お寺や神社の受付で、財布に小銭がなくて慌てた経験はありませんか。近年は買い物のほとんどをキャッシュレスで済ませる方も増え、参拝のときだけ現金を用意するのが、かえって不便に感じられることもあります。
そんななか登場したのが、寺院・神社専用のキャッシュレス決済「おまいりPay」です。2026年7月25日からは、世界遺産の慈照寺(銀閣寺)で拝観料の支払いにも使えるようになりました。
おまいりPayは、京都仏教会が監修し、寺社での支払いに限定して使えるキャッシュレス決済です。2026年7月時点で対応しているのは拝観料と授与品の支払いで、お賽銭はまだ対象に入っていません。
この記事では、おまいりPayとはどんな仕組みなのか、どこで使えるのか、どんな支払い方法に対応しているのかを整理してご紹介します。あわせて、かつてキャッシュレス化に反対していた京都仏教会が方針を変えた経緯にも触れていきます。
おまいりPayとは?寺院・神社専用のキャッシュレス決済
おまいりPayは、寺院と神社での支払いに使い道をしぼった、専用のキャッシュレス決済サービスです。2026年4月に提供が始まりました。コンビニやスーパーで使う一般的な決済サービスとは、設計の考え方から異なります。
京都仏教会が監修し、バリューデザインが運営
このサービスは、一般財団法人京都仏教会が監修し、決済システムを手がけるバリューデザインが運営を担っています。京都仏教会には1000を超える寺院が加盟しており、そこが主体的に関わって作られた点が大きな特徴です。
つまり、決済会社が寺社に売り込んだ仕組みではなく、寺社の側が「自分たちの事情に合う形」を求めて共同開発したサービスということになります。
一般の決済サービスと何が違うのか
もっとも大きな違いは、支払い先の情報の扱い方です。おまいりPayを使うと、利用明細に表示されるのは個別の寺社名ではなく「おまいりPay」という名称になります。
どの寺社に参拝し、いくら納めたかという情報は、信仰に直結するデリケートな内容です。明細に寺社名が残らない設計は、そうした情報が第三者に伝わらないようにするための配慮とされています。
おまいりPayで支払えるもの・支払えないもの
結論からいうと、2026年7月時点でおまいりPayが使えるのは拝観料と授与品の支払いです。お賽銭については、まだ対応していません。ここを取り違えると参拝当日に困るため、先に押さえておきましょう。
拝観料と授与品の支払いに対応
慈照寺(銀閣寺)では、2026年6月19日から授与品などの支払いにおまいりPayが使えるようになりました。さらに2026年7月25日からは拝観料の決済にも対応し、拝観受付で利用できます。
拝観料は金額が決まっている支払いなので、キャッシュレスとの相性がよい部分です。現金の受け渡しが減ることで、受付の混雑がやわらぐ効果も期待されています。
お賽銭は現時点では対象外(協議中)
一方で、お賽銭への対応はまだ実現していません。運営側は、ネットを通じた拝観や授与品の受付とあわせて、お賽銭の取り扱いについても関係各所と協議を進める方針を示しています。
お賽銭は金額を自分で決めて納めるものであり、拝観料のような定額の支払いとは性質が違います。慎重に検討が重ねられている段階と考えるのが自然でしょう。
- 拝観料と授与品は、導入済みの寺社であればキャッシュレスで支払える
- お賽銭は2026年7月時点では現金を用意する必要がある
- 対応状況は寺社ごとに異なるため、事前の確認が安心
使える寺社はどこ?導入済みと導入予定
おまいりPayが使える寺社は、まだ限られています。2026年4月の提供開始時点では京都の3か所からスタートし、これから全国へ広がっていく段階です。

すでに使える3か所(銀閣寺・永観堂・承天閣美術館)
2026年4月1日時点で導入されているのは、慈照寺(銀閣寺)、永観堂禅林寺、相国寺承天閣美術館の3か所です。いずれも京都を代表する寺院と、その関連施設にあたります。
なかでも慈照寺(銀閣寺)は世界遺産「古都京都の文化財」の構成資産のひとつで、国内外から多くの参拝者が訪れる場所です。訪日外国人の利用も想定した対応といえます。

今後の導入予定(金閣寺・東寺・鎌倉大仏など)
今後は、鹿苑寺(金閣寺)、教王護国寺(東寺)、相国寺、そして高徳院(鎌倉大仏)での導入が予定されています。京都以外にも広がりはじめている点が注目されます。
運営側は、京都仏教会の加盟寺院を軸としながら、全国の寺院・神社へ展開を広げる方針を示しています。使える場所は今後さらに増えていく見込みです。

使える支払い方法と使い方の流れ
おまいりPayは、専用アプリを新たに入れる必要はありません。手持ちのクレジットカードや電子マネーを、受付の端末で使う形が基本です。

対応するカード・電子マネー
クレジットカードは、Visa、Mastercard、JCB、American Express、Diners Clubの5ブランドに対応しています。国内で発行されている主要なカードは、おおむねカバーされていると考えてよいでしょう。
電子マネーについては、交通系ICカードのほか、QUICPay、iD、楽天Edy、WAON、nanacoが利用できます。旅行のついでに立ち寄る場合、交通系ICカードがそのまま使えるのは便利な点です。
| 種類 | 対応しているもの |
|---|---|
| クレジットカード | Visa / Mastercard / JCB / American Express / Diners Club |
| 電子マネー | 交通系ICカード / QUICPay / iD / 楽天Edy / WAON / nanaco |
| 使える支払い | 拝観料 / 授与品(2026年7月時点) |
明細に寺社名が出ない仕組み
支払いを済ませると、カードや電子マネーの利用明細には「おまいりPay」と表示されます。どの寺社を訪れたのかという情報は、決済ブランド側には渡らない仕組みです。
この設計は、信教の自由への配慮として説明されています。参拝の記録が意図せず外部に残ることを避けたい方にとっては、安心できる部分といえるでしょう。
なぜ「反対」から一転して導入されたのか
おまいりPayが注目を集めた理由のひとつに、京都仏教会がかつてキャッシュレス決済の導入に反対していた経緯があります。その立場が変わった背景を見ていきましょう。
2019年・2024年の反対声明とその理由
京都仏教会は2019年に、キャッシュレス決済の導入に反対する声明を出しました。2024年にも表現を改めたうえで、同じ趣旨の声明を発表しています。
理由として挙げられていたのは、主に2点です。ひとつは、信者の個人情報が第三者に知られ、信教の自由が損なわれるおそれがあること。もうひとつは、民間事業者に手数料を支払うことで、将来的に課税が生じる可能性があることでした。
懸念を解消した2つの仕組み
今回の方針転換は、この2つの懸念に対する答えが用意されたことによります。個人情報については、支払い先を「おまいりPay」と表示し、どの寺社に納めたかという情報は運営会社の内部にとどめる設計としました。
課税については、「民間事業者の関与を理由に公益法人課税を発動する法的根拠は存在しない」という結論に至ったと説明されています。懸念そのものを設計と検討によって解消したうえでの導入、という流れです。
参拝時に知っておきたい注意点
便利なサービスですが、現時点では使える場面が限られています。参拝当日に困らないよう、いくつか押さえておきたい点があります。
現金も用意しておくと安心
くり返しになりますが、お賽銭は2026年7月時点でおまいりPayの対象外です。参拝の中心となるお賽銭には現金が必要なので、小銭は変わらず用意しておきましょう。
また、導入されていない寺社では当然ながら使えません。旅行中にいくつかの寺社をまわる予定であれば、現金を持たずに出かけるのは避けたほうが無難です。

寺社によって使える場面が違う
同じおまいりPay導入寺社でも、使える場面はそろっていません。慈照寺(銀閣寺)のように、授与品への対応が先に始まり、あとから拝観料へ広がった例もあります。
気になる寺社がある場合は、訪れる前に公式サイトなどで最新の対応状況を確認しておくとよいでしょう。サービス自体が広がっている途中なので、情報は変わりやすい状況です。
よくある質問
- おまいりPayでお賽銭は払えますか?
-
2026年7月時点では対応していません。運営側は関係各所と協議を進める方針を示しており、今後の対応が検討されている段階です。
- 専用のアプリをダウンロードする必要はありますか?
-
手持ちのクレジットカードや電子マネーを受付の端末で使う形が基本です。利用者が新たに専用アプリを用意する必要はありません。
- 利用明細に参拝した寺社の名前は残りますか?
-
明細には個別の寺社名ではなく「おまいりPay」と表示されます。どの寺社を訪れたかという情報は決済ブランド側には渡らない仕組みです。
- 近所の神社でも使えますか?
-
現時点で導入されているのは京都の3か所で、金閣寺や東寺、鎌倉大仏などへの展開が予定されています。全国の寺社への拡大は今後の段階です。
- 交通系ICカードはそのまま使えますか?
-
交通系ICカードは対応する電子マネーに含まれています。ただし使える決済方法は寺社によって異なる場合があるため、現地でご確認ください。
まとめ
おまいりPayは、京都仏教会が監修する寺院・神社専用のキャッシュレス決済です。利用明細に寺社名を残さない設計によって、かつての懸念だった信教の自由への配慮が図られています。
2026年7月時点で使えるのは拝観料と授与品の支払いで、お賽銭はまだ対象外です。導入寺社も京都の3か所から始まったばかりで、これから金閣寺や東寺、鎌倉大仏などへ広がっていきます。
参拝の予定があるなら、「拝観料はキャッシュレスで払えるかもしれないが、お賽銭には現金が必要」と覚えておくとよいでしょう。小銭を少し用意したうえで出かければ、当日困ることはありません。

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