出産を控えた働く女性にとって、産前産後休業(産休)と年次有給休暇(有給)をどのように組み合わせるかは、心身の健康管理や収入の安定、円滑な職場復帰のために重要なポイントです。この記事では、産休と有給休暇の制度的な違いから、スマートな組み合わせ方、必要な手続きまで、安心して出産・育児に専念できる休暇プランを解説します。
この記事は2025年5月現在の法律・制度に基づいています。最新情報は厚生労働省などの公的機関のウェブサイトをご確認ください。

産休と有給の制度はどう違う?
産前産後休業(産休)と年次有給休暇(有給)は、取得目的や法的根拠、給与保障の仕組みが異なります。まずはこれらの制度の基本を理解しましょう。
産前産後休業の概要(労基法66条)
産前産後休業は、労働基準法第65条に基づく制度で、妊娠・出産する女性労働者の健康を守るために設けられた休業制度です。
- 産前休業:出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から取得可能
- 産後休業:出産翌日から8週間は就業禁止(ただし、産後6週間を経過後に本人が請求し、医師が認めた場合は就業可能)
- 対象者:すべての女性労働者(雇用形態や勤続年数を問わない)
- 給与保障:法律上の給与保障はないが、健康保険から出産手当金が支給される
産前休業は請求することで取得できる権利であり、産後休業は原則として就業が禁止されている期間です。
参考:厚生労働省「産前・産後休業、育児休業等に関する資料」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000927333.pdf(2024年10月更新)
年次有給休暇の付与要件
年次有給休暇は、労働基準法第39条に基づく制度で、すべての労働者に付与される休暇です。
- 付与条件:雇入れの日から6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に与えられる
- 日数:勤続年数に応じて10日~20日(パートタイム労働者は所定労働日数に比例して付与)
- 取得期間:付与日から2年間有効(時季変更権を除き、原則として労働者の請求する時季に与えなければならない)
- 給与保障:通常の賃金または平均賃金が支払われる
参考:厚生労働省「年次有給休暇の制度について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/kyujitsu.html
取得順序で注意すべき点
産休と有給休暇を組み合わせる際には、取得順序によってメリット・デメリットが生じることがあります。
- 産休前に有給取得:産休に入る前に体調を整えたり、出産準備に専念したりできる
- 産休後に有給取得:育児休業の開始を遅らせることで、子どもが少し大きくなってから保育園に預けられる
- 有給と特別休暇の併用:会社独自の制度(マタニティ休暇など)と組み合わせることで、より長期の休暇取得が可能
産休中に有給を組み合わせるメリットは?
産休と有給休暇を戦略的に組み合わせることで、様々なメリットが得られます。ご自身のライフプランに合わせて検討しましょう。
連続休暇で心身を整える
妊娠後期は体調の変化が大きく、通勤や業務による負担も増加します。産休前に有給休暇を取得することで、ゆとりを持って出産に備えることができます。
- 体調管理の時間確保:妊娠後期の通院や自宅での安静時間を十分に確保できる
- 出産準備の時間確保:入院準備や赤ちゃんを迎えるための環境整備に集中できる
- 精神的なゆとり:仕事と出産準備の両立によるストレスを軽減できる
また、産後の体調回復や育児に慣れる期間として、産休後に有給休暇を活用することも効果的です。
- 体調回復の余裕:産後の回復状況に合わせて復職時期を調整できる
- 育児スキルの習得:赤ちゃんのお世話に慣れる時間を確保できる
- 保育環境の調整:保育施設の入所時期に合わせて復職タイミングを調整できる
給与支給のタイミング調整
産休中は給与の代わりに出産手当金が支給されますが、有給休暇と組み合わせることで収入の安定化を図ることができます。
- 出産手当金との関係:出産手当金は標準報酬日額の3分の2相当額であり、有給休暇の場合は通常の給与が支給される
- 支給タイミングの調整:出産手当金の支給開始までのつなぎとして有給休暇を利用できる
- 賞与計算期間への影響:会社によっては、有給休暇は出勤扱いになるため、賞与計算に有利になることがある
出産手当金と給与の二重受給はできません。有給休暇を取得して給与が支払われる日は、出産手当金は支給されません。どちらが有利かを比較検討しましょう。
参考:日本年金機構「出産手当金について」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/fukushi-kyufu/jukyu/20140422-01.html
休業手当手続きを簡素化
休業に関する手続きは複数あり、時期も異なることがあります。有給休暇と産休を適切に組み合わせることで、手続きの簡素化につながることもあります。
- 申請書類の一括提出:産休と有給休暇を連続して取得する場合、まとめて申請できることがある
- 事務手続きの効率化:休業期間が明確になることで、社内の業務引継ぎや代替要員の手配が円滑に進む
- 復職準備の計画性:休業終了日が明確になることで、復職に向けた準備を計画的に進められる
スケジュール例はどう組む?
産休と有給休暇の組み合わせ方は、妊娠経過や体調、職場環境、家庭状況などによって異なります。ここでは代表的な3つのパターンを紹介します。
出産予定日2か月前からの例
ケース1:産前に有給休暇を集中的に取得するパターン
出産予定日:7月15日
産前休業開始日:6月3日(6週間前)
有給休暇取得期間:5月6日~5月31日(約4週間)
実質的な休業開始:5月6日
メリット
- 妊娠後期の体調不良時に仕事の負担がない
- 出産準備に十分な時間を確保できる
- 産休に入る前に余裕を持って業務の引き継ぎができる
デメリット
- 有給休暇を一度に大量消化するため、後の休暇計画に影響する
- 予定日よりも早く出産した場合、産前休業期間が短くなる
産後休業後に有給を挟む例
ケース2:産後休業と育児休業の間に有給休暇を挟むパターン
出産日:7月10日
産後休業期間:7月11日~9月5日(8週間)
有給休暇取得期間:9月6日~9月30日(約3週間)
育児休業開始日:10月1日
メリット
- 産後の体調回復に余裕を持てる
- 育児休業開始を遅らせることで、育休給付金の支給期間を延ばせる
- 保育所の入所タイミングを調整しやすくなる
デメリット
- 育児休業給付金の申請手続きが少し複雑になる
- 会社によっては産後の有給取得に理解が得られにくい場合がある
半日有給+復職準備の例
ケース3:復職前に半日有給を活用するパターン
育児休業終了日:翌年6月30日
有給休暇(半日)取得期間:翌年7月1日~7月31日(平日のみ半日勤務)
フルタイム復帰:翌年8月1日
メリット
- 段階的に職場復帰できるため、心身の負担が少ない
- 保育施設への慣らし保育と並行して進めやすい
- 職場での業務に徐々に慣れることができる
デメリット
- 半日勤務の制度が会社にない場合は調整が必要
- 通勤時間が長い場合、半日勤務の効率が悪くなる
有給休暇は時間単位で取得できる制度を導入している企業も増えています。時間単位の有給休暇を活用すれば、さらに柔軟な働き方が可能になります。
参考:厚生労働省「年次有給休暇の時間単位付与に関する情報」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/index.html
書類と手続きは?
産休や有給休暇を取得する際には、様々な書類や手続きが必要です。スムーズに手続きを進めるためのポイントを解説します。
母性健康管理指導事項連絡カード
妊娠中の体調管理や通院のために休暇が必要な場合、「母性健康管理指導事項連絡カード」を活用できます。
- 発行者:医師または助産師
- 内容:妊婦の状態や必要な措置(勤務時間の短縮、休憩時間の確保、作業の制限など)
- 提出先:勤務先の人事・総務部門
- 効果:医師等の指導に基づく休暇や措置が受けられる
このカードは厚生労働省のウェブサイトからダウンロードできます。
参考:厚生労働省「母性健康管理指導事項連絡カード」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/seisaku05/01.html
年休取得申請書のポイント
有給休暇を取得する際には、会社が定める手続きに従って申請します。
- 申請時期:会社の規定に従うが、できるだけ早めに(通常は1週間前~1ヶ月前)
- 申請方法:紙の申請書または社内システム経由
- 記載内容:取得希望日、取得理由(任意)、業務の引継ぎ状況など
- 連続取得の場合:長期取得の理由や連絡方法などを明記すると良い
健康保険出産手当金支給申請
産前産後休業中の所得保障として、健康保険から出産手当金が支給されます。
- 支給対象期間:産前42日(多胎妊娠の場合は98日)から産後56日までの範囲内で、会社を休み、給与の支払いがない期間
- 支給額:1日あたり、直近12ヶ月の標準報酬月額の平均額÷30日×3分の2
- 申請方法:
- 「出産手当金支給申請書」に必要事項を記入
- 事業主と医師の証明を受ける
- 加入している健康保険組合または協会けんぽに提出
- 申請時期:産後、出産日が確定してから(遡って申請可能)
申請書は、加入している健康保険組合または協会けんぽのウェブサイトからダウンロードできることが多いです。
参考:全国健康保険協会「出産手当金の申請書」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3030/r150
手続きに関する主なチェックリストは以下の通りです:
時期 | 手続き内容 | 提出先 |
---|---|---|
妊娠判明後 | 妊娠の報告・母子健康手帳の交付申請 | 勤務先・市区町村 |
産前休業開始前 | 産前休業取得届・有給休暇申請 | 勤務先 |
出産後 | 出産手当金支給申請 | 健康保険組合または協会けんぽ |
産後休業中 | 育児休業申出書 | 勤務先 |
産後休業終了前 | 有給休暇申請(必要な場合) | 勤務先 |
育児休業開始後 | 育児休業給付金支給申請 | ハローワーク(会社経由) |
給与・手当・社会保険の取り扱いは?
産休や有給休暇中の収入や社会保険料について理解しておくことで、家計管理がスムーズになります。
出産手当金と賃金支払の関係
産休中の所得保障に関する重要なポイントを確認しましょう。
- 出産手当金の基本:健康保険の被保険者が出産のために会社を休み、給与の支払いがない場合に支給される
- 有給休暇との関係:有給休暇を取得して給与が支払われる場合、その日の出産手当金は支給されない
- 部分就労の場合:一部就労して給与の一部が支払われる場合、出産手当金との差額が支給される
- 支給期間の上限:産前42日(多胎妊娠は98日)、産後56日の範囲内
標準報酬月額と保険料免除
産前産後休業中は、申請により社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除される制度があります。
- 免除期間:産前42日(多胎妊娠は98日)から産後56日までの期間
- 申請方法:「産前産後休業取得者申出書」を事業主経由で年金事務所に提出
- 免除される保険料:健康保険・厚生年金保険の被保険者負担分と事業主負担分の両方
- 標準報酬への影響:
- 将来の年金額に不利にならないよう、産前産後休業終了後の3ヶ月間は、休業前の標準報酬月額が維持される
- 育児休業等終了後の標準報酬月額の改定の特例制度もある
参考:日本年金機構「産前産後休業期間中の社会保険料免除」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/sonota/20140421.html
有給休暇中は通常の勤務と同様に社会保険料が発生します。産休と有給を組み合わせる際には、この点も考慮しましょう。
育児休業給付金との接続
産後休業後に育児休業を取得する場合、育児休業給付金の申請が必要です。有給休暇を挟む場合の注意点を説明します。
- 育児休業給付金の概要:雇用保険から支給される給付金で、休業開始時の賃金の67%(180日経過後は50%)
- 産休と育休の間に有給休暇を取得する場合:
- 有給休暇期間は育児休業期間にはカウントされない
- 有給休暇後に改めて育児休業を開始する形になる
- 育児休業給付金の受給には、育児休業開始日の時点で、雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上必要
- 支給日数への影響:子が1歳に達するまでの支給が原則だが、保育所等に入所できない場合等は最長2歳まで延長可能
参考:厚生労働省「育児休業給付金の内容及び支給申請手続について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000112865.html
勤務先のサポート制度はどう活用?
法定の休暇制度に加えて、企業独自のサポート制度を活用することで、より充実した休暇計画を立てることができます。
企業型有休積立制度の事例
一部の企業では、失効する有給休暇を積み立てて、特定の事由で使用できる制度を設けています。
- 積立有給休暇制度:法定の有効期限(2年)を経過して失効する有給休暇を積み立て、特定の事由に限り使用できる制度
- 利用可能な事由の例:
- 妊娠・出産・育児に関するもの
- 本人の疾病・怪我の療養
- 家族の看護・介護
- 不妊治療
- 活用のポイント:通常の有給休暇と組み合わせることで、より長期の休暇取得が可能
福利厚生サービスの確認
多くの企業では、出産・育児に関する独自の福利厚生サービスを提供しています。
- 出産祝い金:出産に際して一時金が支給される制度
- マタニティ休暇:法定の産前産後休業とは別に設けられた休暇制度
- 時短勤務制度の拡充:法定の期間を超えた時短勤務の適用
- 在宅勤務制度:妊娠中や育児期間中の在宅勤務の許可
- ベビーシッター補助:ベビーシッターサービス利用時の費用補助
- 企業主導型保育所:企業が運営する保育施設の利用
また、福利厚生代行サービスを導入している企業では、以下のようなサービスが利用できる場合もあります。
- 育児関連用品の割引購入
- 産後ケアサービスの優待利用
- 育児相談サービス
- 食事宅配サービスの割引
社内相談窓口の活用方法
休暇制度や職場復帰に関する不安や疑問は、社内の相談窓口に相談することをお勧めします。
- 人事部門:休暇制度や手続きに関する公式な問い合わせ
- 産業医・保健師:妊娠中・産後の体調管理や健康面の相談
- ダイバーシティ推進部門:両立支援制度や職場環境の相談
- 先輩社員:実際の体験に基づくアドバイス
- 社内SNS・コミュニティ:ワーキングマザー向けの情報交換の場
社内だけでなく、厚生労働省の「両立支援のひろば」など、公的な相談窓口も活用しましょう。
参考:厚生労働省「両立支援のひろば」
https://ryouritsu.mhlw.go.jp/
トラブルを防ぎスムーズに活用するコツは?
産休と有給休暇を組み合わせて取得する際、職場とのコミュニケーションが重要です。トラブルを防ぎ、円滑に休暇を取得するためのポイントを解説します。
社内周知を早めに行う
妊娠が分かった段階で、適切なタイミングで上司や人事部門に報告し、休暇の計画を早めに共有しましょう。
- 報告のタイミング:安定期に入った頃(妊娠4~5ヶ月)が一般的
- 伝える相手:まずは直属の上司、次に人事部門
- 伝える内容:
- 出産予定日
- 産前休業の開始予定日
- 有給休暇の取得予定(時期・期間)
- 育児休業の取得予定
- 復職予定日(現時点での予定でも可)
- 伝え方のポイント:
- 面談の時間を事前に確保する
- 休暇取得の予定と業務への影響を整理して伝える
- 業務の引継ぎ案なども提案すると良い
妊娠・出産を理由とする不利益な取扱いは法律で禁止されています。不安な場合は、労働局の相談窓口も活用しましょう。
参考:厚生労働省「男女雇用機会均等法に基づく紛争解決援助制度のご案内」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku03/index.html
タスクの見える化と引き継ぎ
長期休暇を取得する前に、業務の見える化と適切な引き継ぎを行うことで、スムーズな休暇取得と職場への配慮を両立させることができます。
- 業務の棚卸し:
- 担当業務の一覧作成
- 定期的な業務と突発的な業務の区別
- 業務の優先度と難易度の整理
- 引継ぎ資料の作成:
- 業務手順書の作成・更新
- トラブル対応事例の整理
- 重要な連絡先リストの作成
- システムアクセス権限の確認と申請方法
- 引継ぎのスケジュール:
- 段階的な引継ぎ計画の立案
- OJTによる実務引継ぎの時間確保
- 質問対応期間の設定
定期的な状況報告で安心感を共有
特に産前の有給休暇や産休中は、職場とある程度のコミュニケーションを保つことで、スムーズな職場復帰につながります。
- 休暇前の準備:
- 連絡方法と頻度の取り決め
- 緊急時の連絡ルールの確認
- 社内情報の共有方法の確認
- 休暇中のコミュニケーション:
- 出産報告のタイミングと方法
- 社内イベントや重要な変更の情報収集
- 復職に向けた意向確認のタイミング
- バランスのとり方:
- プライベートな時間を確保しつつ、適度な繋がりを維持
- 職場の状況に応じたコミュニケーション頻度の調整
- SNSや社内コミュニケーションツールの活用
Q&A集
産休と有給休暇に関するよくある質問とその回答をまとめました。
- 産休中に有給休暇は取得できますか?
-
産前休業期間(出産予定日の6週間前から)は、有給休暇と産前休業のどちらかを選択できます。一方、産後休業期間(出産後8週間)は原則として就業が禁止されているため、この期間中に有給休暇を取得することはできません。ただし、産後6週間経過後に医師の許可があれば就業可能となるため、その場合は有給休暇の取得も可能です。
- 産休と有給休暇ではどちらが経済的に有利ですか?
-
一般的に、有給休暇では通常の給与が100%支給されるのに対し、産休中の出産手当金は標準報酬日額の3分の2(約67%)が支給されます。そのため、単純に金額だけを比較すると有給休暇の方が有利な場合が多いです。ただし、個人の給与体系や手当の有無、社会保険料の免除などを総合的に考慮する必要があります。
- 有給休暇の申請を拒否されることはありますか?
-
有給休暇は労働者の権利ですが、「事業の正常な運営を妨げる場合」には、使用者は時季変更権を行使できます。ただし、妊娠中の体調管理のための有給休暇については、男女雇用機会均等法に基づく母性健康管理措置として配慮が求められます。計画的に申請し、必要に応じて医師の指導事項を示すことで、スムーズな取得が可能になります。
- 産休・育休の間に有給休暇を挟むとどうなりますか?
-
産後休業後に有給休暇を取得し、その後育児休業に入ることは可能です。この場合、有給休暇期間中は通常の給与が支払われ、育児休業給付金の支給期間には影響しません。ただし、有給休暇期間中は社会保険料が通常通り発生し、育児休業開始時に改めて育児休業給付金の申請が必要になります。
- 妊娠中の体調不良時の休暇はどうすればいいですか?
-
妊娠中の体調不良には複数の選択肢があります。
- 通常の有給休暇を取得する
- 母性健康管理指導事項連絡カードを活用し、医師の指導に基づく休暇を取得する
- 会社に特別休暇制度(マタニティ休暇など)がある場合はそれを利用する
- 産前休業の開始日を早める(医師の診断書が必要な場合あり)
体調管理を最優先に、状況に応じた休暇制度を活用しましょう。
- 産休中の社会保険料はどうなりますか?
-
産前産後休業中は、申請により社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除される制度があります。これは産前42日(多胎妊娠は98日)から産後56日までの期間が対象です。一方、有給休暇中は通常の勤務と同様に社会保険料が発生します。産休と有給を組み合わせる際には、社会保険料の負担も考慮して計画を立てると良いでしょう。
- 有給休暇を消化しきれない場合はどうすればいいですか?
-
有給休暇を消化しきれない場合は、以下の選択肢があります。
- 会社に積立有給休暇制度がある場合は、その制度を利用する
- 産休前または産休後に計画的に取得する
- 時間単位・半日単位の有給休暇制度がある場合は、それを活用する
- 会社と相談し、計画的付与制度の活用を提案する
有給休暇は労働者の心身のリフレッシュのための重要な権利です。計画的な取得を心がけましょう。
- 復職後の働き方について相談するタイミングはいつがいいですか?
-
復職後の働き方(時短勤務、フレックスタイム、在宅勤務など)について相談するのは、産後の体調や子どもの状況が見えてきた産後3~4ヶ月頃が適切です。復職の2~3ヶ月前には具体的な条件を相談し、1ヶ月前には最終的な復職日や勤務形態を確定させると、会社側の準備も整いやすくなります。
まとめ
産休と有給休暇を上手に組み合わせることで、心身の健康を守りながら、安心して出産・育児に臨むことができます。
- 制度理解:産前産後休業と年次有給休暇の違いを理解し、自分に適した休暇計画を立てる
- 経済面:出産手当金と給与の違い、社会保険料の免除制度を考慮して計画を立てる
- スケジュール例:産前に有給を取る、産後に有給を挟む、復職時に半日有給を活用するなど、状況に応じたプラン作成
- 手続き:必要な書類と提出タイミングを把握し、余裕を持って準備する
- 職場との関係:早めの報告、丁寧な引継ぎ、適度なコミュニケーションで円滑な休暇取得と復職を実現
- サポート活用:公的制度だけでなく、企業独自の制度も積極的に活用する
出産・育児は人生の大きな転機です。この時期を安心して過ごせるよう、制度を最大限に活用しましょう。また、制度は随時更新されることがあるため、最新情報は厚生労働省や日本年金機構などの公的機関のウェブサイトで確認することをお勧めします。
【参考資料】
- 厚生労働省「産前・産後休業、育児休業等に関する資料」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000927333.pdf - 厚生労働省「年次有給休暇の制度について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/kyujitsu.html - 日本年金機構「出産手当金について」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/fukushi-kyufu/jukyu/20140422-01.html - 日本年金機構「産前産後休業期間中の社会保険料免除」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/sonota/20140421.html - 厚生労働省「育児休業給付金の内容及び支給申請手続について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000112865.html

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