「計算問題はすらすら解けるのに、文章題になったとたん鉛筆が止まってしまう…」
「本を開いても、すぐに飽きてしまって最後まで読めない…」
「話を聞いても、内容がまとまらず、何を伝えたいのかよく分からない…」
小学生のお子さんを育てる保護者の方から、こうした「読解力」についての相談をいただくことが本当に多いです。
読解力は国語という教科の枠を超えて、算数・理科・社会といったあらゆる学びの基盤となるスキルです。さらに言えば、大人になって社会に出てからも、他者と良好な関係を築いたり、難しい課題を解決したりするために欠かせない能力となります。
本記事では、読解力について徹底的にリサーチした情報をもとに、家庭で今すぐ取り組める実践的なトレーニング方法から、お子さんの個性に合わせた習い事選びのコツまで、詳しくお伝えしていきます。学年別のアプローチの違いや、具体的な本の選び方、さらには発達に特性があるお子さんへの配慮まで、幅広くカバーしています。
この記事を読み終える頃には、読解力の本質が理解でき、お子さん一人ひとりにぴったりの「伸ばし方」が見えてくるはずです。一人で抱え込まなくて大丈夫。お子さんの持つ可能性を最大限に引き出すための最初の一歩を、今日ここから踏み出しましょう。
読解力って何だろう?AI時代だからこそ必要な理由
「読解力」という言葉を耳にすると、多くの方が「文章を速く読んで、正しく理解する力」と捉えているかもしれません。ですが、本当の読解力はもっと奥深く、幅広い意味を持っているんです。
世界的な学力調査であるPISA(国際学習到達度調査)では、読解力をこのように定義しています。「自分の目標を実現し、知識や可能性を伸ばし、社会に効果的に参加していくために、書かれたテキストを理解し、活用し、評価し、深く考え、取り組んでいくこと」。
もう少し噛み砕いて説明すると、読解力は次の3つのステップで構成される力だと言えます。
まず第一に、「理解する力」。これは文章に書かれている内容や情報を、正確に読み取る力です。第二に、「考える力」。読んだ情報をもとに、「この意味は何だろう?」「どうしてこうなったんだろう?」と自分なりに思考を巡らせ、内容を吟味する力です。そして第三に、「表現する力」。理解して考えたことを、自分の言葉で分かりやすく人に伝えたり、別の場面で応用したりする力です。
PISAの調査結果を見ると、日本の子どもたちの読解力は2000年代初頭には世界トップレベルでした。しかし近年は徐々に順位を落としており、教育現場でも大きな課題として取り上げられています。
AIが発達して、ちょっとした情報なら誰でも一瞬で検索できるようになった今だからこそ、情報をそのまま受け取るのではなく、その意味を深く考え、自分なりの考えを組み立て、他者と意見を交わす「人間にしかできない読解力」が、これまで以上に重視されているのです。
もしかして読解力が足りない?見逃せないサインをチェック
「もしかしたらうちの子、読解力が弱いかもしれない…」と感じても、具体的にどこを見れば判断できるのか迷ってしまいますよね。ここでは、日常生活や勉強の場面で現れやすい「読解力不足」のサインをまとめてみました。いくつか思い当たるものがあれば、対策を始める良いタイミングかもしれません。
国語の問題で、登場人物がどんな気持ちなのかを答える設問が苦手。算数の文章題を見ると、どんな式を立てればいいか分からず手が止まってしまう。教科書を読んでも、どこが大切なポイントなのか掴めていない様子がある。学校であったことを尋ねても、話があちこち飛んで結局何が言いたいのか伝わってこない。
また、複数の指示を一度に出すと混乱してしまう(たとえば「靴を脱いで、手を洗って、おやつを食べてね」など)。自分の意見を聞かれると「わからない」「別に」「どっちでもいい」としか答えない。相手の話を誤解したり、言葉の背後にある意図を汲み取れなかったりする。使う言葉のバリエーションが少なく、いつも似たような表現で話している。本や説明書など、やや長めの文章を読むことを極端に嫌がる。
これらのサインは、単に「国語の成績が悪い」という表面的な問題だけでなく、物事を筋道立てて考える「論理的思考力」や、相手の気持ちを想像する「共感力」が十分に育っていない可能性を示しています。でも安心してください。これらの力は、毎日のちょっとした工夫の積み重ねで、着実に伸ばしていくことができます。
学年別に見る読解力のつまずきポイント
読解力の発達には段階があり、学年によってつまずきやすいポイントも変わってきます。お子さんの学年に合わせて理解しておくと、より効果的なサポートができるでしょう。
低学年(1年生・2年生)のつまずきポイント
低学年の時期は、ひらがなやカタカナ、簡単な漢字を読むこと自体に精一杯で、「読む」ことに集中しすぎて「意味を理解する」ところまで意識が回らないことが多いです。また、語彙が少ないため、知らない言葉が出てくるとそこで思考がストップしてしまいます。
この時期は、文字をスムーズに読めるようにすることと、日常会話の中で言葉のバリエーションを増やしていくことが大切です。絵本の読み聞かせを続けて、耳から豊かな表現に触れさせることも効果的でしょう。
中学年(3年生・4年生)のつまずきポイント
中学年になると、文章は読めるようになってきますが、「行間を読む」「登場人物の気持ちを推測する」といった抽象的な思考が求められるようになります。ここで大きくつまずく子が増えてきます。
また、教科書の文章も長くなり、説明文では段落の構成や論理展開を理解する必要が出てきます。「主語と述語」「原因と結果」といった文章の仕組みを意識させながら読む練習が必要になる時期です。
高学年(5年生・6年生)のつまずきポイント
高学年では、筆者の意見と事実を区別したり、複数の情報を比較して考えたりする力が求められます。文章の量も一気に増え、限られた時間内で要点を掴む「速読力」も必要になってきます。
また、抽象的な概念や比喩表現、論理的な文章構造など、より高度な読解スキルが要求されます。この段階でつまずくと、中学校での学習にも影響が出やすいため、しっかりとした土台作りが重要です。
親がやりがちな、子どもの読解力を奪ってしまう関わり方
子どものためを思ってしている行動が、実は読解力の成長を妨げてしまっているケースは意外と多いものです。良かれと思ってやっていることがないか、ご自身の関わり方を一度振り返ってみませんか。
話の途中で結論を言ってしまう
子どもが何かを説明しようとしている最中に、「ああ、つまりこういうことね」と先回りして要約したり、「それは違うよ」と途中で訂正を入れたりしていませんか。子どもは話しながら頭の中を整理している真っ最中です。途中で遮られると、自分で考えをまとめるプロセスが奪われてしまい、「どうせ聞いてもらえない」と話すこと自体をあきらめてしまう可能性があります。
「どうして?」の質問を流してしまう
子どもの「どうして?」「なんで?」という質問は、知的好奇心が芽生えているサインであり、読解力を育てる貴重なチャンスです。これに対して「忙しいから後でね」「そんなことより宿題は?」と話題を変えてしまうことが続くと、子どもは疑問を持つこと自体をやめてしまいます。物事の理由や背景を探ろうとする探求心が、読解の深さを生み出すのです。
親の考えや正解を一方的に示してしまう
「こうするべきだよ」「普通はこうするものだよ」と、親の価値観や答えを押し付けていませんか。子どもが自分なりに考えて結論を出す前に、親が先に正解を教えてしまうと、子どもは「親の言う通りにすればいいんだ」と思考を停止させてしまいます。
曖昧な言葉で叱ってしまう
「ちゃんと考えて!」「もっとしっかり読んで!」といった抽象的な言葉は、具体的に何をどう改善すればいいのかが子どもには伝わりません。子どもはどうすれば良いのか分からず、ただ「自分はダメな子なんだ」と自己肯定感を下げてしまうだけです。
これらのNG行動に心当たりがあったとしても、自分を責める必要はありません。気づいたこの瞬間から、少しずつ意識して変えていけば、お子さんの反応は必ず変わっていきます。
家庭が最高の教室に!遊びながら読解力を育てる7つの習慣
読解力は、特別な教材やドリルだけで身につくものではありません。実は、家庭での何気ない日常の中にこそ、読解力をぐんぐん伸ばすヒントがたくさん隠れているんです。ここからは、今日からすぐに実践できる7つの習慣をご紹介していきます。
習慣1:会話の質を変えよう!5W1Hで深掘りする会話術
親子の日常会話は、読解力の土台となる語彙力や表現力を育てる最高のトレーニング場です。普段の会話に「5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)」を意識した質問をプラスしてみてください。
たとえば、「今日学校どうだった?」という質問を、「今日の給食で何が一番美味しかった?」「休み時間に誰と何をして遊んだの?」「体育の時間はどんなことをしたの?」といった具体的な質問に変えてみます。
さらに効果的なのが、「なんでそう思ったの?」「どうしてそれが楽しかったの?」という「理由」を尋ねる質問です。これによって、子どもは自分の考えや感情の背景を言葉にする練習ができ、論理的に思考する力が養われます。
親が子どもの話の聞き役に徹し、上手に質問を投げかけることで、子どもは自然と思考を整理し、表現する力を身につけていきます。忙しい毎日の中でも、夕食の時間や寝る前の10分だけでも、こうした「質の高い会話タイム」を作ってみてください。
習慣2:音読を最強の脳トレに変える3ステップ
学校の宿題で出される音読は、ただの作業ではありません。正しいやり方で取り組めば、読解力を飛躍的に伸ばす脳のトレーニングになります。
ステップ1は「スラスラ読み」。まずは詰まらずにスムーズに読めることを目指します。これは文字と音を結びつける基礎トレーニングです。ステップ2は「なりきり読み」。物語のセリフ部分を、その登場人物の気持ちになって感情を込めて読んでみましょう。物語への共感力や、登場人物の心情を推し量る力が育ちます。ステップ3は「アナウンサー読み」。説明文などを、テレビのアナウンサーのように、聞き手に分かりやすく伝えることを意識して読みます。文章の構造や要点を把握する力が身につきます。
親が最初に楽しそうに読んでみせると、子どもも興味を持ちやすくなります。親子で交互に読み合うなど、ゲーム感覚で楽しむのがおすすめです。
習慣3:要約ゲームで情報を整理する力をつける
長い文章や話の中から、本当に大切なポイントだけを抜き出す「要約力」は、読解力の核となるスキルです。これも遊び感覚で鍛えることができます。
見終わったテレビ番組について、「今の話、おばあちゃんに3つのポイントで説明してくれる?」と促してみましょう。読んだ昔話について、「もし桃太郎がSNSをやってたら、どんな投稿をするかな?」と考えさせるのも面白い練習になります。家族への伝言をあえて少し複雑にして、「今のお話で、一番大事なことは何だったかな?」と確認してみるのも良いでしょう。
最初はうまくできなくても問題ありません。「一番大事だと思ったことは何?」「もう一つ大事なことはあった?」とヒントを出しながら、一緒に考えるプロセスこそが重要なのです。
習慣4:読書好きを育てる戦略的アプローチ
「読解力をつけるには読書が一番」とは分かっていても、本が苦手な子に無理やり読ませるのは逆効果です。読書を好きになってもらうには、戦略的なアプローチが必要です。
何より大切なのは、子どもが「面白い!」と思える本にアクセスできる環境を作ることです。子どもの興味関心を最優先にしましょう。図鑑でも、迷路の本でも、なぞなぞ本でも、学習マンガでも構いません。「文字を読むって楽しい」という体験こそが何より重要です。
リビングなど、子どもの手の届く場所に本を置いておくのも効果的です。「読みなさい」と言わなくても、自然と本が目に入る環境を作ります。また、親自身が楽しそうに読書する姿を見せることも大切です。子どもは親の行動を真似します。親がスマホではなく本を読む時間を作ることが、実は一番の近道なのです。
小学校高学年になっても、読み聞かせは非常に効果的です。自分で読むのが苦手な子でも、耳から物語を楽しむことで、豊かな語彙や表現に触れることができます。
習慣5:「お絵かき思考法」で頭の中を整理しよう
頭の中がごちゃごちゃして、考えをうまくまとめられない子には、「思考の見える化」が効果抜群です。物語の登場人物の関係性や、出来事の流れを、簡単なイラストと矢印で描いてみるのです。
たとえば、物語を読んだ後に大きな紙を用意して、登場人物の絵を描き、誰と誰が仲良しなのか、誰と誰が対立しているのかを線で結んでみます(相関図)。また、理科の実験手順や、社会の歴史的な出来事を、簡単な絵と矢印でフローチャートにしてみるのも良いでしょう。
書くことで頭の中が整理され、複雑な関係性や因果関係を視覚的に理解できるようになります。絵が苦手な子には、簡単な図形や記号を使うだけでも効果があります。
習慣6:「言葉コレクター」になって語彙を増やそう
語彙力は読解力を動かすガソリンのようなものです。知らない言葉が多すぎると、文章を読んでも意味が分からず、すぐに疲れてしまいます。
「言葉コレクターゲーム」と称して、本やテレビ、街中の看板などで面白い言葉や知らない言葉を見つけたら、親子で「言葉ノート」に書き留めていきましょう。「新しい言葉ゲット!」とゲーム感覚で集めていき、週末に一緒に意味を調べたり、その言葉を使って短い文を作ったりします。
「似た意味の言葉(類義語)」や「反対の意味の言葉(対義語)」を一緒に探すのも、語彙のネットワークを広げるのに効果的です。たとえば「嬉しい」という言葉を見つけたら、「楽しい」「喜ばしい」「幸せ」といった似た言葉や、「悲しい」という反対の言葉を探してみましょう。
習慣7:アナログゲームで論理的思考を鍛えよう
実は、読解力と密接に関係しているのが「論理的思考力」です。物事を筋道立てて考える力は、文章の構造を理解したり、筆者の主張を読み解いたりするために欠かせません。この力は、デジタルゲームよりも、相手の表情や反応を読む必要があるアナログゲームで効果的に育てられます。
戦略系のボードゲームは、相手の次の手を予測しながら自分の駒を進めるため、論理的思考と先読みの力が養われます。ワード系のカードゲームは、手持ちのカードで言葉を作るため、語彙力と発想力を同時に鍛えられます。推理ゲームは、限られた情報から犯人を特定するため、情報整理能力と仮説検証能力を育むのに最適です。
家族で一緒に楽しみながら、自然と「考える力」の土台を築くことができます。週末の家族時間にぜひ取り入れてみてください。
年齢別・おすすめの本のジャンルと選び方
読書を通じて読解力を育てるには、お子さんの年齢や興味に合った本を選ぶことが重要です。ここでは学年別におすすめのジャンルと選び方のコツをご紹介します。
低学年(1年生・2年生)向けの本選び
この時期は、「読む楽しさ」を体験させることが最優先です。文字が大きく、イラストがたっぷり入った絵本や児童書がおすすめです。
繰り返しの表現やリズミカルな言葉が使われている本は、読みやすく記憶にも残りやすいでしょう。昔話や民話の絵本、動物が主人公のファンタジー、身近な日常を描いた物語などが入門編として最適です。図鑑も大人気で、恐竜や昆虫、乗り物など、子どもの「好き」に直結するものを選べば、文字をたくさん読む練習になります。
シリーズものの本は、一度好きになれば続けて読んでくれるので、読書習慣づくりにぴったりです。
中学年(3年生・4年生)向けの本選び
文章を読むことに慣れてきたこの時期は、物語の世界観を楽しめる本へとステップアップする時期です。少し長めの物語や、登場人物の気持ちの変化を丁寧に描いた作品がおすすめです。
冒険ファンタジーやミステリー、学校生活を舞台にした友情や成長の物語などが人気です。また、伝記や歴史をテーマにした読み物も、社会への関心を広げるきっかけになります。科学や自然をテーマにした読み物も、知的好奇心を刺激してくれます。
この時期は、「自分で選んで読む」という体験も大切です。図書館や書店に一緒に行き、子ども自身に選ばせてあげましょう。たとえ親から見て「簡単すぎる」と思える本でも、本人が選んだものなら最後まで読む可能性が高くなります。
高学年(5年生・6年生)向けの本選び
抽象的な思考ができるようになってくるこの時期は、テーマ性のある物語や、少し複雑な人間関係が描かれた作品にも挑戦できます。
社会問題や環境問題を扱った物語、歴史小説、SF、ファンタジー大作など、読み応えのある本がおすすめです。また、新聞の子ども版や、中高生向けの雑誌なども、時事問題への関心を育てるのに役立ちます。
この年齢になると、マンガと小説のハイブリッドのような作品も増えてきます。マンガから入っても構いません。大切なのは「読むことが楽しい」という気持ちを持ち続けることです。
また、親子で同じ本を読んで感想を語り合う時間を作ると、読解力だけでなく、論理的に意見を述べる力や、他者の視点を理解する力も育ちます。
デジタル時代の味方!読解力を伸ばすアプリとツール
現代の子どもたちはデジタルネイティブ。タブレットやスマートフォンを上手に活用することで、読解力トレーニングをより効果的に、楽しく進めることができます。
電子書籍サービスを使えば、いつでもどこでも本にアクセスできます。音声読み上げ機能がついているものなら、読むのが苦手な子でも耳から物語を楽しめます。語彙学習アプリは、ゲーム感覚で新しい言葉を覚えられる工夫がされています。
ニュース記事を子ども向けに要約してくれるアプリや、物語を作りながら読解力を鍛えるアプリなど、さまざまなものがあります。ただし、デジタルツールはあくまで補助的なものです。親子の会話や紙の本を読む時間とバランスよく組み合わせることが大切です。
使用時間を決めたり、一緒に内容について話したりすることで、デジタルツールのメリットを最大限に活かしましょう。
発達に特性のある子への寄り添い方
発達障害や学習障害など、発達に特性のあるお子さんの場合、一般的な読解力トレーニングだけでは難しいケースがあります。でも、お子さんの特性を理解し、その子に合ったアプローチをすれば、必ず力は伸びていきます。
読み書きが苦手な子(ディスレクシアなど)へのサポート
文字を読むこと自体に困難がある場合は、無理に活字を読ませるのではなく、まずは「耳から聴く」ことを優先しましょう。オーディオブックや、親の読み聞かせを通じて、物語の楽しさや語彙を増やすことができます。
タブレットの音声読み上げ機能を活用したり、文字の大きさやフォントを変えられる電子書籍を試したりするのも有効です。また、文字を追いやすくするために、色のついた透明シートを使う方法もあります。
注意が続きにくい子(ADHDなど)へのサポート
長い文章を最後まで読むのが難しい場合は、短い文章から始めましょう。1ページだけ、1段落だけでも大丈夫です。少しずつ読める量を増やしていきます。
タイマーを使って「5分間だけ集中して読む」といった時間を区切る方法も効果的です。読んだ後に体を動かす時間を挟むなど、メリハリをつけることも大切です。また、興味のあるテーマの本なら集中力が続きやすいので、本人の「好き」を最優先に選びましょう。
コミュニケーションが苦手な子(ASDなど)へのサポート
人の気持ちを推測することが苦手な場合、登場人物の感情を読み取る問題に苦労することがあります。そんな時は、絵カードや表情カードを使って、「この顔はどんな気持ち?」と具体的に教えていくのが有効です。
また、物語の内容を図や表にして視覚化すると、理解しやすくなります。「誰が」「何をした」「どうなった」という情報を整理するフォーマットを作り、それに沿って読んでいく方法もおすすめです。
いずれの場合も、焦らず、お子さんのペースを尊重することが何より大切です。できたことをたくさん褒めて、小さな成功体験を積み重ねていきましょう。必要に応じて、専門家(学校の特別支援コーディネーター、言語聴覚士、作業療法士など)に相談することも検討してください。
それでも伸び悩んだら…習い事という選択肢を考える
家庭での取り組みだけでは限界を感じたり、もっと専門的な指導を受けさせたいと思ったりした場合、習い事は有効な選択肢になります。ただし、やみくもに始めても効果は期待できません。ここでは、習い事を検討する際のポイントと、目的別の種類をお伝えします。
習い事は本当に必要?見極めるポイント
まずは、なぜ習い事が必要なのかをはっきりさせましょう。子ども自身が「習いたい」という意欲を持っているか。家庭では教えられない専門的なスキルを求めているか。共働きなどで、家庭での学習サポートの時間を確保するのが難しいか。
これらの点を考慮し、お子さん本人としっかり話し合った上で、必要性を判断することが大切です。子どもが乗り気でないのに無理やり通わせても、お金と時間の無駄になるだけでなく、勉強そのものが嫌いになってしまう可能性もあります。
目的別・習い事の種類とそれぞれの特徴
読解力向上を目的とした習い事には、いくつかの種類があります。それぞれの特徴を理解し、お子さんの課題に合ったものを選びましょう。
国語専門の塾は、文章問題を体系的に学びたいお子さんにおすすめです。読解、作文、文法など、国語の力を総合的に伸ばせるのがメリットです。ただし大規模な塾は少なく、地域密着型の小さな教室が多い傾向があります。
作文・表現教室は、自分の考えを書いたり話したりすることが苦手なお子さんに向いています。思考力と表現力を重点的に鍛えられます。ただし教室数が限られているため、オンライン講座も選択肢に入れると良いでしょう。
速読解力講座は、読むスピードが遅く、テストで時間が足りないお子さんにおすすめです。速く正確に読むスキルと読解力を同時に鍛えられます。ただし、この講座を開講している塾が限られる場合があるので、事前に確認が必要です。
プログラミング教室は、筋道を立てて考えることが苦手なお子さんに向いています。論理的思考力や問題解決能力が身につきます。ただし、直接的な国語力向上というより、思考力の土台を作るものだと理解しておきましょう。
失敗しないための3つの注意点
習い事を選ぶ際に、忘れてはいけない3つのポイントがあります。
第一に、子ども本人が興味を持ち、楽しめるかどうかです。何よりも大切なのは、子どもが「楽しい」「もっとやりたい」と感じることです。無理やり通わせても、スキルは身につきません。必ず体験授業などに参加し、教室の雰囲気や先生との相性を子ども自身の目で確かめさせましょう。
第二に、親の負担が大きすぎないかです。月謝などの金銭的な負担はもちろん、送迎にかかる時間や労力も考慮する必要があります。長期的に続けられるかどうか、家庭のライフスタイルと照らし合わせて現実的な計画を立てましょう。
第三に、「辞め時」も視野に入れておくことです。習い事を始める際には、「いつまで続けるか」という視点も大切です。「何年生まで」「次の目標を達成したら」といったゴールを設定しておくと、親子共にモチベーションを維持しやすくなります。もし子どもの興味が薄れたり、他のことに挑戦したくなったりした場合は、その気持ちを尊重し、話し合いの上で柔軟に判断しましょう。
読解力が伸びる家庭環境の作り方
読解力を育てるには、日々の習慣だけでなく、家庭全体の環境作りも大切です。ちょっとした工夫で、お子さんが自然と本を手に取り、考える習慣を身につけられる環境を整えましょう。
リビングや子ども部屋に本棚を設置し、いつでも手に取れる場所に本を置きます。「勉強部屋の奥」ではなく、「日常の動線上」に本があることがポイントです。また、家族が集まるダイニングテーブルに、辞書や図鑑を置いておくのも効果的です。わからない言葉が出てきたとき、すぐに調べられる環境を作りましょう。
テレビやゲームの時間をルール化し、「読書タイム」や「家族で話す時間」を意識的に作ることも大切です。毎日夜8時から30分は読書の時間、週末の朝はゆっくり新聞を読む時間、といった習慣を作ってみてください。
親自身が読書や学びを楽しんでいる姿を見せることも忘れずに。「お母さん、この本面白いよ」「お父さん、ニュースでこんなこと知ったよ」と、学ぶ楽しさを共有する姿勢が、子どもの知的好奇心を刺激します。
まとめ:完璧を目指さず、できることから始めよう
この記事では、小学生のお子さんの読解力を家庭で育てるための具体的な習慣から、年齢別のアプローチ、おすすめの本のジャンル、発達特性への配慮、そして習い事の選び方まで、幅広くお伝えしてきました。
最後に、最も大切なことをお伝えします。それは、完璧を目指さないことです。
今回ご紹介した7つの習慣を、明日から全部実践する必要はありません。まずは「これなら自分にもできそう」と思えるものを一つだけ選んで、試してみてください。
いつもの「学校どうだった?」という質問を、「今日の休み時間、何が一番楽しかった?」に変えてみる。それだけでも、お子さんの頭の中では「今日の出来事を思い出し、整理し、言葉を選ぶ」という、読解力に繋がる素晴らしい活動が始まります。
寝る前の5分間、一緒に本を読む。週末に図書館に行ってみる。家族でボードゲームをする。そんな小さな一歩の積み重ねが、やがてお子さんの「わかった!」「できた!」という自信に繋がり、学ぶことの楽しさを知り、自分の力で未来を切り拓いていくための、何より強い土台となるのです。
読解力は一朝一夕には身につきません。でも、毎日のほんの少しの工夫と、お子さんへの温かいまなざしがあれば、必ず育っていきます。焦らず、お子さんのペースを大切にしながら、一緒に楽しく取り組んでいきましょう。
この記事が、お子さんの輝かしい未来への一助となれば、これほど嬉しいことはありません。
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