窃盗という行為には、単なるお金目的だけでは説明しきれない心理的・社会的な要素が潜んでいます。2018年、元マラソン選手である原裕美子さんの窃盗事件を機に、クレプトマニア(窃盗症)という精神疾患が一気に世間の注目を集めました。本記事では、お金を盗む側の心理構造や、盗まれやすい人が共通して持つ特徴、さらに実際に窃盗被害に遭った際の対処法や予防策について、詳しく解説していきます。
窃盗行為の心理学:盗む人の内面を探る
お金を盗む背景には、思った以上に複雑な感情が渦巻いていることがあります。ここでは、盗む人に見られがちな心理的傾向について確認しましょう。
盗む人に共通する3つの心理的特徴
1. 罪悪感の欠如または希薄化
多くの窃盗犯は、盗みを働いても罪悪感をほとんど感じていないか、非常に弱いことが特徴です。
2017年のこのツイートが示すとおり、盗んだ本人が「借りただけ」という軽い感覚で行動しているケースもあります。そうした人は他者の気持ちや状況を考慮することが苦手で、「被害者と会うことはないだろう」といった自己中心的な思考に陥りがちです。結果として、他者への共感が著しく乏しく、自らの行動が周囲に及ぼす影響をほとんど想像できません。
2. 経済的困窮による切迫感
金銭的に追い詰められ、やむを得ず窃盗行為に至る場合も少なくありません。日本では思いのほか貧困率が高く、特に母子家庭では過半数が厳しい経済状況に直面していると言われています。食料や必需品を入手する手段が他になく、犯罪行為だと承知していても窃盗に及んでしまうのです。そのような人々は窃盗の道徳的な誤りを理解しつつも、「選択肢がない」という絶望感から逃れられない状況に陥っています。
3. 精神的障害や複雑な心理的要因
クレプトマニア(窃盗症)をはじめとする精神的障害は、最近ますます注目を集めています。このようなケースには以下の特徴が見られます。
- ストレス発散のために盗みを行う
- 退屈な日常への刺激を求めてリスキーな行為に走る
- 衝動的な感情を抑えられない
クレプトマニアの場合、強いストレスが発症の引き金になることが多く、自分の意思や自制力だけでは衝動を抑えられません。
盗まれやすい人の特性と心理的傾向
窃盗被害に遭いやすい人にも、いくつか共通点が見られます。もちろん多額の資産を持っているとリスクは高まりますが、それに加えて心理的要因が影響する場合もあります。
盗まれやすい人の2つの主な特徴
1. 過度な自己顕示欲
裕福な人ほど、自分の資産や社会的立場を外に示したがる傾向が強いことがあります。例えば、ZOZOTOWNの前澤社長が巨額を投じて民間宇宙旅行計画を発表したように、自社のプロモーションも兼ねているものの、大きな富を誇示している側面は否定できません。
ブランドアイテムや高級車、豪華な住まいを堂々と見せることで、窃盗のターゲットになってしまうリスクは当然高まります。
2. セキュリティ意識の欠如
財布をよく盗まれる人の多くには、防犯意識が不足している共通点が認められます。例えば、
- ズボンの後ろポケットに財布を入れている
- 人目の多い場所で荷物から目を離す
- そもそも貴重品をしっかり管理していない
こうした不注意は、スリにとって格好のチャンスとなります。特に観光地やイベント会場のような混雑した場所では、さらに警戒心を高めることが重要です。
クレプトマニア(窃盗症)の実態と治療法
クレプトマニアは、一般の「ついやってしまう癖」とは異なり、れっきとした精神疾患とみなされています。強烈な盗みの衝動が自分の意思だけでは制御できなくなるのが特徴です。
クレプトマニアの主な特徴
- 繰り返し衝動的に盗みを行う
- 経済的利益よりも、盗む行為そのものの緊張と開放感が目的
- 本人の努力だけでは克服が困難
この障害の厄介な点は、繰り返すたびに自らリスクを高める矛盾を抱えていることです。発覚しても同じ行為をやめられないパターンが顕著に表れます。
効果的な治療アプローチ
クレプトマニアは脳機能に大きな損傷がない限り、以下のような治療法が有効だとされています。
- 心療内科や精神科でのカウンセリング、薬物療法
- 認知行動療法をはじめとする心理療法
- 家族や周囲の適切なサポート
早めの発見と専門的なケアが大切で、家族や友人の理解と協力が治療成功の鍵を握っています。
実例から学ぶクレプトマニアの真実
2018年に大きく報じられた元マラソン選手・原裕美子さんの窃盗事件は、クレプトマニアの複雑さを象徴しています。原さんは万引きによる執行猶予中にも再び万引きを行い、逮捕に至りました。
現役時代、日本代表選手としての過度なプレッシャーや食事制限の反動から摂食障害を発症し、それが窃盗症へつながったと言われています。クレプトマニアは、うつ病や摂食障害など他の心理的問題と併発するケースが多く、女性に多い傾向がある点も特徴です。
原さんは「食べ吐きで落ち着くが、費用をかけたくない。捕まってもいいから、ボディーミルクや飲料水、食べ物を盗んでしまう」という趣旨の言葉を残しています。これは、単に「盗みたい」という欲求ではなく、自分を破壊する衝動がコントロール不能になっている深刻な精神疾患であることを示唆しています。
金銭窃盗被害に遭った場合の現実的な対処法
現実には、窃盗の被害に遭った場合、取り戻せる可能性は決して高くはありません。ですが、だからと言って放置してよいわけではなく、早めの行動が大切です。
私自身はお金の窃盗被害に遭ったことはありませんが、自転車を盗まれた経験があります。交番で被害届を出した際、「犯人が捕まったとしても、自転車は壊れていたり売却されていたりします。弁償を求めても、相手にお金がなかったり、刑務所に入っているうちに時効になってしまうことが多い」と警察官に言われたのです。
金銭の盗難でも同様に、盗まれた額が返ってくる確率は低いと考えておくほうが無難でしょう。しかし被害届を出すこと自体は、他の被害防止や犯人検挙につながる意味がありますので、諦めずに届け出ることをおすすめします。
法的な時効について
- 民事で弁償請求ができる時効:3年
- 窃盗罪で実刑を科せられる刑事時効:7年
他人に現金を盗まれた場合、犯人がホームレスや前科者であるケースでは賠償の見込みが立たず、取り戻すのは難しいです。ただし、時効前に行動を起こすことが何より重要です。
効果的な窃盗被害予防策
残念ながら、人間の行動を完全に予測することはできません。絶対に盗難を避ける方法はないものの、以下の対策で被害リスクを大幅に低減することは可能です。
日常的な防犯対策
1. キャッシュレス化の推進
近年、日本でもキャッシュレス決済が普及し、現金を多額に持ち歩かなくても生活できる環境が整ってきました。持ち歩く現金を最小限にすれば、盗まれても被害を抑えられます。
2. スマートフォンのセキュリティ機能活用
指紋認証や顔認証などの生体認証が多くのスマートフォンに搭載されています。さらにGPS機能で端末の位置情報を追跡することも可能なので、端末自体を狙った盗難の被害を最小限にするのに役立ちます。
3. カード管理の最適化
- 財布には日常的に使うカードだけを入れる
- 使う頻度が低いカードは必要な時のみ持ち歩く
- 運転免許証など個人情報が載っているものは厳重に保管
これにより、万一財布を失くした時にも被害を最小限に食い止められます。
4. 自宅での現金管理
自宅に多額の現金を保管しないのは、空き巣対策にも有効です。預金や金庫の活用など、複数の防犯手段を組み合わせて安全性を高めることを推奨します。
まとめ
1. 盗む人と盗まれる人の心理を理解する
窃盗は、お金だけではなく複雑な心理や社会問題が関係しています。両側面を知ることが、自己防衛と社会的な理解の両立につながります。
2. 精神疾患としての窃盗症(クレプトマニア)を認識する
盗みの衝動が制御不能な場合は、医療的介入が必要です。適切な治療を受けることで症状の改善が期待できます。
3. 窃盗被害に遭った場合の現実的な対応を知る
警察に迅速に相談しつつ、返ってこないリスクも頭に入れておく必要があります。被害届を出すこと自体には社会的意義があります。
4. 効果的な予防策を日常生活に取り入れる
キャッシュレスの導入や防犯意識の強化など、習慣にしてしまえば格段に被害に遭う可能性が下がります。
5. 社会全体での窃盗問題への取り組み
防犯対策の徹底は個人レベルでは限界があります。経済的格差の解消や精神保健の充実など、社会全体での対策が不可欠です。
不測の事態はいつ誰の身に起こるか分かりませんが、正しい知識と意識を持つことで窃盗の被害を大幅に減らすことが可能です。この記事が、あなた自身を守るきっかけになれば幸いです。
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