名前に「吉」の字が入っている方なら、一度は「つちよし」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。パソコンやスマートフォンで文字を入力していると、「あれ?この『吉』、なんだか普通の『吉』と違うな」と感じた経験がある方も多いはずです。
実は、「つちよし(𠮷)」と一般的な「吉」は、見た目がよく似ているものの、コンピューター上では全く別の文字として扱われています。特に公的文書への記入や、会社の書類作成では、この違いを理解しておくことで、思わぬトラブルを避けることができます。
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𠮷
(この文字を長押しまたはドラッグしてコピーしてください)
この記事では、つちよしと吉の基本的な違いから、WindowsやMac、スマートフォンでの安全な入力方法まで、わかりやすく解説していきます。難しい専門用語は避けて、どなたでもスムーズに理解できるよう心がけました。
つちよし(𠮷)の基本を簡単理解
𠮷(つちよし)
吉(通常の吉)
まず最初に、つちよしと通常の吉の違いを視覚的に確認してみましょう。上の文字を見比べてみると、上部の形に微妙な違いがあることがわかります。この違いは、文字の成り立ちや歴史と深く関わっています。
構造と由来をやさしく解説
「つちよし」という俗称の由来は、文字の上部が「土」の形をしていることに関係しています。通常の「吉」は上部が「士」の形をしていますが、つちよし(𠮷)の場合は「土」の形になっているのが最大の特徴です。
この違いは、漢字の字体が歴史的に変遷する中で生まれたものです。古くから使われている漢字には、時代や地域によって様々な書き方が存在し、これらを「異体字」と呼びます。つちよし(𠮷)も、そうした異体字の一つとして位置づけられています。
Unicodeによる違いを安全に確認
コンピューターの世界では、すべての文字に固有の番号が割り当てられています。これを「Unicode(ユニコード)」と呼び、世界中の文字を統一的に扱うための国際的な規格です。
通常の「吉」のUnicodeは「U+5409」、一方のつちよし(𠮷)は「U+20BB7」という番号が付けられています。この番号が異なるため、コンピューターは2つの文字を完全に別のものとして認識します。
この番号の違いが、時として文字化けや検索漏れの原因となります。特に古いシステムや、一部のソフトウェアでは、つちよし(𠮷)が正しく表示されない、あるいは認識されない場合があります。
苗字での使用実例
つちよしは、実際に多くの方の苗字で使用されています。「吉田」「吉川」「吉野」などの苗字で、戸籍上つちよし(𠮷)が使われているケースは珍しくありません。
戸籍に記載されている文字と、普段使用している文字が異なる場合、公的手続きでは戸籍通りの文字を使用する必要があります。このため、自分の名前にどちらの「吉」が使われているかを正確に把握しておくことが非常に大切です。
吉の旧字体・異体字を整理
「吉」という文字には、つちよし(𠮷)以外にも複数の字体が存在しますが、ここでは特に実用上重要なものに絞って解説します。
「下が長い吉」はフォントの違い
「下が長い吉」と表現されることがありますが、これは独立した文字ではなく、**多くの場合、使用しているフォントのデザインによる見た目の違い**です。例えば、明朝体フォントでは縦線が強調されるデザインのため、下部の「口」が長く見えることがあります。
これは文字の形そのものが違うわけではなく、あくまでフォントのデザイン差です。そのため、Unicodeなどの文字コードは通常の「吉(U+5409)」と同じです。
フォントによる見え方の違い:
明朝体では縦線がスッキリと表現されるため下が長く見えやすく、ゴシック体では全体的に均一な太さでバランスよく表示される傾向があります。文書の見た目を統一したい場合は、使用するフォントに注意しましょう。
JIS収録状況をチェック
JIS(日本産業規格)は、日本国内の文字コードの標準を定めた規格です。文字がどの規格で定められているかによって、利用できる環境が異なります。
- 吉(U+5409): JIS第1水準漢字。ほぼ全てのコンピューター環境で問題なく使用できます。
- 𠮷(U+20BB7): **JIS2004**(JIS第3水準)で規格化された文字です。そのため、JIS2004に対応していない古いシステムや一部の専用機では表示・印刷できない場合があります。
現在主流のWindows、macOS、iOS、AndroidなどのOSでは、つちよし(𠮷)は標準でサポートされています。
Windowsでスムーズ入力
Windows環境でつちよし(𠮷)を入力する最も実用的で簡単な方法は、IMEのユーザー辞書に登録することです。
ユーザー辞書で即入力
Microsoft IMEのユーザー辞書に「つちよし」を登録しておけば、「つちよし」と入力して変換するだけで候補に表示されるようになります。
ユーザー辞書登録の手順(Windows 11の例):
- タスクバーのIMEアイコン(「A」や「あ」)を右クリックし、「単語の追加」を選択
- 「単語」に「𠮷」をコピー&ペースト
- 「よみ」に「つちよし」と入力
- 「品詞」は「人名」や「名詞」を選択
- 「登録」をクリック
この方法の利点は、設定が簡単で、すぐに使い始められることです。一度登録すれば、さまざまなアプリケーションで利用できます。
外字エディタは非推奨
「外字エディタ」で文字を作成する方法もありますが、作成した文字はそのPCでしか表示・印刷できません。ファイルを他人に送ると文字化けするため、現在では一般的におすすめされない方法です。
Macでスマート入力
macOSでは、Windowsとは異なるアプローチでつちよしを入力できます。標準機能を活用した、効率的な入力方法をご紹介します。
ショートカット登録が最も簡単
macOSの標準機能である「テキスト置換」を使えば、簡単なショートカットでつちよし(𠮷)を瞬時に入力できます。
テキスト置換の設定手順:
- 「システム設定」を開き、「キーボード」をクリック
- 「テキスト入力」の項目にある「テキストの置換…」ボタンをクリック
- 左下の「+」ボタンをクリック
- 「入力」欄に「つちよし」などの短いよみを入力
- 「変換」欄に「𠮷」をペースト
- 「追加」をクリックして設定完了
この設定により、設定した「よみ」を入力してスペースキーを押すと「𠮷」に変換されます。テキスト置換はiCloudを通じてiPhoneやiPadとも同期されるため、一度設定すればすべてのAppleデバイスで同じショートカットが使えて非常に便利です。
文字ビューアで検索
macOSには「文字ビューア」という強力な文字検索ツールも標準搭載されています。単発で入力したい場合に便利です。
文字ビューアの使用方法:
- メニューバーの入力メニュー(「A」や「あ」)から「絵文字と記号を表示」を選択
- 文字ビューアが開いたら、検索ボックスに「U+20BB7」と入力
- 表示されたつちよし(𠮷)をダブルクリックするとカーソル位置に挿入される
スマホで簡単に使う方法
スマートフォン(iPhone/Android)でも、パソコンと同様に単語登録(ユーザ辞書)機能を使うのが最も簡単で確実です。
単語登録による時短入力
iPhone(iOS)での設定:
- 「設定」アプリを開く
- 「一般」→「キーボード」→「ユーザ辞書」の順にタップ
- 右上の「+」をタップ
- 「単語」に「𠮷」をペースト
- 「よみ」に「つちよし」を入力して「保存」をタップ
Android端末での設定(Gboardの例):
- 「設定」から「システム」→「言語と入力」を選択
- 「画面キーボード」→「Gboard」→「単語リスト」→「日本語」と選択
- 右上の「+」をタップ
- 上の欄に「𠮷」をペースト、下の「よみ」に「つちよし」を入力
- 登録を完了
※Androidはメーカーやキーボードアプリにより手順が異なります。「(お使いの機種名) 単語登録」で検索してください。
一度設定すれば、LINEやメール、Webでの会員登録など、あらゆる場面で「つちよし」と入力するだけで、正しい「𠮷」をスムーズに呼び出せます。
公的文書での安心チェック
つちよしが戸籍に登録されている方にとって、公的文書での文字使用は特に重要な問題です。間違った文字を使用すると、手続きに支障をきたす場合があるため、正確な情報を把握しておきましょう。
パスポート・銀行口座・役所の手続き
パスポート申請、銀行口座開設、婚姻届や転居届など、公的な手続きでは**戸籍に記載されている通りの正確な氏名**を使用することが法律で定められています。
もしご自身の戸籍が「𠮷」である場合、申請書類にも必ず「𠮷」を使用しなければなりません。通常の「吉」で申請すると、訂正を求められたり、受理されなかったりする可能性があります。
手続き前の確認事項:
1. まずは戸籍謄本やマイナンバーカードで、ご自身の名前の正確な文字を確認する。
2. 手続きの際は、異体字であることを窓口担当者に伝え、正しい文字で登録してもらう。
3. オンライン手続きで異体字が入力できない場合は、安易に代替文字を使わず、電話や窓口で対応方法を確認する。
FAQ:よくある疑問をスッキリ解決
つちよしに関してよく寄せられる質問と、その回答をまとめました。
- つちよしは常用漢字?
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いいえ、つちよし(𠮷)は常用漢字ではありません。常用漢字は、一般的な社会生活で使う漢字の目安として定められたもので、これに含まれていなくても、人名などで使用が認められている漢字は数多く存在します。つちよし(𠮷)もその一つで、法的に認められた正しい文字です。
- 旧字体を名刺に入れても大丈夫?
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はい、全く問題ありません。むしろ、戸籍に登録されている正確な文字を使用することで、ご自身のアイデンティティを正しく示すことができます。名刺を印刷する際は、印刷業者に「𠮷」の文字が文字化けせずに印刷できるか、事前にデータ入稿して確認してもらうと確実です。
- 文字化けを防ぐにはどうすればいい?
-
つちよし(𠮷)を含む文書をメールなどで送る際に、最も安全な方法は**PDF形式で保存して送る**ことです。PDFはフォント情報をファイル内に埋め込むことができるため、相手のPC環境に依存せず、作成した通りの見た目で表示できます。
ファイル共有の推奨形式:
- PDF(最も安全。フォント埋め込み推奨)
- 画像ファイル(PNG/JPEG)(スクリーンショットなど)
- Word/Excel文書(相手の環境によっては文字化けの可能性が残る)
- テキストファイル(UTF-8で保存しても文字化けリスクが最も高い)
まとめ
つちよし(𠮷)と通常の吉の違いから、実用的な入力方法、公的文書での注意点まで解説しました。最後に重要なポイントを振り返ります。
- つちよし(𠮷)と吉(吉)は、Unicodeが異なる全く別の文字。
- 自分の氏名がどちらの文字か、戸籍謄本などで正確に把握することが最も重要。
- PCやスマホの「ユーザ辞書」に登録するのが、最も簡単で確実な入力方法。
- 公的文書では、必ず戸籍通りの文字を使う必要がある。
- 文字化け対策には、PDF形式でのファイル共有が最も有効。
この記事を参考に、ご自身の環境に合った方法でつちよしの入力環境を整え、日々の文字入力や大切な手続きをスムーズに進めていただければ幸いです。
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