毎年のように日本列島を襲う台風。最近では「経験したことのない」規模の台風が頻発し、甚大な被害をもたらしています。「うちの地域は今まで大丈夫だったから」という過信が、予想もしない災害を引き起こすケースが増えているのが現実です。
台風対策で最も重要なのは、「段階に応じた適切な行動」を取ることです。発生予報の段階から、接近、上陸、そして通過後まで、それぞれのタイミングで求められる対応は全く異なります。
この記事では、気象庁や防災機関の最新情報を基に、台風対策を時系列で詳しく解説していきます。読み終わった後には、あなたも台風に対して冷静かつ効果的な対応ができるようになるはずです。まずは落ち着いて、一つずつ確認していきましょう。
台風対策の基本中の基本!まずは住んでいる場所の危険度をチェック
台風対策で何より大切なのは、「自分が住んでいる場所にどんなリスクがあるのか」を正確に把握することです。同じ台風でも、住む場所によって警戒すべきポイントは大きく変わってきます。
ハザードマップで地域の特性を理解しよう
まず最初にやってほしいのが、ハザードマップの確認です。ハザードマップを見ることで、あなたの住む地域が洪水や土砂災害、高潮などのどのリスクに該当するかが分かります。
国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」では、全国の詳細な災害リスク情報を無料で確認できます。住所を入力するだけで、以下の情報が一目で分かります。
洪水浸水想定区域では、想定される浸水の深さや継続時間が色分けで表示されます。土砂災害警戒区域では、がけ崩れや土石流の危険度が示されています。また、津波や高潮による浸水予想エリアや、指定避難所の場所と収容人数も確認できるんです。
このハザードマップの情報は、避難するタイミングの判断材料として非常に重要です。台風シーズンに入る前に、家族全員で一度は必ず確認しておきましょう。
避難所とアクセスルートを事前に把握する
ハザードマップで避難所の場所を確認したら、実際にそこまでの道のりを歩いてみることをおすすめします。普段車で通り慣れた道でも、徒歩で避難する場合は全く違って見えるものです。
特に注意したいのは、川沿いの道路や地下道、崖の近くを通るルートです。台風の際にはこれらの場所が非常に危険になる可能性があります。できれば2つ以上の避難ルートを用意し、状況に応じて使い分けられるようにしておくと安心です。
台風接近前の準備編|「その時」が来る前にやっておくべき対策
台風の予報が出始めたら、本格的な準備のスタートです。「まだ時間があるから大丈夫」と思っていると、あっという間に暴風雨で外出が困難になってしまいます。早めの行動が何より重要です。
家の外回りの安全対策|飛散物を徹底的になくそう
台風による怪我の多くは、強風で飛ばされた物によるものです。家の周りを一周して、風で飛びそうな物がないかチェックしてみましょう。
窓とガラスの保護対策
雨戸やシャッターがある窓は、必ず閉めてしっかりとロックしてください。雨戸がない窓については、ガラスの飛散防止対策が重要になります。
よく「窓に×字でテープを貼る」方法が紹介されますが、実はこれだけではガラスの強度はほとんど上がりません。効果的なのは、ガラス全面に隙間なくテープを貼ったり、窓の内側から段ボールを隙間なく貼り付けたりする方法です。段ボールなら、万が一ガラスが割れても破片の室内への飛散をかなり防いでくれます。
最も確実なのは、普段から飛散防止フィルムを貼っておくことです。透明なフィルムなので日常生活に支障もなく、台風以外の地震対策としても効果的です。
ベランダと庭の片付け
ベランダや庭には、風で飛びやすい物がたくさんあります。植木鉢、物干し竿、ガーデニング用品、子供の遊具、洗濯ばさみまで、とにかく軽い物は全て室内に取り込みましょう。
重くて移動が困難な物については、ロープやチェーンでしっかりと固定します。エアコンの室外機なども、固定が不十分だと強風で動いてしまうことがあるので、設置状況を確認しておくと良いでしょう。
自転車とバイクの対策
自転車やバイクも要注意です。カバーを掛けていると風をはらんで非常に倒れやすくなるため、台風前にはカバーを外しておきましょう。可能であれば屋内や車庫に移動するのがベストですが、難しい場合は建物の壁に寄せてロープで固定したり、あえて地面に寝かせておいたりする方法もあります。
排水設備のメンテナンス
意外と見落としがちなのが、排水溝や側溝の掃除です。落ち葉やゴミが詰まっていると、大雨の時に雨水が流れずに道路が冠水し、最悪の場合は床上浸水の原因にもなります。家の周りの排水設備をざっと見回して、詰まりがないか確認しておきましょう。
家の中の備え|ライフライン停止を前提とした準備
台風では停電や断水が発生することが珍しくありません。特に近年は、安全確保のために電力会社が事前に送電を停止する「計画停電」も実施されることがあります。数日間はライフラインなしでも生活できるよう、しっかりと備えておきましょう。
停電対策の具体的な準備
まず、スマートフォンとモバイルバッテリーを満充電にしておくのは基本中の基本です。複数のモバイルバッテリーがあれば、それらも全て充電しておきましょう。
照明器具については、懐中電灯だけでなく、ランタンタイプのライトがあると便利です。懐中電灯は手に持つ必要がありますが、ランタンなら置いて使えるので、両手が空いて作業がしやすくなります。ヘッドライトも、両手を自由に使えるのでおすすめです。
予備の電池も十分に用意しておきましょう。単1から単4まで、使用する機器に合わせて必要な種類と数量を確認しておくことが大切です。
余裕があれば、ポータブル電源の導入も検討してみてください。最近は比較的手頃な価格で購入できるものも増えており、台風以外の災害時や停電時にも重宝します。
断水に備えた給水対策
断水に備えて、事前に水を確保しておくことも重要です。飲料水とは別に、浴槽に水を溜めておけば、トイレを流したり、体を拭いたり、食器を洗ったりする生活用水として使えます。
清潔なポリタンクやペットボトルがあれば、それらにも水を溜めておきましょう。特に、小さなお子さんがいる家庭では、調乳用の清潔な水の確保は必須です。
家電製品を守る対策
台風による落雷で発生する過電流(サージ)は、家電製品に深刻なダメージを与えることがあります。パソコンやテレビ、冷蔵庫などの高価な家電は、台風接近前に電源プラグをコンセントから抜いておくことをおすすめします。
冷蔵庫については、事前に設定温度を下げておけば、停電になっても数時間は冷気を保持してくれます。冷凍庫も同様で、できるだけ開閉を控えることで保冷効果を長持ちさせることができます。
食料・飲料の備蓄|最低3日分、できれば1週間分を目安に
災害時の備蓄では、最低3日分、大規模災害を想定するなら1週間分の食料と飲料水を確保しておくのが基本です。ただし、一度に大量の食料を買い揃えるのは大変ですし、賞味期限の管理も難しくなります。
そこでおすすめなのが「ローリングストック法」です。普段から少し多めに食料品を買い置きしておき、古いものから順番に使って、使った分だけ買い足していく方法です。この方法なら、無理なく備蓄を維持できますし、いざという時に「賞味期限が切れていた」という失敗も防げます。
飲料水の確保
1人1日3リットルを目安に、家族の人数分×日数分の水を用意しましょう。市販のペットボトル水が一番手軽ですが、大容量のウォーターボトルを利用している家庭なら、それも活用できます。
赤ちゃんがいる家庭では、調乳用の軟水を多めに確保しておくことも忘れずに。粉ミルクの場合、お湯を沸かす手段も併せて用意しておく必要があります。
主食の備蓄アイデア
主食については、調理が簡単で日持ちするものを中心に選びましょう。レトルトご飯やアルファ米は、水やお湯を注ぐだけで食べられるので非常に便利です。カップ麺やインスタント麺も、お湯さえあれば手軽に食事になります。
パンの場合、缶詰タイプのものなら長期保存が可能です。乾パンやクラッカーも、そのまま食べられるので重宝します。
シリアルやグラノーラは、牛乳がなくても食べられますし、栄養バランスも比較的良いのでおすすめです。
おかずとなる食品の備蓄
缶詰は災害時の強い味方です。魚の缶詰、肉の缶詰、野菜の缶詰など、バラエティ豊かに揃えておきましょう。最近は味付けも美味しくなっており、そのまま食べても十分満足できるものが多くあります。
レトルト食品も便利です。カレーや牛丼、親子丼などは、温めればすぐに食べられますし、冷たいままでも食べられないことはありません。
フリーズドライ食品は軽くて保存がきき、お湯を注ぐだけで食べられるので非常に重宝します。味噌汁やスープ、雑炊などがあると、食事のバリエーションが広がります。
その他の備蓄品
栄養バランスを考えて、野菜ジュースや栄養補助食品も用意しておくと良いでしょう。災害時は栄養が偏りがちなので、こうした食品で補うことが大切です。
お菓子類も実は重要です。チョコレートや飴、クッキーなどは、手軽にエネルギー補給ができますし、精神的な安らぎも与えてくれます。特に子供がいる家庭では、普段食べ慣れたお菓子があると、不安な気持ちを和らげる効果もあります。
調理器具では、カセットコンロとカセットボンベがあると非常に便利です。停電してもお湯を沸かしたり、簡単な調理ができたりするので、食事の幅が大きく広がります。予備のカセットボンベも忘れずに用意しておきましょう。
避難の準備と情報収集体制の整備
いざという時に慌てず避難できるよう、平時から準備を整えておくことが重要です。
避難先と避難ルートの確認
ハザードマップで確認した避難場所への道のりを、実際に歩いてみることをおすすめします。昼間だけでなく、夜間や雨の日の状況も把握しておくと、より実際的な避難計画が立てられます。
避難ルートは複数用意しておきましょう。川が氾濫していたり、道路が冠水していたりして、メインのルートが使えない可能性もあります。迂回ルートも含めて、家族全員で共有しておくことが大切です。
非常用持ち出し袋の準備
避難時に持参する非常用持ち出し袋は、リュックサックなど両手が空くタイプのバッグを使用しましょう。重すぎると移動に支障をきたすので、最低限必要なものに絞って準備することがポイントです。
貴重品では、現金(小銭も含む)、身分証明書や保険証のコピー、預金通帳や重要書類のコピーなどを防水袋に入れて準備しておきます。
食料は、1日分程度の非常食と飲料水を入れておきます。医薬品については、常備薬やお薬手帳、簡単な救急用品を用意します。
その他、着替え(1日分)、タオル、ティッシュ、ウェットティッシュ、簡易トイレ、懐中電灯、ラジオ、モバイルバッテリーなども忘れずに入れておきましょう。
情報収集手段の多重化
災害時には正確な情報を迅速に得ることが生命を守る鍵となります。停電しても情報収集できるよう、複数の手段を準備しておくことが重要です。
スマートフォンには、気象庁の「キキクル」、Yahoo!防災速報、NERV防災などの防災アプリをインストールしておきましょう。これらのアプリは、緊急地震速報や避難情報なども受信できます。
電池式や手回し充電式の携帯ラジオは、停電時の情報収集で最も頼りになるツールです。地元のラジオ局では、その地域に特化した詳細な情報を放送してくれることも多いので、地元局の周波数も調べておくと良いでしょう。
お住まいの自治体の公式ウェブサイトや、公式SNSアカウントも事前に確認しておきましょう。自治体によっては、LINEの公式アカウントで防災情報を配信しているところもあります。
台風接近・上陸中の行動編|命を最優先にした安全確保
風雨が強まってきたら、ここからは安全確保が何よりも優先されます。「少しだけなら大丈夫」という油断が命取りになることもあるので、慎重に行動しましょう。
外出は絶対に避ける|屋外の危険性を正しく理解する
台風接近中の外出は、原則として絶対に避けてください。普段は何でもない道路や公園も、台風の時には非常に危険な場所に様変わりします。
飛来物による危険
暴風により、看板やトタン板、瓦、植木鉢、自転車などあらゆるものが空中を飛び交います。これらの飛来物に当たれば、重傷を負ったり、最悪の場合命を落としたりする危険があります。風速が25メートルを超えると、人は立っていることすら困難になります。
冠水道路の隠れた危険
冠水した道路では、マンホールの蓋が外れていても水面下に隠れて見えません。また、側溝や用水路の境界も分からなくなり、うっかり足を取られて転落する危険があります。水深30センチメートルでも、流れがあれば大人でも歩行が困難になります。
河川や海岸付近の危険
増水した河川は、見た目以上に流れが速く強力です。普段は穏やかな小川でも、台風時には濁流となって周囲を飲み込みます。海岸では高波や高潮により、普段は安全な堤防も水没する可能性があります。
「様子を見に行く」という気持ちは分かりますが、絶対に近づかないでください。毎年、様子を見に行って被害に遭うケースが報告されています。
避難情報の警戒レベル|迷わず行動するための判断基準
自治体から発令される避難情報には5段階の警戒レベルがあり、それぞれに求められる行動が明確に定められています。この警戒レベルを正しく理解し、適切なタイミングで行動することが重要です。
警戒レベル3「高齢者等避難」が発令されたら
この段階では、避難に時間がかかる方々は避難を開始します。具体的には、高齢者、身体の不自由な方、乳幼児のいるご家庭、ペットと一緒に避難する必要がある方などです。
該当しない方も、避難の準備を整え、状況によってはこの段階で自主的に避難することを検討しましょう。特に、ハザードマップで浸水や土砂災害のリスクが高いとされている地域にお住まいの方は、早めの避難が安全です。
警戒レベル4「避難指示」は全員避難
警戒レベル4が発令されたら、危険な場所にいる人は全員避難する段階です。「まだ大丈夫だろう」と思わず、速やかに指定された避難場所へ移動してください。
ただし、避難場所への移動がかえって危険な場合もあります。自宅がハザードマップで安全とされている場所で、なおかつ頑丈な建物の高い階にある場合は、無理に外出せず「在宅避難」や「垂直避難」(建物の上階への避難)を選択することも可能です。
警戒レベル5「緊急安全確保」は最高レベル
警戒レベル5は、すでに災害が発生しているか、発生が切迫している最も危険な状況です。この段階では、避難場所への移動自体が危険を伴う可能性があります。
まずは今いる場所で、少しでも安全な場所を探してください。崖から離れた部屋、建物の2階以上、頑丈な構造の建物の中など、命を守るための最善の行動を取ってください。
通勤・通学時の判断基準
台風接近時の通勤・通学については、まず勤務先や学校の方針を確認することが大切です。多くの企業や学校では、従業員や生徒の安全を考慮して休業や在宅勤務の措置を取ることが一般的になっています。
公共交通機関が計画運休を発表している場合は、社会全体で「動かない」選択をしている状況です。個人の判断で無理に出勤・通学することは、自分だけでなく他の人の安全も脅かすことになりかねません。
やむを得ず外出する必要がある場合は、防水性の高いレインウェアと滑りにくい靴を着用し、可能な限り安全なルートを選択してください。アンダーパス(地下道)や河川沿いの道路、切り通しなどは特に危険なので避けましょう。
台風通過後の注意事項|「終わった」と思った時こそ要注意
台風が通過し、空が明るくなっても、まだ安心はできません。台風通過後にも様々な危険が潜んでおり、毎年この段階で被害に遭うケースが報告されています。
外出前の安全確認|急がば回れの精神で
台風通過直後は、増水した河川の氾濫や、雨で緩んだ地盤による土砂災害が発生する可能性があります。自治体からの安全宣言や、気象台からの警報・注意報の解除を必ず確認してから外出するようにしましょう。
外出する際は、道路の状況にも注意が必要です。冠水している道路、倒木や落下物がある道路、電線が垂れ下がっている場所などは避けて通りましょう。無理をして通ろうとせず、迂回するか、安全が確認されるまで待つことが大切です。
家屋の片付けと安全対策|二次災害を防ぐために
自宅の片付けや修理を始める際は、二次災害の防止が何より重要です。急いで片付けを始めたくなる気持ちは分かりますが、安全確保を最優先に進めましょう。
電気関係の安全確認
水に濡れた電気製品や配線、垂れ下がった電線は絶対に触らないでください。感電の危険があります。片付けを始める前に、まず分電盤のブレーカーを落として電源を遮断することをおすすめします。
電気系統に異常がある場合は、自分で修理しようとせず、必ず電気工事業者に依頼しましょう。素人判断での作業は非常に危険です。
ケガ防止のための装備
片付け作業では、割れたガラス、釘、金属片などでケガをするリスクが高くなります。作業する際は、以下の装備を必ず着用してください。
厚手の作業用手袋、長袖・長ズボンの作業着、底の厚い安全靴または踏み抜き防止インソールを入れた長靴、必要に応じてヘルメットや保護メガネも着用しましょう。
急いで片付けたい気持ちは分かりますが、ケガをしてしまっては元も子もありません。安全装備をしっかりと着用して作業に取り組んでください。
衛生管理と消毒作業
家屋が浸水した場合、汚水に含まれる細菌やウイルスによる感染症のリスクがあります。清掃作業では、以下の点に注意してください。
まず、泥水に浸かった物品や床・壁をしっかりと清掃し、十分に乾燥させます。その後、消毒用アルコールや家庭用塩素系漂白剤を薄めた消毒液で消毒を行います。
作業中は、マスクやゴーグルを着用し、汚水が口や目に入らないよう注意しましょう。作業後は必ず手洗いとうがいを徹底し、清潔な衣服に着替えてください。
生活再建に向けた手続き|知っておきたい公的支援
万が一、家屋や財産に被害を受けた場合は、その後の生活再建に向けた手続きが必要になります。適切な手続きを行うことで、公的支援や保険金を受けることができます。
被害状況の記録と保存
片付けを始める前に、被害の状況が分かる写真を撮影しておくことが重要です。写真は、家屋の全景と被害箇所のアップの両方を撮影しましょう。日付と場所が分かるよう、新聞などを一緒に写すのも効果的です。
被害を受けた家財道具なども、処分する前に写真に残しておきましょう。これらの記録は、後の手続きで重要な証拠資料となります。
罹災証明書の申請
罹災証明書は、住家の被害程度を証明する書類で、各種支援制度の適用を受けるために必要となります。お住まいの市区町村役場で申請できます。
申請の際は、運転免許証などの身分証明書と、先ほど撮影した被害状況の写真を持参しましょう。市区町村によっては、オンラインでの申請を受け付けているところもあります。
火災保険の活用
多くの火災保険では、台風による被害もカバーされています。契約内容を確認し、「風災・雹災・雪災補償」や「水災補償」などの特約が付いているかチェックしましょう。
保険会社への連絡は、なるべく早めに行うことが大切です。被害状況の写真や罹災証明書があると、手続きがスムーズに進みます。
知っておくと役立つ台風の基礎知識
台風への理解を深めることは、より効果的な防災対策に繋がります。ここでは、台風に関する基本的な知識を分かりやすく解説します。
台風の勢力を表す「中心気圧」の見方
天気予報でよく耳にする「中心気圧950ヘクトパスカル」という表現。これは台風の中心部の気圧を示しており、この数値が低いほど台風の勢力が強いことを意味します。
台風は巨大な掃除機のようなもので、中心の気圧が低いほど、周りの空気をより強力に吸い込みます。一般的に、中心気圧が970ヘクトパスカル以下になると「強い台風」、930ヘクトパスカル以下で「非常に強い台風」と分類されます。
最大風速についても、17.2メートル毎秒以上で「台風」、32.7メートル毎秒以上で「強い台風」、43.7メートル毎秒以上で「非常に強い台風」、54.0メートル毎秒以上で「猛烈な台風」と分類されます。
なぜ台風の「右側」が危険と言われるのか
台風は反時計回りに風が吹き込みながら進行します。このため、台風の進行方向に向かって右半分では、台風自体の回転による風と台風を移動させる風(偏西風など)が同じ方向になり、風速が増強されます。
一方、左半分では台風の回転による風と移動する風が逆方向になるため、風速が相殺されて右側よりも弱くなります。この現象により、「台風の右側は危険側」と呼ばれているのです。
熱帯低気圧と温帯低気圧の違い
熱帯低気圧は、熱帯や亜熱帯の海上で発生する低気圧の総称です。このうち、最大風速が約17メートル毎秒以上のものを「台風」と呼びます。エネルギー源は、暖かい海水から供給される大量の水蒸気です。
一方、温帯低気圧は、暖かい空気と冷たい空気がぶつかることで発生する低気圧で、前線を伴うのが特徴です。台風が北上して性質が変化すると、温帯低気圧に変わることがあります。
ここで注意したいのは、「温帯低気圧に変わった」からといって油断してはいけないということです。温帯低気圧に変わっても勢力が衰えるとは限らず、むしろ影響範囲が広がって、より広い地域で大雨や強風をもたらすことがあります。
台風の進路予想の見方と活用法
気象庁が発表する台風の進路予想図では、台風の中心が通る可能性が高い範囲を円形の予報円で示しています。この予報円は、台風の中心が70%の確率で入ると予想される範囲を表しています。
予報円が大きいほど予想の不確実性が高く、小さいほど進路の予想に確信があることを意味します。また、予報円の外側にも暴風域や強風域は存在するため、予報円に入っていない地域でも油断は禁物です。
進路予想は時間が経つにつれて精度が上がるため、最新の情報を常にチェックすることが重要です。3日後の予想よりも、明日・明後日の予想の方がより正確になります。
まとめ|台風対策の成功は「準備8割、当日2割」
台風対策において最も重要なのは、事前の準備です。台風が近づいてから慌てて準備を始めても、できることは限られてしまいます。逆に、平時からしっかりと準備を整えておけば、台風接近時にも冷静に対応できます。
特に重要なのは、お住まいの地域のリスクを正確に把握することです。ハザードマップを確認し、洪水や土砂災害、高潮などのリスクに応じた対策を立てておきましょう。
また、「自分だけは大丈夫」という根拠のない安心感は危険です。気象警報や避難情報が発令されたら、ためらわずに安全確保の行動を取ってください。特に避難指示が出た段階では、迷わず避難することが命を守ることに直結します。
この記事で紹介した対策は、どれも特別なものではありません。しかし、一つひとつを確実に実践することで、台風による被害を大幅に軽減できます。台風シーズンが本格化する前に、ぜひ一度、ご家庭の防災体制を見直してみてください。
最後に、台風は毎年必ずやってくる自然現象です。「今年は大丈夫だった」ではなく、「来年も備えよう」という継続的な防災意識を持つことが、あなたと大切な人の安全を守る最も確実な方法なのです。
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