紫綬褒章とは?対象・選ばれ方と2026年秋の受章者

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ニュースで「紫綬褒章を受章」と聞いて、どんな人がもらうのか、どれくらいすごい賞なのか、気になった方もいるのではないでしょうか。2026年11月2日には秋の褒章が発表され、現代美術家の奈良美智さんやブラックホールの撮影に貢献した本間希樹さんらが紫綬褒章に選ばれました。

この記事では、紫綬褒章の対象と歴史、6種類の褒章の違い、2026年秋の受章者、選ばれ方と授与までの流れ、文化勲章などとの違いを順に整理します。

紫綬褒章は、科学技術の発明・発見や、学術・スポーツ・芸術文化の分野で優れた業績を挙げた人に国が贈る褒章です。毎年4月29日と11月3日に授与され、賞金や年金は付かない「名誉」としての表彰です。

目次

紫綬褒章とは?学術・芸術・スポーツの業績に贈られる褒章

紫綬褒章は、国の栄典のひとつである「褒章」のうち、紫色のリボン(綬)が付いたものです。研究者、作家、俳優、音楽家、スポーツ選手など、受章者の顔ぶれが幅広いのが特徴で、ニュースでも名前が大きく取り上げられます。英語では「Medal with Purple Ribbon」と呼ばれます。ここでは、どんな功績が対象になるのか、いつ生まれた褒章なのか、記章はどんな形をしているのかの3点を見ていきます。

紫綬褒章の対象になる功績

内閣府は、紫綬褒章の対象を「科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた方」としています。大学や研究機関の研究者のほか、小説家、画家、映画監督、俳優、歌舞伎役者、オリンピックの金メダリストなどが受章してきました。

ほかの褒章が「人命救助」「ボランティア」「寄付」など行いを評価するのに対し、紫綬褒章はその人が成し遂げた成果そのものを評価する褒章です。そのため、受章の理由も「ブラックホールの撮影に貢献」「日本勢初の五輪金メダル」のように、具体的な業績で報じられます。

1955年に藍綬褒章から分かれて生まれた

褒章の制度は、1881年(明治14年)12月に公布された「褒章条例」に始まります。このとき作られたのは紅綬・緑綬・藍綬の3種類で、翌1882年から施行されました。その後、1918年(大正7年)に紺綬褒章が加わります。

紫綬褒章ができたのは、1955年(昭和30年)の褒章条例の改正です。それまで藍綬褒章に含まれていた学術・芸術・発明などの功績を独立させ、黄綬褒章とあわせて2つの褒章が増設されました。2026年で、紫綬褒章は制定から71年になります。

記章のデザインと、2回目以降の「飾版」

褒章の記章は、「褒章」の二字を桜の花で飾った円形のメダルです。メダルの形は6種類とも共通で、つり下げるリボンの色だけが違います。紫綬褒章なら紫、黄綬褒章なら黄色というように、綬の色を見ればどの褒章かが分かるしくみです。

すでに褒章を受けた人が、同じ種類の褒章をもう一度受けることもあります。その場合は新しいメダルではなく、リボンに付ける「飾版(しょくはん)」が授与されます。飾版には銀と金の2種類があります。

紫色のリボンが付いた丸い銀色のメダルが、白い布の上に置かれている。周りに桜の花びらが少し散っている

褒章は6種類|綬(リボン)の色で分野が決まる

褒章は全部で6種類あり、紅・緑・黄・紫・藍・紺というリボンの色で区別されます。勲章が功績の大きさで等級を分けるのに対し、褒章には上下の等級がありません。色ごとに「どの分野で功績を挙げたか」が決まっているので、紫綬褒章と黄綬褒章のどちらが上ということもありません。春と秋の褒章で発表されるのは、紺綬褒章を除く5種類です。まず6種類の対象を表で確認し、続いて2003年の改革で変わった点を見ていきます。

6種類の褒章の比較表

内閣府が示している6種類の褒章の対象を、制定の年とあわせて並べると次のようになります。

褒章主な対象制定
紅綬褒章自分の危険を顧みず人命の救助に尽くした人1881年
緑綬褒章長年にわたりボランティアなど社会に奉仕する活動を続け、顕著な実績を挙げた人1881年
黄綬褒章農業・商業・工業などの業務に励み、他の模範となる技術や実績を持つ人1955年
紫綬褒章科学技術の発明・発見、学術・スポーツ・芸術文化で優れた業績を挙げた人1955年
藍綬褒章産業の振興や社会福祉の増進に貢献した人、保護司・民生委員など公共の事務に尽くした人1881年
紺綬褒章公益のために私財を寄付した人(個人は500万円以上が目安)1918年

ニュースでよく名前が出るのは紫綬褒章ですが、受章者の数が多いのは、地域の産業や福祉を支えてきた人に贈られる黄綬褒章や藍綬褒章です。地元の職人さんや民生委員さんの受章が地方紙で紹介されるのは、こちらの褒章です。

2003年の改革で変わったこと

褒章の制度は、2003年の栄典制度の改革で大きく見直されました。ひとつは緑綬褒章です。制定当初は親孝行など「徳行の優れた人」が対象でしたが、昭和30年代以降は受章例が途絶えていました。改革で対象をボランティア活動に改め、いまは春と秋に受章者が出ています。

もうひとつは年齢です。改革前の資料では、褒章の受章年齢は原則55歳以上とされていました。改革では「年齢にとらわれることなく、若くても表彰できるようにする」方針が示されました。20歳前後のオリンピック選手が紫綬褒章を受けるのは、この考え方によるものです。

2026年秋の紫綬褒章の受章者

2026年秋の褒章は、政府が11月2日付で発表し、11月3日(文化の日)付で発令されます。紫綬褒章を受けるのは13人で、そのうち女性は1人です。春の褒章と比べると人数は半分ほどで、研究者と芸術家が中心の顔ぶれになりました。13人は秋の褒章の受章者736人の約1.8%にあたります。ここでは秋の褒章全体の規模、報道で名前が確認できた紫綬褒章の受章者、半年前の春の受章者の順に紹介します。

秋の褒章の全体像(736人と25団体)

2026年秋の褒章の受章者は、736人(うち女性160人)と25団体です。この中には紫綬褒章のほか、黄綬褒章・藍綬褒章・紅綬褒章・緑綬褒章の受章者が含まれます。団体は、ボランティア活動などで実績のあるグループに贈られる表彰です。

紫綬褒章の13人という人数は、736人のうちのごく一部にすぎません。2026年春の紫綬褒章は26人(うち女性7人)で、2020年は春と秋を合わせて36人でした。1回あたり十数人から二十数人という狭き門です。

報道で確認できた受章者と業績

11月2日の報道で名前が確認できた紫綬褒章の受章者は、次の4人です(年齢は発表時点)。

受章者肩書き・分野報じられた主な業績
奈良美智さん(66)現代美術家絵画や彫刻などで国内外で知られる
本間希樹さん(55)国立天文台教授ブラックホールの初めての撮影に貢献
染谷隆夫さん(58)東京大学教授電子工学の研究
北川雄光さん(66)慶應義塾大学副学長外科学の研究

残る9人を含めた全員の名簿は、内閣府の「日本の勲章・褒章」のページで公開されます。名前や肩書きを正確に知りたいときは、発令日以降に内閣府の名簿で確かめるのが確実です。

2026年春の受章者(りくりゅう・スノーボードの金メダリストなど)

半年前の2026年春の褒章では、ミラノ・コルティナ冬季五輪の金メダリストが紫綬褒章に選ばれて話題になりました。フィギュアスケートのペアで日本勢初の金メダルを獲得した「りくりゅう」こと三浦璃来さん(24)と木原龍一さん(33)、スノーボードの戸塚優斗さん(24)、木村葵来さん(21)、村瀬心椛さん(21)、深田茉莉さん(19)です。

同じ春には、俳優で演出家の吉田鋼太郎さん(67)、作家の宮部みゆきさん、音楽評論家の片山杜秀さんらも紫綬褒章を受けています。10代の選手から60代のベテランまで並ぶのが、紫綬褒章らしい顔ぶれです。

紫綬褒章はどうやって選ばれる?推薦から発令まで

紫綬褒章は、自分で応募してもらうものではありません。各分野を担当する省庁の大臣が候補者を推薦し、内閣府が審査したうえで、閣議で受章者が決まります。発令の日は春と秋で決まっているので、ニュースで受章者の名前が出るのは毎年4月末と11月初めです。2026年春の場合、閣議決定から発令までは12日でした。ここでは発令の時期、推薦から決定までの流れ、年齢の目安の3点を順に見ていきます。

春は4月29日、秋は11月3日に発令

紫綬褒章は、紺綬褒章を除くほかの4種類の褒章と同じく、毎年4月29日(昭和の日)と11月3日(文化の日)に授与されます。受章者の発表は、発令日の直前に行われます。2026年は春が4月28日、秋が11月2日に発表されました。

一方、紺綬褒章は寄付があるたびに授与されます。秋の褒章の日は、皇居で文化勲章の親授式が行われる文化の日と重なるため、11月初めは国の表彰のニュースが続く時期です。

推薦→審査→閣議決定の流れ

受章者が決まるまでの流れは、次のとおりです。

  1. 各府省の大臣が、担当する分野の候補者を推薦する(紫綬褒章なら研究者・芸術家・スポーツ選手など)
  2. 内閣府の賞勲局が審査し、受章者の案をまとめる
  3. 閣議で受章者を決定する(2026年春は4月17日の閣議で決定)
  4. 4月29日または11月3日付で発令される

日本国憲法第7条は、天皇が内閣の助言と承認によって行う国事行為のひとつに「栄典を授与すること」を挙げています。褒章もこの栄典にあたり、閣議で決めたうえで天皇の名で授与されるしくみです。

年齢の目安と、若い受章者が増えた理由

叙勲(勲章)の受章年齢が原則70歳以上とされているのに対し、褒章はもともと原則55歳以上とされてきました。研究者や芸術家の場合は、長年の業績が評価されて50代から60代で受章する例が多く、2026年秋に名前が報じられた4人も55歳から66歳です。

ただし、2003年の改革で「若くても表彰できるようにする」方針が示されてからは、大きな国際大会で結果を出したスポーツ選手が20代前後で受章する例が目立つようになりました。2026年春に受章した深田茉莉さんは19歳です。紫綬褒章に年齢の上限や下限はなく、業績の大きさで選ばれます。

秋晴れの空の下、石垣と松の木が並ぶ落ち着いた和の庭園の風景。手前に菊の花が咲いている

文化勲章・文化功労者・叙勲・国民栄誉賞との違い

紫綬褒章と並んでニュースに出てくる表彰に、文化勲章、文化功労者、叙勲、国民栄誉賞があります。どれも名誉ある表彰ですが、根拠となる制度、年金の有無、選ばれる人数がそれぞれ違います。最も大きな違いは、紫綬褒章が「分野ごとの業績」に贈られる褒章なのに対し、文化勲章や叙勲は功績の大きさで等級が分かれる「勲章」の仲間だという点です。まず勲章と褒章の違いを押さえ、そのあと表で比べます。

勲章と褒章の違い(等級か、分野か)

勲章は、国や公共に対する長年の功績を総合的に評価して贈られ、功績の大きさによって旭日大綬章、瑞宝中綬章のような等級があります。春と秋の叙勲は、主に70歳以上の人が対象です。

褒章は、特定の分野でのひとつの業績や行いを、その時点で表彰するものです。等級はなく、分野によって色が分かれます。そのため、紫綬褒章を受けた研究者や芸術家が、さらに年月を重ねて業績が評価され、のちに勲章や文化勲章を受けることもあります。

5つの表彰の比較表

紫綬褒章と、よく比べられる4つの表彰の違いを表にまとめました。

表彰どんな表彰か年金・賞金
紫綬褒章学術・芸術・スポーツなどの優れた業績に贈る褒章。春と秋に十数人から二十数人ずつなし
文化勲章文化の発達に特に優れた功績のある人に贈る勲章。原則として前年度までの文化功労者から選ばれるなし
文化功労者文化の向上発達に特に功績のある人を文部科学大臣が決める。近年は毎年20人前後終身で年350万円
叙勲(春秋)国や公共への長年の功績を評価して贈る勲章。等級があるなし
国民栄誉賞広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えた人に内閣総理大臣が贈る表彰なし(記念品など)

年金があるのは文化功労者だけで、これは栄典ではなく、1951年にできた文化功労者年金法にもとづく制度です。また、人間国宝(重要無形文化財の保持者)も文化財保護法による認定で、褒章や勲章とは別のしくみです。

受章したらどうなる?伝達式・拝謁と受章祝い

紫綬褒章の受章が決まると、発令から数週間のうちに、推薦した省庁で褒章を手渡す「伝達式」が開かれます。同じ日には皇居で天皇陛下に拝謁するのが通例です。お金がもらえる表彰ではないものの、周りの人がお祝いの会を開いたり、贈り物をしたりする機会は多くなります。伝達式は推薦した省庁ごとに開かれるため、日にちは受章者によって違います。ここでは伝達式と拝謁の流れ、賞金や年金がない理由、受章祝いを贈るときのマナーを順に見ていきます。

伝達式と皇居での拝謁

伝達式では、各府省の大臣や副大臣から、褒章(記章)と章記(表彰の文書)が受章者に手渡されます。文部科学省の例では、2024年秋は11月26日に伝達式が開かれ、紫綬褒章の受章者を代表して宮地充子さんが大臣から褒章を受け取りました。

伝達式のあとは、受章者がそろって皇居宮殿へ向かい、天皇陛下に拝謁します。厚生労働省の公表資料でも、午前に省内で伝達、同じ日の午後に皇居宮殿で拝謁という日程が示されています。伝達と拝謁が1日で行われるため、受章者にとっては特別な一日になります。

賞金・年金がない理由

紫綬褒章には、賞金も年金もありません。理由は日本国憲法第14条3項に「栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない」と定められているからです。褒章を受けたことで、税金が安くなったり、特別な待遇を受けたりすることもありません。

文化勲章にも年金がないのは同じ理由です。戦前の文化勲章には年金がありましたが、戦後は憲法のもとで金銭を伴わない栄典になりました。その代わりとして作られたのが、文化功労者の年金制度です。紫綬褒章は、まさに「名誉」そのものを贈る表彰だといえます。

受章祝いを贈るときのマナー

恩師や取引先、知人が紫綬褒章を受けたときは、発表後なるべく早めにお祝いの気持ちを伝えます。電話や手紙、祝電のほか、花や記念品を贈る人も多くいます。のしは紅白の蝶結びの水引を使い、表書きは「祝 御受章」または「御祝」とするのが一般的です。

  • 贈る時期:発表から伝達式・祝賀会のころまで。祝賀会に招かれた場合は、会費や会場でのお祝いで足りることもある
  • 手紙の一言:「このたびは紫綬褒章のご受章、誠におめでとうございます。長年のご研究の成果が認められ、心よりお喜び申し上げます」
  • 避けたいこと:発表前に受章の話を広めること。受章者の名前は政府の発表をもって公になる

お祝いを受けた側は、記念品や挨拶状で「内祝い」としてお礼をすることがあります。いただいた品の半額程度を目安にする人が多いものの、祝賀会を開いた場合はその場の引き出物でお礼に代えることもあります。

よくある質問

紫綬褒章はどれくらいすごい賞ですか?

春と秋の褒章では毎回数百人が受章しますが、紫綬褒章はそのうち十数人から二十数人だけです。2026年秋は736人のうち13人でした。学術・芸術・スポーツの分野で国から業績を認められた証として、とても名誉のある表彰です。

紫綬褒章をもらうとお金はもらえますか?

もらえません。憲法で栄典には特権が伴わないと定められているため、賞金も年金もありません。年金が出るのは、別の制度である文化功労者(年350万円)です。

若い人や10代でももらえますか?

もらえます。2003年の改革で、褒章は年齢にとらわれず若くても表彰する方針になりました。2026年春には、スノーボードの金メダリストの深田茉莉さんが19歳で紫綬褒章を受けています。

紫綬褒章を2回もらうことはありますか?

同じ種類の褒章を重ねて受けることはあります。その場合は新しいメダルではなく、リボンに付ける「飾版」が授与されます。飾版には銀と金の2種類があります。

紫綬褒章と文化勲章はどちらが上ですか?

制度が別なので単純に比べられませんが、文化勲章は文化功労者の中から選ばれ、毎年数人しか受けない勲章です。紫綬褒章を受けた人が、のちに文化功労者や文化勲章に選ばれる例もあります。

受章者の一覧はどこで見られますか?

内閣府の「日本の勲章・褒章」のページに、春と秋の褒章ごとの受章者名簿が掲載されます。新聞各紙も発表日に主な受章者を報じます。

まとめ

紫綬褒章は、科学技術の発明・発見や、学術・スポーツ・芸術文化の分野で優れた業績を挙げた人に国が贈る褒章です。1955年に藍綬褒章から分かれて生まれ、紫色のリボンが目印です。6種類の褒章に上下はなく、色ごとに対象の分野が決まっています。

受章者は各府省の推薦と内閣府の審査を経て閣議で決まり、毎年4月29日と11月3日に発令されます。賞金や年金はなく、伝達式と皇居での拝謁を経て授与される名誉の表彰です。

2026年秋は、奈良美智さん、本間希樹さんら13人が紫綬褒章を受章します。全員の名前は、発令後に内閣府の名簿で確かめられます。

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