中学生になると、小学校時代と比べて学習内容は一気に難しくなり、テストの範囲も広がります。そのため、多くの保護者の方が「うちの子はなかなか成績が伸びない」「どうすれば成績が上がるのだろう?」と悩むのではないでしょうか。
実際に、中学生の成績がぐっと伸びる子には共通した特徴が見られます。逆に、同じように勉強しているように見えても伸び悩む子との間には、いくつかの決定的な違いがあるのです。さらに、親のアプローチのしかたによっては、その違いを上手にカバーしたり、子どものモチベーションを高めたりすることができます。
この記事では、中学生の成績向上のカギを握る「伸びる子の特徴」や「伸びない子との具体的な違い」、そして保護者が取り組めるサポート方法について詳しく解説していきます。学習環境や親子のコミュニケーションを見直すきっかけにしていただけると幸いです。
中学生の成績が伸びる子の特徴8つ
まずは「中学生の成績が飛躍的に伸びる子」たちが持っている特徴をチェックしてみましょう。小学生時代に大きな差がなかった子でも、中学に入って一気に成績が伸びるケースは珍しくありません。以下のようなポイントを押さえている子は、勉強するたびに力を蓄積し、良い結果へとつなげていきます。
1. きちんと集中できる学習環境を整えている
成績が急激に伸びる子は、勉強するときの「集中できる空間」をしっかり確保しています。たとえば、以下のようなポイントを大切にしている家庭が多いです。
- 余計な誘惑を遠ざけた学習専用のスペースが確保されている
- 学習に必要な文房具やテキストが取り出しやすく整理されている
- 照明や室温などが適切で、落ち着いて勉強できる雰囲気がある
- 家族も勉強時間を尊重し、過度な干渉をしない
脳科学的には、集中できる環境に身を置くことで前頭前皮質の働きが高まり、情報処理や思考の質が上がることがわかっています。効率的に知識を吸収するためには、まず「雑音の少ない学習スペース」を作ることが重要です。
2. 自己肯定感が高く、精神的に安定している
成績が伸びる子には「自分ならできる」「もっと伸びるはず」という前向きな気持ちがあります。これは自己肯定感の高さからくるもので、保護者や周囲の大人が適切に褒め、認めてあげることで育まれます。
- 新しい問題や課題にチャレンジする意欲がある
- 失敗しても必要以上に落ち込まず、学びに変えようとする
- 自分が取り組んでいることの意義を信じられる
- 穏やかなメンタルで勉強に打ち込める
心理学の観点から見ると、ストレスが強い状態では、学習の土台となる海馬の働きが低下しやすいとされています。子どもの心が安定していると、学習効率を高める脳内物質のバランスが良くなり、成績アップにも大きく寄与します。
3. 自立心があり、主体性を持って学ぶ
伸びる子は、勉強に限らず物事に対して「自分で考えて行動する姿勢」が目立ちます。宿題や予習・復習も、親に言われなくても自分でスケジュールを立てるなど、主体的に取り組むのが特徴です。
- わからない問題は自力で調べたり、工夫して解決しようとする
- 教科書やノートを見直して、自分の理解度を随時チェックする
- 中長期的な学習計画を立て、見通しをもって勉強を進める
- 自分なりに勉強する意義を見つけている
こうした自立心は、思春期に大きく発達する前頭葉の成長と密接に関連しています。自分で動く経験が多いほど、計画性や判断力を担う脳の機能が強化され、結果として学力面でもプラスに働くのです。
4. 日常的にコツコツ学習している
テスト前だけ慌てて詰め込むのではなく、日々の勉強を習慣化していることも大切なポイントです。具体的には、こんなスタイルが見られます。
- 毎日少しでも机に向かい、学習時間を確保する
- 授業の予習・復習を短いスパンで繰り返す
- 苦手単元を先送りにせず、日常の中で克服する
- テストの直前にまとめて詰め込まなくても対応できるように準備する
脳は繰り返し学習することで神経回路を強化し、定着率が高まります。さらに睡眠中に記憶の整理や固定が行われるため、毎日の「少しずつの積み重ね」が長期的に見ると最も有効です。
5. 効率的な学習方法を知っている
勉強時間が同じでも、伸びる子は「どうやって学ぶか」を工夫しています。たとえば、丸暗記に偏らず、理解を伴う学習を心がけるなどが挙げられます。
- テキストをただ読むだけではなく、声に出して要点を整理する
- 暗記物でもアクティブ・リコールを取り入れる
- 科目ごとに学習法を変え、自分の得意・不得意に合わせて勉強する
- ノートやメモに図やイメージを取り入れて、わかりやすくまとめる
認知科学的には、能動的に記憶を引き出す練習や、間隔をあけて復習する方法(Spaced Repetition)などが効果的であることが裏付けられています。限られた時間で最大限の成果を上げるには、こうした学習メソッドを使いこなすことが重要です。
6. 長く集中できる
伸びる子は、一度勉強を始めると高い集中力を一定時間持続させる力があります。外部の物音やSNSの通知などに過度に反応しないのも特徴です。
- 勉強モードに入ったら、携帯電話やタブレットを近くに置かない
- 時間を区切って休憩をはさみながらも、再開時にすぐ集中し直せる
- 難しい課題でも粘り強く取り組む根気がある
- 「ながら勉強」を避け、学習一点に意識を向ける
これは前頭前皮質や前帯状皮質など、複数の脳領域が協調して働くことで可能になります。また、ポモドーロ・テクニックのように「25分勉強+5分休憩」を繰り返す方法も、集中力を引き出すのに役立ちます。
7. 好奇心旺盛で学ぶ意欲が高い
「なぜこの現象が起こるの?」「もう少し詳しく知りたい」という好奇心が旺盛な子は、学習のモチベーションも高まりやすいもの。教科書に書かれている内容だけでなく、関連情報を自ら探しに行く姿勢が見られます。
- 授業内容に疑問を持ち、後から自分で調べる
- 図書館やネットなどで興味のある分野を深掘りする
- 分野横断的な学び(歴史×地理、理科×数学など)に面白さを感じる
- 学んだ内容を実生活に当てはめて考える癖がある
好奇心が高まると脳内の報酬系が活性化し、ドーパミンが分泌されます。これが「学びそのものが楽しい」と感じる原動力になり、成績アップにも直結しやすいのです。
8. 柔軟な思考と素直さを持っている
周囲のアドバイスを受け入れたり、違う考え方があると知った時に抵抗感を抱きにくい子は、伸びしろが大きいといえます。
- 「自分が間違っているかもしれない」と思える柔軟性がある
- 先生や親など、他者のサポートを積極的に活用できる
- 成長に必要な課題を素直に取り組む姿勢がある
- 新しい学習法や知識にもオープンマインドで接する
脳の可塑性が高い思春期において、柔軟な態度は多様な刺激を受け取りやすくし、神経回路の再編成を促進します。結果、学力だけでなく将来の可能性も広がると言われています。
中学生の成績が伸びる子と伸びない子の決定的な違い3つ
同じクラスで似たような環境にいるように見えても、大きく成績が伸びる子と伸び悩む子に分かれるのはなぜなのでしょうか。ここでは、その明確な違いを3つに分けて解説します。
1. 学習の質と集中度が違う
まず注目すべきは「机に向かっている時間」よりも「どれだけ質の高い集中をしているか」という点です。
- 伸びる子:1日1時間でも高い集中度で効率的に学び、確実に定着させている
- 伸びない子:長時間勉強しているつもりでも、実は集中が途切れがちで成果が少ない
脳の活動を見ても、しっかり集中しているときには前頭前皮質が強く働き、学習や記憶の処理がスムーズに行われます。反対に、意識が散漫な状態ではデフォルトモードネットワークが優位になり、思考がさまよってしまうのです。
2. 内発的動機を持っているかどうか
勉強に取り組むモチベーションが、自分の内側から湧き出ているかどうかも大きな分かれ目です。
- 伸びる子:知識を得るプロセスに喜びを感じたり、目標を自分の意思で立てている
- 伸びない子:親や教師に「やりなさい」と言われて仕方なく取り組んでいる
内発的動機づけが高いと、学習そのものが報酬となり、ドーパミンの分泌が活発化します。結果として、長期間にわたって学ぶ意欲を維持しやすくなるのです。
3. 失敗や間違いにどう向き合うか
最後に、失敗や低得点を「どう捉えるか」で学習の伸びしろが変わります。
- 伸びる子:間違いを成長の種と見なし、次の学習につなげる
- 伸びない子:失敗を恐れて挑戦しなかったり、すぐに諦めてしまう
脳科学の研究では、間違いや失敗をしたときに起こるエラー検出メカニズムが、次に同じミスをしにくくする役割を果たすことがわかっています。つまり、間違いを活かせる子の方が、学力を高める機会を上手に利用しているのです。
「小学生時代から優秀」というわけではない?隠れた可能性に注目
「中学生で成績が良い子は、小学生の頃から優秀だったのでは?」と思いがちですが、実はそうとは限りません。小学校での評価が平凡でも、中学に入ってから才能を開花させるケースも多々あります。
小学校時代の成績と中学での成績は必ずしも連動しない
小学生時代は、学習内容が比較的ベーシックで、テストも暗記力に頼りがちなことが多いです。一方、中学生になると応用力や思考力を問われる問題が増え、小学校時代との得点差が必ずしもそのまま続くわけではありません。以下のようなパターンが考えられます。
- 小学校時代から常に成績優秀だった子が、変わらず上位をキープする
- 小学校の頃は平凡だったが、中学生になってから急に伸びる
- 小学校のときは苦戦していた科目が、中学の勉強スタイルに合って得意科目になる
重要なのは、小学校時代に点数が良かったかどうかよりも、「学習に対する姿勢」や「考える習慣」をどれだけ身につけていたかです。
これから伸びる可能性を秘めた子の8つの共通点
「今は目立った成果が出ていなくても、この子は将来伸びるかもしれない」と思われる子には、次のような特徴があります。
1) 慎重に物事を考える癖がある
速度重視でサッと問題を解くよりも、じっくり考えながら論理を積み上げるタイプの子は、中学以降の深い学習に向いています。脳内では、前頭前皮質と海馬が連携して「理解度の高い知識」を定着させる下地が作られています。
2) 丁寧に文字を書き、ノートをきちんと取る
細かいところまで注意を向ける力や、自己管理力がある証拠です。文字を書く行為は脳の運動野も刺激し、記憶の深い定着につながるといわれています。
3) 間違えた問題を必ず見直し、完全に理解しようとする
一度解いた問題でも「なぜ間違えたのか」「どこで混乱したのか」を分析し、納得できるまで再チャレンジする姿勢があります。これは間隔反復法と同様に、脳の神経回路をより強固にする働きを持ちます。
4) 読解力を大事にし、内容を本質的に理解する
教科書や参考書を読む際に、じっくりと内容を噛み砕いて把握する子は、中学以降に増える文章問題や複雑な理論に強いです。認知神経科学の観点でも、深い理解は脳の複数領域を活性化させ、長期記憶につながりやすいとされています。
5) 自分で考える習慣が根付いている
指示待ちではなく、「こうすればうまくいくのでは?」と自分から試行錯誤できるタイプです。前頭前皮質の発達を促し、自律的な学習態度を育てます。
6) 整理整頓が得意で、計画性がある
机まわりの片づけやスケジュール管理など、学習以外の部分でもきちんと整理できる子は、脳の執行機能がしっかり働いている可能性が高いです。結果として、学習計画もズレにくく、成果が上がりやすくなります。
7) 特定の分野に強い興味を持っている
自分が好きなことにはとことん熱中し、理解を深めようとする子は、「集中する力」「調べる癖」「諦めない粘り強さ」を自然に鍛えられています。これは勉強にも転用しやすいスキルです。
8) 学びそのものに楽しさを見出している
「成績が良くなるために」というよりも、「知るって面白い!」「できるようになると嬉しい!」という感覚を大事にします。報酬系の活性化が働き、やらされ感ではなく主体的に学びを続けられます。
中学生の成績を伸ばすために親ができるサポート
「中学生の成績アップには子ども自身の努力が大事」というのはもちろんですが、保護者のサポート次第でその努力の方向性やモチベーションは大きく変わってきます。ここでは、親としてできる具体的なアプローチを紹介します。
家庭での対話を大切にして信頼関係を築く
まずは子どもの心の安定と自己肯定感を高めるために、普段の何気ない会話を充実させることが大切です。
- 学校であったことを興味を持って聞いてあげる
- 子どもの気持ちや考えを「聞く姿勢」で受け止める
- 成績だけでなく、日々の小さな変化や努力にも気づいてあげる
- 勉強以外の話題でも、子どもの興味を一緒に楽しむ
温かい家庭環境はストレスホルモンのコルチゾールを抑え、記憶形成を助けるBDNFの分泌を促すという研究結果も出ています。親との会話で「受け止めてもらえる」「自分をわかってもらえている」と感じるほど、子どもは落ち着いた気持ちで勉強に集中できます。
学習空間と生活リズムのサポート
集中できる環境づくりや生活習慣の安定は、成績向上の基盤となります。
- テレビやスマートフォンを使う時間帯を調整し、勉強に集中できる状況をつくる
- 暗すぎず明るすぎない照明や、快適な室温を心がける
- 睡眠リズムを整え、8時間程度の十分な睡眠を確保する
- 軽い運動習慣や適切な栄養バランスをとるよう気を配る
研究によれば、成長期の脳は深い睡眠中にその日に学んだ情報を整理します。夜更かしや不規則な食生活を続けると、学習効率が下がるだけでなく、精神的にも不安定になりがちです。まずは親が率先して生活リズムを整える手助けを行いましょう。
教材選びと学習法のアドバイス
中学生向けの教材はかなりの種類がありますが、子どもが使いやすいと思えるもの、理解しやすいと感じるものを選ぶのがポイントです。以下は基礎固めに評判の高い教材です。
- ひとつひとつわかりやすく シリーズ:段階的に理解を深めやすい構成で、数学や理科の基礎を固めるのに最適
- 中学教科書ワーク シリーズ:教科書の内容に合わせて進められるため、学校の授業と連動した復習が可能
- 中学 自由自在 シリーズ:教科のポイントをシンプルにまとめてあり、要点整理に便利
また、科学的に効果が認められている学習法としては、間隔反復法(Spaced Repetition)やアクティブ・リコール(Active Recall)などが挙げられます。単に問題を解くだけでなく、復習サイクルの管理や思い出す練習を重視することで、記憶の定着度が飛躍的に高まります。
親自身も「学ぶ姿勢」を見せる
子どもは親の行動をよく見ています。大人が興味を持って勉強や調べものをしている姿は、子どもの意欲を引き出す大きなモチベーションになります。
- 新聞や本を読む時間を作り、学びを楽しむ様子を見せる
- 分からないことがあれば一緒に調べてみる
- 家庭で科学館や博物館、図書館などに足を運んでみる
- 時には親子で問題を解き合う「勉強会」の時間を設ける
こうした親の取り組みは、ミラーニューロンの働きによって子どもの学習意欲にも影響を与えます。特に思春期は親子の距離感が難しい時期ですが、「勉強」という固いテーマでも、楽しみながら一緒に取り組むことで距離が縮まり、結果的に成績アップにもつながるのです。
おすすめの学習法と教材の活用ポイント
ここからは、さらに学習効果を高めるための具体的な手法を紹介します。先ほど触れたSpaced RepetitionやActive Recallを実際にどう使うか、具体的にイメージしてみてください。
基礎固めにおすすめの教材
基礎力をしっかり築きたいなら、わかりやすい解説が充実しているものを選ぶと良いでしょう。
- ひとつひとつわかりやすく シリーズ:概念を図やイラストを交えて丁寧に解説しているので、つまずきにくい
- 中学教科書ワーク シリーズ:学校の授業と連動させやすいので、普段使いの復習用に最適
- 中学 自由自在 シリーズ:見やすいレイアウトと、要点の整理が的確で効率的に勉強が進む
これらは子どもが「読みやすい」と感じるかどうかも大事なポイントなので、書店やネットのサンプルで内容を確認することをおすすめします。
間隔反復法(Spaced Repetition)の実践
間隔反復法を取り入れるには、学習スケジュールを以下のように工夫します。
- 新しく学んだ内容を翌日、3日後、1週間後、2週間後…というように定期的に復習
- 復習の回数やタイミングを、カレンダーやアプリで管理しておく
- 「忘れる前に思い出す」サイクルを習慣づける
一気に何度も復習するより、間隔をあけて思い出す方が脳の長期増強(LTP)が高まりやすいと報告されています。効率的かつ継続しやすい方法として、多くの教育現場で推奨されている学習手法です。
アクティブ・リコール(Active Recall)の活用
アクティブ・リコールでは、覚えたい内容を「積極的に思い出す」ことを繰り返します。具体的には以下のように取り組みます。
- テキストや参考書を読んだら、一度閉じて要点を自分の言葉でまとめる
- ノートを隠しながら重要事項を口頭で解説してみる
- 英単語や用語をフラッシュカード形式で覚える
ただ「読む・聴く・見る」だけでは記憶の定着度が低くなります。情報をアウトプットしようとすることで記憶が強化され、理解度もアップします。
「教えることで学ぶ」Learning by Teaching
学んだことを他人に教えると、自分自身の理解度が格段に深まることが知られています。これはフェインマン・テクニックとしても有名です。
- 家族に「今日習った範囲」を簡単に説明してみる
- 学校の友達同士でグループ学習し、お互いに問題を出し合う
- 自分が覚えた内容をノートや紙に図解し、わかりやすく伝えてみる
これは言語処理、論理的思考、記憶の再構成など脳の多領域を同時に使う学習法で、深い定着と理解につながります。
デジタルツールとの上手な付き合い方
現代はタブレットや学習アプリなど、多様なデジタルツールがある時代です。使い方次第では効率が上がりますが、使いすぎると集中が妨げられるデメリットもあります。
- 学習時間と娯楽時間を明確に分け、スマートフォンの使用を制限する
- 学習プラットフォームのテスト機能や解析機能を活用し、弱点を分析する
- タイピングだけではなく、手書きノートとの併用で理解を深める
- 通知が頻繁に来る環境は避け、できるだけオフラインで集中できる状態を作る
手書きは脳の運動野を刺激し、認知機能を高める効果があることも示されています。デジタルとアナログのバランスを上手に取りながら学ぶのがベストです。
思春期の脳発達と学習効率の関係を知ろう
思春期に当たる中学生の時期は、脳が大きく再編成される重要なフェーズです。脳の発達特性を理解すると、子どもの学習をより適切にサポートできるようになります。
思春期の脳がもたらす3つの変化
1) シナプスの刈り込みと最適化
小学生までの間に増えたシナプス(神経細胞同士の結合)は、使わないものが思春期に刈り込まれ、必要な回路だけが強化されます。よく使う神経回路はどんどん効率化されるため、この時期に「必要な学習経験を積む」ことがとても大切です。
2) 前頭前皮質の急速な発達
前頭前皮質は計画性や判断力、自己コントロールを司る重要な部分ですが、完全に成熟するのは20代前半といわれています。中学生はまだ成長過程にあるため、上手くいかないときはサポートが必要です。その一方で、適切なトレーニングを与えれば、ぐんぐん力を伸ばせる時期ともいえます。
3) 情動と報酬系の活性化
思春期には、喜怒哀楽の幅が大きくなるのが普通です。これは扁桃体や側坐核など感情・報酬に関連する脳領域が活発化するためです。ポジティブなフィードバックや興味を引く体験が、学習意欲を高める強力な鍵となります。
脳機能を最大限に引き出すコツ
中学生の時期に上手に脳機能を引き出すためには、以下の点を意識してみましょう。
- しっかりとした睡眠(7~8時間以上)で学習内容を定着させる
- バランスの取れた食生活で、脳のエネルギーを切らさない
- 軽い運動習慣を取り入れ、BDNFなどの神経栄養因子を活性化する
- マルチタスクは避け、一度にひとつの課題に集中する
特に睡眠は記憶の定着に欠かせないとされ、多くの研究者が「テスト直前こそしっかり寝るべき」と指摘しています。睡眠不足では前頭前皮質の働きが低下し、集中力や思考力が落ちてしまうので要注意です。
内発的動機づけを高めるために親ができること
成績が伸び続ける子どもの大きな特徴のひとつは「自分の意志で学びたい」という内発的動機を持っていることです。これを育てるために、親ができることをまとめました。
自己決定感を高める
「やらされている」感を減らすために、以下を意識してみてください。
- 学習計画を立てるときは、選択肢をいくつか用意して子どもが選べるようにする
- 「どう思う?」「どっちの方法がいいと思う?」など、子どもの意見を尊重する
- 親が一方的に指示・命令するのではなく、一緒に話し合って決める
自己決定理論によると、人は自分で決定したことには高いモチベーションを感じやすいとされています。子どもにも「自分で選んだ」という感覚を持たせることで、勉強への責任感と意欲を同時に育てられます。
成長マインドセットを育む言葉かけ
スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック教授が提唱する「成長マインドセット」を子どもが持てるように、以下のような声かけを心がけます。
- 結果ではなくプロセスや工夫を評価する(「頭いいね」ではなく「粘り強く考えたね」など)
- 失敗を責めるのではなく、「どこが難しかった?」「次はどうすればよい?」と一緒に考える
- 「まだできないだけ」という言葉を使い、未来の成長を見通す
失敗を糧にできる子どもは、勉強でも新しいことに挑戦しやすく、最終的に大きく伸びる傾向にあります。
学ぶ楽しさを実感できる体験を増やす
学習=暗記やテストのため…というイメージでは、なかなか内発的動機は高まりません。子どもが「学ぶって楽しい!」と思える体験を積極的に取り入れましょう。
- 家族で科学館や博物館、体験型施設に行く
- 家事や料理などの日常生活で学んだ知識を活かす場面を見せる
- 子どもの興味関心を尊重し、それに関連する本や動画を探してみる
- ゲーム感覚のクイズ形式で学べる時間を作り、楽しみながら暗記や理解を深める
脳の報酬系が刺激されると、学習が「やらされるもの」ではなく「楽しいもの」に変化します。そうすると成績向上にもスムーズにつながるのです。
ステップバイステップで取り組む「成績アップ」のロードマップ
最後に、親子で実践しやすい形で「中学生の成績を伸ばすためのステップ」をまとめます。すでに取り組めている部分があるなら、そこをさらにブラッシュアップし、足りないところがあれば補っていきましょう。
ステップ1:現状の把握とゴール設定(最初の1週間)
- 子どもと一緒に教科ごとの得意・不得意を整理し、視覚化する
- 学期末、1年後など、短期・中期・長期で目指す到達点を具体的に決める
- 勉強スペースや学習計画、生活リズムなど「今の状態」を一度点検する
ステップ2:学習環境と生活習慣の見直し(2~3週目)
- 机のまわりを整理し、スマホやテレビのルールを確立する
- 毎日の就寝・起床時間を決める。朝食は必ずとる
- 短時間でもよいので、ストレッチやウォーキングなどの運動を日課にする
ステップ3:効果的な学習法を段階的に導入(1か月目~)
- 最初は間隔反復法を試し、復習予定をカレンダーに書く
- 慣れてきたらアクティブ・リコールを強化し、自分で思い出す練習を増やす
- 概念マッピングやマインドマップを活用し、内容を深く理解する習慣をつける
- 家族に教える機会を作り、Learning by Teachingを実践する
ステップ4:振り返りと修正を継続(週1ペース)
- 1週間ごとに学習の進捗を確認し、うまくいった点・課題点を洗い出す
- 学習計画の調整や教材の追加・変更を行う
- 小さな成果でも親子で喜び合い、前向きなモチベーションを維持する
ステップ5:興味の幅を広げ、内発的動機を高める(継続)
- 定期的に家族でイベントや体験学習に出かけてみる
- 子どもの「気になること」に耳を傾け、学びのチャンスに変える
- 自分の将来の夢や興味と学習内容がどう結びつくか一緒に考える
まとめ
ここまで、中学生の成績が伸びる子の特徴と、伸びない子との具体的な違い、そして保護者が取り組めるサポート方法を詳しくご紹介してきました。ポイントを改めて整理すると、以下の通りです。
- 環境:集中できる学習スペースや生活リズム、適度な運動・休息が脳の最大限のパフォーマンスを引き出す
- 心:自己肯定感や内発的動機づけが高い子ほど、失敗を恐れず粘り強く学べる
- 方法:間隔反復法やアクティブ・リコールなど、科学的に効果が実証されている学習法を活用する
中学生は思春期という大きな成長の過程にあり、脳の発達や心の動きが激しく変化する時期です。結果がすぐに出なくても、焦らず子どものペースを尊重しながらサポートを続けていけば、必ず大きな成果につながります。
学ぶことは本来、とても楽しくてやりがいのある行為です。親としては「勉強しなさい!」と強制するだけでなく、一緒に学びを楽しむ姿勢を大切にしてみてください。お子さんが自分の力でどんどん学びを深め、結果的に成績アップへとつなげていく姿を、ぜひ見守ってあげましょう。
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