
現在実用化されているものは、決められた分野のなかで力を発揮するタイプが中心です。文章は上手に書けても洗濯はできない、という具合に得意分野が限られています。この段階を指して「特化型AI」と呼ぶこともあります。
AGI(汎用人工知能)=人間並みに何でもこなす段階
AGIは「Artificial General Intelligence」の略で、汎用人工知能と訳されます。特定の分野に縛られず、人間と同じように幅広い知的作業に対応できる段階を指す言葉です。
ある分野で学んだことを別の分野に応用したり、初めて出会う課題に自分で対処したりできる。そこまで到達したものがAGIです。現時点では実現していない、目標として語られる段階にあたります。
ASI・スーパーインテリジェンス=人間を超える段階
ASIは「Artificial Super Intelligence」の略で、人工超知能と訳されます。科学・数学・言語・創造・計画といったほぼすべての知的な領域で、人間を大きく上回るとされる段階です。
AGIが「人間と同等」、ASIが「人間を超える」という関係だと考えるとわかりやすいでしょう。今回提案された「スーパーインテリジェンス(SI)」は、このASIから「artificial(人工の)」を外した形になっています。
なお、ASIやAGIが実現する時期については、専門家のあいだでも見解が分かれています。数年内と見る立場もあれば、まだ道のりは遠いとする立場もあり、定まった答えはありません。
4つの言葉の関係を表で比べる
それぞれの位置づけを並べると、次のように整理できます。
| 略語 | 正式名称 | 日本語 | 指している段階 |
|---|---|---|---|
| AI | Artificial Intelligence | 人工知能 | 人工知能の総称。いま使われている技術を含む |
| AGI | Artificial General Intelligence | 汎用人工知能 | 人間と同じように幅広く対応できる段階 |
| ASI | Artificial Super Intelligence | 人工超知能 | ほぼすべての領域で人間を上回る段階 |
| SI | Super Intelligence | 超知能 | 今回提案された呼び名。ASIとほぼ同じ意味合い |

ここで一つ気づくことがあります。もともと「AI」は総称、「ASI」は最上位の段階を指す言葉でした。それを総称の位置に置き直すのが今回の提案なので、言葉の指す範囲が広がることになります。
日本語の「SI」には別の意味がある|混同しやすい3つ
ここからは、くらしの視点で気をつけたい点です。実は日本語で「SI」と書いた場合、すでに別の意味で広く使われている場面がいくつもあります。検索して混乱しないよう、代表的な3つを押さえておきましょう。
SI=国際単位系(メートル・キログラム・秒)
もっとも定着しているのが、国際単位系を指すSIです。フランス語の「Système International d’unités」の頭文字をとったもので、1960年の国際度量衡総会でこの名称と略称が採用されました。
メートル、キログラム、秒、アンペアといった世界共通の単位は、この枠組みのもとで定められています。理科の教科書や計量法の解説で「SI単位」という表記を見かけるのは、こちらの意味です。
フランス語が元になっているのは、メートル法がフランスで発案され、メートル条約に関わる機関の公用語がフランス語だという歴史的な経緯によります。
SI=システムインテグレーション(IT業界の「SIer」)
日本のIT業界では、SIは「システムインテグレーション」の略として長く使われてきました。企業のシステムを設計から構築・運用まで一括して請け負う仕事を指します。
それを手がける会社は「SIer(エスアイヤー)」と呼ばれます。求人情報や転職サイトで「SI業界」という言葉が出てきたら、こちらの意味だと考えてまず間違いありません。
皮肉なことに、この分野はAIの普及によって仕事の進め方が大きく変わりつつある領域でもあります。「AI」と「SI」が同じ文章に並ぶ機会は、今後さらに増えそうです。
SI値=地震の揺れの強さを表す指標
3つめは、暮らしに直結しているのに意外と知られていないSIです。地震の揺れが建物に与える影響の大きさを表す指標として、SI値(スペクトル強度)という数値が使われています。
家庭のガスメーター(マイコンメーター)には、このSI値をもとに動く感震機能が組み込まれています。一定以上の揺れを感知するとガスを自動で遮断する仕組みで、地震のあとにガスが止まるのはこの働きによるものです。

呼び名は本当に変わるのか|いま確かなこと
結論としては、すぐに全面的に置き換わる見込みは低いと考えられます。対象が限られているうえ、AIという略語はすでに世界中の法律・製品・日常会話に深く入り込んでいるためです。
対象はアメリカの公文書
今回示されたのは、アメリカ政府が作る文書の表記をそろえるという方針でした。他国に対しては呼びかけであって、従う義務があるわけではありません。
国際機関が定める正式な用語が変更されたという発表も、現時点では出ていません。学術の世界で使われる用語も、学会や研究者の合意によって動くものなので、政治的な呼びかけだけで一斉に切り替わることは考えにくいでしょう。
日本の法律や教科書はすぐには変わらない
日本では「人工知能」という語が、すでに法律の名称にも使われています。2025年に成立した「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」がその例です。
法律の名称を変えるには国会での手続きが必要で、海外の呼びかけに合わせて自動的に書き換わることはありません。学校の教科書も検定を経て作られるため、反映には相応の時間がかかります。
企業やメディアの表記はどうなる
企業が製品名やサービス名に「AI」を掲げている場合、変更にはパッケージの刷新や広告の作り直しが伴います。コストがかかるため、慎重に判断されるはずです。
一方で、開発企業のなかには研究部門の名称に「スーパーインテリジェンス」を掲げている例もあり、呼び名が併存していく可能性はあります。しばらくは「AI」と「SI」が入り混じる状態が続くと見ておくとよいでしょう。

暮らしの中の「AI」表記はどう受け止めればいい?
普段の生活で身構える必要はありません。ただ、言葉が揺れている時期は意味を取り違えやすいので、いくつか心構えを持っておくと読みやすくなります。
家電やスマホの「AI搭載」はどうなる
エアコンの自動運転、掃除機の間取り認識、スマートフォンのカメラ補正など、「AI」をうたう製品はすでに数多くあります。これらの表記がすぐに変わることはないと考えてよいでしょう。
買い替えのときに気をつけたいのは、呼び名ではなく中身のほうです。「AI搭載」と書かれていても、実際にどんな動作をするのかは製品によって幅があります。カタログの機能説明まで読んでおくと、期待とのずれを防げます。
- 何を判断してくれるのか(温度・汚れ・明るさなど)が書かれているか
- 自動で動く範囲と、手動で設定できる範囲が分かれて書かれているか
- インターネット接続が必要かどうか
- その機能を使わない設定にもできるか
言葉が置き換わった過去の例
呼び名が公式に変わること自体は、珍しい出来事ではありません。日本でも、制度の見直しにあわせて職業名や用語が改められてきました。
- 「保母」から「保育士」へ(1999年の政令改正を機に名称を変更)
- 「看護婦」から「看護師」へ(2001年の法改正により2002年から適用)
- 「痴呆」から「認知症」へ(2004年、厚生労働省の検討会で用語を変更)
これらに共通しているのは、言葉が与える印象を見直すところから変更が始まった点です。今回の「artificial は偽物っぽい」という主張も、構図としては同じ方向を向いています。
一方で違いもあります。過去の例はいずれも国内の制度改正という裏づけがありました。今回は演説での提案が出発点なので、定着するかどうかはこれからの動き次第です。
ニュースで略語や新語を見たときの確かめ方
見出しに新しい略語が出てきたら、まず「正式名称は何か」「誰が使い始めたのか」の2点を押さえると、内容をつかみやすくなります。今回であれば、Super Intelligence という正式名称と、国連総会での発言という出どころがそれにあたります。
新しく生まれた言葉は、意味があいまいなまま広まることがあります。当ブログでも、そうした言葉をひとつずつ確かめる記事を用意しています。


また、AIをめぐる話題は働き方と結びつけて語られることも増えました。呼び名が変わっても、技術との付き合い方そのものが変わるわけではありません。

よくある質問
- SIは何と読みますか
-
アルファベットのまま「エスアイ」と読みます。正式名称のスーパーインテリジェンス、または日本語訳の超知能と呼ばれることもあります。
- SIとASIは違うものですか
-
指している中身はほぼ同じです。ASI(Artificial Super Intelligence=人工超知能)から「Artificial(人工の)」を外した形がSIにあたります。今回の提案は、この「人工の」という部分を落とすところに主眼があります。
- 日本でも「AI」という言葉は使えなくなりますか
-
使えなくなることはありません。今回対象として示されたのはアメリカの公文書で、日本の法律や公的な文書の表記が変わったという発表は出ていません(2026年9月23日時点)。
- 「SI単位」と同じ略語ですが、関係はありますか
-
まったく別のものです。SI単位のSIはフランス語の「Système International d’unités」(国際単位系)の略で、1960年に採用された単位の枠組みを指します。今回のSIとは由来も分野も異なります。
- 超知能はもう実現しているのですか
-
実現していません。ASIやAGIは、これから到達しうる段階を表す言葉として使われています。到達する時期については専門家のあいだでも見解が分かれており、定まった答えはない状況です。
- 呼び名が変わると、技術そのものも変わるのですか
-
変わりません。今回の話は名称の付け方についてのものです。すでに使われている機能やサービスの仕組みが、呼び名によって書き換わることはありません。
まとめ
「AIは『SI』に改称」というニュースの中身を整理してきました。要点をもう一度確認しておきましょう。
- SIは「Super Intelligence(スーパーインテリジェンス)」の略で、日本語では超知能
- 2026年9月22日の国連総会で、アメリカのトランプ大統領が言い換えを提案した
- 理由は「artificial(人工)」が英語では偽物のように聞こえるという主張
- 対象として示されたのはアメリカの公文書。世界共通の決定ではない
- AI・AGI・ASIは知能の段階を表す言葉で、SIはASIから「人工の」を外した形
- 日本語の「SI」には国際単位系・システムインテグレーション・SI値という別の意味がある
呼び名が話題になると、つい技術そのものが変わったように感じてしまいます。けれども今回変わろうとしているのは、あくまで言葉のほうです。中身を見る目を持っておけば、表記が揺れても迷わずに済みます。
SIは超知能を指す新しい呼び名の提案。決定ではなく、日本語の「SI」には国際単位系など別の意味もある——この2点を押さえておけば、これからの報道も落ち着いて読めます。

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