11月の最初の日曜日、テレビで大学生ランナーが名古屋から伊勢へとたすきをつなぐ姿を見て、「全日本大学駅伝って、出雲駅伝や箱根駅伝とどう違うの?」と気になった方もいるのではないでしょうか。
この記事では、大会の基本と2026年の結果、8区間のコース、27チームの出場の決まり方、歴代の優勝校、ほかの大学駅伝との違いを順に整理します。
全日本大学駅伝は、名古屋市の熱田神宮から三重県伊勢市の伊勢神宮までの8区間106.8kmを走る大学駅伝です。全国8地区の選考会を勝ち抜いた大学と前回大会の上位8校が出場し、「大学駅伝日本一」を競います。2026年の第58回大会は、早稲田大学が大会記録を3分16秒縮める5時間3分31秒で、16年ぶり6度目の優勝を果たしました。
全日本大学駅伝とは?「大学駅伝日本一」を決める大会の基本
全日本大学駅伝は、毎年11月の第1日曜日に、愛知県名古屋市から三重県伊勢市までの伊勢湾沿いを走る大学駅伝です。出場できるのは関東の大学だけではなく、北海道から九州まで全国8地区の代表が集まります。そのため、大学駅伝の「日本一決定戦」とも呼ばれています。ここでは、正式名称と大会の成り立ち、大学三大駅伝のなかでの位置づけ、名前の似ている女子の大会との違いの3点を見ていきます。
正式名称は「秩父宮賜杯 全日本大学駅伝対校選手権大会」
大会の正式名称は「秩父宮賜杯 全日本大学駅伝対校選手権大会」です。主催は日本学生陸上競技連合(学連)、朝日新聞社、テレビ朝日、メ~テレの4者で、名古屋のテレビ局が主催に入っているのは、スタートが名古屋だからです。
第1回大会は1970年3月に開かれました。「全国の大学が出場できる、本当の日本一を決める駅伝を」という考えから、東海学生陸上競技連盟が中心になって企画した大会です。1971年の第2回から1988年1月の第19回までは毎年1月に開かれ、同じ1988年の第20回から11月の開催に移りました。
出雲・箱根と並ぶ「大学三大駅伝」の2戦目
全日本大学駅伝は、10月の出雲駅伝、1月の箱根駅伝と並ぶ「大学三大駅伝」のひとつです。シーズンの流れでは、出雲が開幕戦、全日本が2戦目、箱根が最終戦にあたります。距離も出雲の45.1kmと箱根の217.1kmのあいだに位置するため、スピードと長い距離への対応力の両方が問われます。
3つの大会すべてで同じシーズンに優勝することを「三冠」と呼びます。達成したのは、1990年度の大東文化大学、2000年度の順天堂大学、2010年度の早稲田大学、2016年度の青山学院大学、2022年度の駒澤大学の5校だけです。全日本は三冠への関門としても注目されます。
10月の「全日本大学女子駅伝」とは別の大会
名前がよく似た大会に「全日本大学女子駅伝対校選手権大会」があります。こちらは女子の大学駅伝で、宮城県仙台市を舞台に毎年10月下旬に開かれ、「杜の都駅伝」の愛称で知られています。2026年は10月25日に第44回大会が行われ、名城大学が優勝しました。
一般に「全日本大学駅伝」と言うと、11月に名古屋から伊勢までを走る男子の大会を指します。ニュースやテレビ欄で結果を探すときは、「女子」が付いているかどうかと開催地(仙台か伊勢か)を見ると、取り違えずにすみます。
2026年(第58回)全日本大学駅伝の結果
2026年の第58回大会は、早稲田大学が5時間3分31秒(速報値)で優勝しました。2022年に駒澤大学が出した5時間6分47秒の大会記録を3分16秒も縮める圧勝で、16年ぶり6度目の優勝です。2位は國學院大學、3位は創価大学でした。早稲田大学は10月の出雲駅伝に続く優勝で、1月の箱根駅伝では2010年度以来の三冠に挑みます。ここでは日程と中継、総合順位と来年のシード校、レースの流れを順に見ていきます。
日程・スタート時刻・テレビ中継
第58回大会は、2026年11月1日(日)の8時10分に、熱田神宮西門前をスタートしました。ゴールは伊勢神宮内宮の宇治橋前です。出場したのは、シード校8校、全国8地区の選考会を通過した17校、オープン参加の日本学連選抜チームと東海学連選抜チームを合わせた27チームでした。
テレビ中継は、主催に入っているテレビ朝日の系列局で全国に生中継されます。前回の2025年大会では、テレビの生中継に加えて動画配信サービスのTVerでも無料で配信されました。見逃した場合は、大会の公式サイトや各局のスポーツニュースで区間ごとの記録を確かめられます。
総合順位と来年のシード校
総合順位の上位8校は次のとおりです。この8校が、2027年の第59回大会のシード校になります。
| 順位 | 大学 | 前回(2025年)の順位 |
|---|---|---|
| 1位 | 早稲田大学 | 5位 |
| 2位 | 國學院大學 | 4位 |
| 3位 | 創価大学 | 7位 |
| 4位 | 青山学院大学 | 3位 |
| 5位 | 中央大学 | 2位 |
| 6位 | 駒澤大学 | 1位 |
| 7位 | 大東文化大学 | 関東の選考会から出場 |
| 8位 | 帝京大学 | 6位 |
シード権をめぐる争いは最後まで混戦になり、帝京大学が追い上げる順天堂大学を振り切って、シード権の最後の枠となる8位に入りました。前回8位の順天堂大学はシード権を失い、関東の選考会から出場した大東文化大学が7位で新たにシード権を得ています。前回王者の駒澤大学は6位でした。
レースの流れと勝負を分けた区間
早稲田大学は2区で先頭に立つと、そのまま一度も首位を譲りませんでした。2区の増子陽太選手が区間新記録の30分51秒で先頭に立ち、3区の新妻遼己選手がリードを広げます。4区の小平敦之主将から2位に1分36秒差でたすきを受けた5区の鈴木琉胤選手(2年)は、区間記録を30秒更新する34分31秒の区間新を出しました。
5区を終えた時点で、2位の國學院大學との差は2分39秒に広がっていました。長い7区・8区での逆転が起きやすい大会ですが、この年は前半から中盤で決定的な差がつき、アンカーの工藤選手も先頭のまま伊勢神宮内宮のゴールに飛び込みました。1年生の活躍も目立ち、2位の國學院大學の監督が「完敗」と語るほどの内容でした。
熱田神宮から伊勢神宮へ|8区間106.8kmのコース
コースは、名古屋市の熱田神宮西門前をスタートし、伊勢湾に沿って三重県の四日市市・津市・松阪市を南へ進み、伊勢市の伊勢神宮内宮宇治橋前でゴールする8区間106.8kmです。2つの神宮を結ぶルートなので、スタートとゴールの場面には神社の参道らしい雰囲気があります。区間の距離は2018年の第50回大会で見直され、1区は14.6kmから9.5kmに、2区は13.2kmから11.1kmに短くなりました。ここでは区間ごとの距離と、勝負どころとされる後半2区間の特徴を見ていきます。

区間別の距離と特徴
各区間の距離は次のとおりです。前半の1区から6区は10〜13kmほどの区間が続き、7区と8区だけが17km以上の長い区間になっています。
| 区間 | 距離 | 特徴 |
|---|---|---|
| 1区 | 9.5km | 熱田神宮西門前をスタート。全チームが一斉に走る、もっとも短い区間 |
| 2区 | 11.1km | 集団がばらけはじめ、順位が動きやすい |
| 3区 | 11.9km | 各校の主力が入ることが多い |
| 4区 | 11.8km | 前半の流れを後半へつなぐ区間 |
| 5区 | 12.4km | 三重県内を南へ進む中盤の区間 |
| 6区 | 12.8km | 長い7区・8区の前に差を広げたい区間 |
| 7区 | 17.6km | 2番目に長い区間。エースが集まる |
| 8区 | 19.7km | 最長のアンカー区間。伊勢神宮内宮宇治橋前でゴール |
コースの前半は細かいアップダウンが多く、後半は比較的平らな道が続くとされています。短い区間が多い前半はスピードのある選手、平らで長い後半は長い距離に強い選手、という配置が基本になります。
長い7区・8区が勝負を分ける理由
7区(17.6km)と8区(19.7km)を合わせると37.3kmになり、全体の106.8kmの約35%を最後の2人が走る計算です。区間が長いほど選手どうしの力の差がタイムの差として大きく出るため、前半で1分前後の差がついていても、後半で逆転が起きることがあります。
こうした理由から、多くの大学は7区と8区にチームでもっとも力のある選手を置きます。テレビで見るときは、6区を終えた時点の差と、7区・8区に誰が入っているかを合わせて見ると、最後の展開を予想しやすくなります。
出場27チームの決まり方|シード・地区選考会・オープン参加
全日本大学駅伝の27チームは、3つの道で決まります。前回大会で上位8位に入った「シード校」、全国8地区の選考会を勝ち抜いた17校、それにオープン参加の選抜チーム2つです。箱根駅伝は関東の大学だけ、出雲駅伝は選抜の大会ですが、全日本は全国の地区代表が対校で競う仕組みになっています。27チームのうち大学として出場するのは、シード校と選考会通過校を合わせた25校で、残りの2チームは複数の大学の選手で作る選抜チームです。それぞれの決まり方を順に見ていきます。
前回大会で上位8位に入ったシード校
前回大会で8位までに入った大学は、翌年の大会に選考会なしで出場できます。2026年大会のシード校は、2025年の第57回大会の上位8校でした。2026年は、この8校がすべて関東の大学でした。8位と9位の差は翌年の出場に直結するため、優勝争いと同じくらい、レース終盤のシード権争いにも注目が集まります。
| 2025年の順位 | 大学 |
|---|---|
| 1位 | 駒澤大学 |
| 2位 | 中央大学 |
| 3位 | 青山学院大学 |
| 4位 | 國學院大學 |
| 5位 | 早稲田大学 |
| 6位 | 帝京大学 |
| 7位 | 創価大学 |
| 8位 | 順天堂大学 |
全国8地区の選考会と出場枠
シード校以外の17校は、北海道・東北・関東・北信越・東海・関西・中国四国・九州の8地区で行われる選考会で決まります。地区ごとの出場枠は、各地区に1枠ずつの「基本枠」に、前回大会でシードを取った大学の所属地区への枠や、前回9〜17位の大学の所属地区への「成績枠」を加えて配分されます。
2025年大会では、関東は選考会から7校が出場しました。選考の方法は地区によって違い、北海道は大学対抗の駅伝、東北は8人の合計タイムで決めています。2026年の関東の選考会では日本大学が1位、東海大学が2位、大東文化大学が3位で、7位までが出場権を得ました。8位の専修大学は、7位とわずか0秒65差で出場を逃しています。
日本学連選抜・東海学連選抜はオープン参加
残りの2チームは、選考会で出場を逃した大学の選手などで作る「日本学連選抜チーム」と、地元・東海地区の「東海学連選抜チーム」です。どちらもオープン参加の扱いで、1つの大学のチームではなく、さまざまな大学の選手がたすきをつなぎます。東海学連選抜は、スタートの地元である東海地区の大学の選手で作られるチームです。
全日本大学駅伝の歴代優勝校と大会記録
全日本大学駅伝でもっとも多く優勝しているのは駒澤大学で、2025年の第57回大会までに17回勝っています。1998年に初めて優勝してから一気に勝ち星を重ね、2020年から2023年には4連覇も達成しました。一方で、2016年度に三冠を達成した青山学院大学や、2024年に初優勝した國學院大學など、優勝校が入れ替わる年もあります。ここでは近年の優勝校と、大会の記録や歴史の節目を見ていきます。
近年の優勝校
2020年以降の優勝校は次のとおりです。駒澤大学の連覇を國學院大學が止め、翌年に駒澤大学が王座を取り戻す流れになっています。
| 年(回) | 優勝校 | メモ |
|---|---|---|
| 2020年(第52回) | 駒澤大学 | 4連覇の始まり |
| 2021年(第53回) | 駒澤大学 | 2連覇 |
| 2022年(第54回) | 駒澤大学 | 大会記録5時間6分47秒。この年度に三冠 |
| 2023年(第55回) | 駒澤大学 | 4連覇・16度目の優勝 |
| 2024年(第56回) | 國學院大學 | 初優勝。5時間9分56秒 |
| 2025年(第57回) | 駒澤大学 | 2年ぶり17回目。5時間6分53秒 |
| 2026年(第58回) | 早稲田大学 | 16年ぶり6度目。大会新の5時間3分31秒 |
大会記録と歴史の節目
大会記録は、2026年の第58回大会で早稲田大学が出した5時間3分31秒です。それまでの記録は、2022年の第54回大会で駒澤大学が出した5時間6分47秒でした。2025年の駒澤大学は5時間6分53秒で、この記録まであと6秒に迫っていましたが、翌年に3分以上も更新されたことになります。
歴史をさかのぼると、関東以外の大学が勝った年もあります。1979年の第10回大会では福岡大学が関東勢以外で初めて優勝し、1986年の第17回大会では京都産業大学が関西の大学として初めて頂点に立ちました。全国の大学が同じ舞台で戦う大会らしい記録です。
出雲駅伝・箱根駅伝との違い
大学三大駅伝は、時期・距離・出場できる大学がそれぞれ違います。いちばん大きな違いは出場資格で、箱根駅伝は関東学生陸上競技連盟に加盟する大学の大会、出雲駅伝は選ばれた大学が出る選抜の大会、全日本大学駅伝は全国の地区代表が出る対校選手権です。時期は10月・11月・1月とほぼ1か月おきに続き、距離はあとの大会ほど長くなります。まずは3つの大会を表で比べ、そのあとで来年の大会を楽しむためのポイントをまとめます。
3大会の比較
| 項目 | 出雲駅伝 | 全日本大学駅伝 | 箱根駅伝 |
|---|---|---|---|
| 時期 | 10月のスポーツの日 | 11月の第1日曜日 | 1月2日・3日 |
| 区間・距離 | 6区間45.1km | 8区間106.8km | 10区間217.1km |
| コース | 出雲大社から出雲ドームまで | 熱田神宮から伊勢神宮まで | 東京・大手町と箱根・芦ノ湖の往復 |
| 出場できる大学 | 選抜(関東は箱根の上位校など) | 全国8地区の代表とシード校 | 関東学連の加盟校 |
出雲は短い区間でのスピード、箱根は1人20km前後を走る持久力が問われます。全日本はその中間で、前半の短い区間と後半の長い区間を組み合わせたチーム全体の層の厚さが結果に表れやすい大会です。出雲駅伝のコースや出場枠の仕組みは、次の記事でくわしくまとめています。

来年、テレビや沿道で楽しむためのポイント
テレビで見るなら、前日までに各校の区間エントリー(どの区間に誰が走るか)を確かめておくと、レースの見え方が変わります。とくに7区・8区の顔ぶれは、終盤の展開を左右します。当日は区間エントリーから選手が入れ替わることもあるので、スタート前の発表もあわせて見ておきましょう。
沿道で応援する場合は、大会中にコース上で交通規制があることを頭に入れておく必要があります。ゴールの伊勢神宮内宮へは、JR・近鉄の伊勢市駅や近鉄の宇治山田駅から三重交通のバスで「内宮前」まで行けます。当日はゴール周辺が混み合うため、時間に余裕を持って出かけ、規制の区間や時間は大会の公式サイトで確かめるのが確実です。
全日本大学駅伝のよくある質問
- 全日本大学駅伝は何時ごろに終わりますか?
-
スタートは8時10分で、優勝争いをするチームは5時間あまりで106.8kmを走り切ります。そのため、先頭のチームがゴールするのは13時過ぎが目安です。最後のチームのゴールは、それより30分前後あとになることがあります。
- いちばん長い区間はどこですか?
-
アンカーが走る8区の19.7kmがもっとも長く、次が7区の17.6kmです。この2区間で全体の約35%を占めるため、各校がエース級の選手を置きます。
- シード権は何位までもらえますか?
-
8位までです。8位以内に入った大学は、翌年の大会に地区の選考会を経ずに出場できます。2027年の第59回大会のシード校は、2026年に8位までに入った早稲田大学から帝京大学までの8校です。
- 関東以外の大学も出場できますか?
-
出場できます。北海道・東北・北信越・東海・関西・中国四国・九州の各地区にも出場枠があり、地区の選考会を勝ち抜いた大学が出場します。関東の大学しか出られない箱根駅伝との大きな違いです。
- 全日本大学女子駅伝と同じ大会ですか?
-
別の大会です。全日本大学女子駅伝は毎年10月下旬に宮城県仙台市で開かれる女子の大会で、2026年は10月25日に行われました。11月に名古屋から伊勢までを走るのは男子の全日本大学駅伝です。
まとめ
全日本大学駅伝は、名古屋の熱田神宮から伊勢神宮までの8区間106.8kmを走る大学駅伝です。全国8地区の代表と前回の上位8校が出場し、大学駅伝の日本一を競います。最後の7区・8区が全体の約35%を占めるため、後半での逆転があるのもこの大会の見どころです。8位までに入ると翌年のシード権が得られるので、優勝争いと並んでシード争いにも目を向けると、最後まで楽しめます。
2026年は早稲田大学が大会新記録で16年ぶりに優勝し、出雲駅伝に続く2冠を達成しました。大学駅伝のシーズンは、このあと1月2日・3日の箱根駅伝で締めくくられます。

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